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馬は大地の贈り物(日高)

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アブの来襲もなく、落ち着いて草を食む昼夜放牧の馬達

温暖化の影響でしょうか、日高は9月中旬になっても日中はまだ汗ばむ様な陽気が続き、下旬になってようやく秋らしくなってきました。さて、現在日高では3つのグループに分けて騎乗馴致を進めています。第1グループは8月購買の牡馬20頭を93日から馴致を開始し、すでに人が騎乗できるまでになっています。第2グループの約20頭は924日から騎乗馴致を開始しました。この後、第3グループは1015日の馴致開始を予定しており、それまでの間は引き続き昼夜放牧で管理します。しかし、馬の成長や状態を見て、馬にストレスのかかる騎乗馴致を遅らせた方が良いと判断した馬は、第4グループとします。

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腹帯馴致として行うローラー(写真の馬が腹部に装着している道具)の装着により、胸郭の圧迫に驚いては跳ねる育成馬。御者が落ち着いて馬を前に出すことで、馬はローラーの圧迫を受け入れるようになります。セリ上場を通してある程度人との関係をしつけられている馬が多くなり、これだけ暴れる馬は最近少なくなりました。このステップでは、気を緩めることができません。馬はベーシックフジの07(父:バゴ)。

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騎乗に移る前に行うドライビング(写真)で闊達な動きを見せる第1グループの育成馬。御者の技術が求められます。ドライビングをすることで、馬は騎乗前にハミ受けを学びます。

今回は、放牧地管理についてです。当場は表題にあるように、馬は大地で育まれ強くなるという観点に立ち、環境に優しくかつコストをかけない馬づくりを目指しています。まず本年から、堆肥作りをこれまで以上に積極的に実施しています。寝藁として使われた後の麦稈はもちろんですが、放牧地管理として行う掃除刈り後の草、これまで廃棄していた乾草など大地からいただいたものはもれなく堆肥として土に返すという試みです。

もちろん堆肥だけでは馬が土から持ち出した成分が不足し、糞尿由来のカリウム過剰など土の栄養バランスも崩れてきます。そこで、崩れたバランスを補足する指標を得る手段として土壌成分の分析や乾草の栄養分析を実施します。最近の原油高騰のあおりを受け、肥料代も農家にとって大きな負担になってきています。この取り組みの結果についても何年か先に取りまとめることができたらと考えています。

また、乾草作りや牧野の掃除刈りも積極的に行っています。本年は天候不順のため乾草作りには苦労しましたが、ラップ乾草や敷料として利用する分も含めて30Kg程度を収穫しました。

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掃除刈り。刈った草は細かく裁断され、放牧地で土に返ります。

放牧地の掃除刈りを頻繁に行うことには色々な効果が期待されます。まず、馬達に新しく成長したフレッシュな草を食べさせることができるという点です。また、チモシー、ライグラスなどのイネ科牧草は刈り取られると茎枝分かれし株が大きくなることで密度を増し、また成長点を残すことですぐに新しく成長してきます。その新芽を求め、馬が放牧地を歩くことで運動量が増えることも期待されます。さらに、雑草の多くが双子葉植物であり、これらは成長点が高い位置にあるため上部を刈り取ることで繁茂を防ぐという効果もあります。掃除刈りにより成長点を奪われた双子葉植物は脇芽で成長しようとしますが、成長速度が鈍り、種を作る機会も少なくなるわけです。

もう一つ、掃除刈りには放牧地を乾燥させる効果もあり、放牧が原因(明確な原因は不明)となって肢や鼻が白い馬に発症する難治性の皮膚炎の予防にも効果があるようです。

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難治性の白部の皮膚炎。抗生物質などで2次感染は防止できても、放牧をしている限りなかなか完治しません。しかし、草を短く保ち乾燥させることで、これまでに比べ程度が軽減したように思われます。

さらに、放牧地の大敵エゾノギシギシ(別称:馬ダイス)の駆除も積極的に行っています。馬ダイスは非常に繁殖力が旺盛で、少し気を抜くと猛烈な勢いで繁茂し、牧草を駆逐していきます。また、牧草に比べ乾燥に時間がかかり、乾草の劣化につながります。この生命力の強い馬ダイスを駆除するためには、根気強い除草のプレッシャーが必要です。対策として、手で抜くことはもちろんですが、種をつける穂を出させないための掃除刈りの励行、出た穂は刈り取ってから掃除刈り(穂が出たまま掃除刈りをすると、駆除どころか播種したことになってしまう)、成長期の若葉に対する除草剤のスポット散布などを繰り返しました。

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エゾノギシギシ。馬ダイスとも呼ばれます。

こうした放牧地管理のもと、大地の恵みを受けた若馬達がすくすくと育っています。