育成馬ブログ(生産④)

今シーズンの新たな試み

 

 新年あけましておめでとうございます。本年も当ブログをよろしくお願いいたします。

 JRA日高育成牧場では今年も生産現場に役立つ実践的な調査・研究をしてまいりたいと思います。今回は、今シーズンから導入した飼養管理上の新たな試みについて紹介します。

 

○ブルーライトマスクによるライトコントロール

 繁殖牝馬へのライトコントロールの効果について、今まで当ブログでも紹介してきましたが(https://blog.jra.jp/ikusei/2014/01/post-5575.html)、今シーズンは一部の牝馬にブルーライトマスク(EquilumeTM Light Mask)を装着し、効果を検証しています(写真1)。このマスクは単眼ブリンカーの内側に組み込まれた青色発光ダイオードがタイマーによって16時から23時まで点灯するように設定されているため、繁殖牝馬に装着することにより夜間に馬房に集牧しなくてもライトコントロールの効果が得られるとされています。当場では今シーズン空胎馬を従来の馬房でライトコントロールを行う群とこのマスクを装着し24時間放牧を継続した群に分け、シーズン初回排卵の時期などについて検証を行っています。

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写真1 今シーズンは一部の牝馬にブルーライトマスクを装着しています

 

○厳冬期昼夜放牧用のシェルターおよび水桶の導入

 北海道では当歳から1歳にかけての厳冬期の放牧管理も大きな課題の一つです。当場では以前、昼夜放牧を秋から継続して続ける群と昼放牧に切り替えウォーキングマシンによる運動を負荷する群に分けて比較するなど、様々な調査を行ってきました。

厳冬期の管理①(https://blog.jra.jp/ikusei/2012/12/post-2f5a.html

厳冬期の管理②(https://blog.jra.jp/ikusei/2013/01/post-8d83.html

厳冬期の管理③(https://blog.jra.jp/ikusei/2013/02/post-ae64.html

厳冬期の管理④(https://blog.jra.jp/ikusei/2013/03/post-2d55.html

 調査を始めた2010年当時から昨シーズンまで、当場では屋根のない風除けを冬期のみ一時的に設置し暴風雨を防いでいましたが、今シーズンからは屋根付きのシェルターを放牧地内に建設し使用を開始しました(写真2)。GPSを用いた過去の調査では毎日夜中の一定時間風除け付近で横臥して休息していることがわかっており、屋根が付いてさらに快適になった環境下で馬たちの行動がどのように変化するのか、観察を続けていきます。

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写真2 今シーズンから屋根付きのシェルターを使用しています

  

 また、同じく昨シーズンまで当場では概ねマイナス10℃を下回ると放牧地内の水桶が凍ってしまっていたのですが、今シーズンは電気を利用した凍結防止機能付きの水桶を導入しました(写真3)。過去の調査において、厳冬期には血清中のBUNが上昇することがわかっており、これは脱水時など腎臓の血流量が低下していることを示しており、馬の健康管理上好ましい状況ではありませんでした。この新しい水桶の導入後、馬の血液検査の数値にどのような変化が現れるのか、あわせて比較してみたいと思います。

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写真3 今シーズンから水桶に凍結防止機能が付きました

 

 以上のように、今シーズンも新たなチャレンジを続け、今後も現場に役立つ情報をたくさん発信できるようにがんばりたいと思いますので、当場の活動にご注目いただけましたら幸いです。