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読者からの質問 ~冬期放牧における仔馬の成長ホルモン分泌について~(事務局)

日頃から、当ブログをご覧いただきまして誠にありがとうございます。当ブログはJRAが行っている生産育成活動を通した技術開発および調査研究の成果を普及・広報するために開設しているものであり、少しでも生産者・育成業者の皆様方の業務に役立てば幸いと考えております。

さて、129日付けの当ブログ「冬期の昼夜放牧について」について、読者の方から下記のようなご質問がございましたので、担当者からの回答と併せて掲載させていただきます。

(読者からの質問)

当場でも、一昨年より当才の冬期昼夜放牧にトライしております。

シェルターが無いこともあり、悪天候の日には集牧するようにしていますので、1月までは、1日馬体重増400~500gは維持できております。また、放牧地に寝藁を厚く敷き、横になって寝ることができるようにしております。

そこで質問ですが、冬季の夜間に十分な休息が確保できずに、成長ホルモンの分泌は阻害されないのでしょうか?

(担当者からの回答)

成長ホルモンの分泌については、当場でも議論がされています。

当歳から1歳にかけての時期というのは、離乳前ほど成長ホルモン分泌が旺盛ではないと考えられますが、まだ分泌量が多い時期であると推測され、成長に重要な時期であると思われます。

今回、馬の内分泌ホルモンに関する専門家(田谷一善先生:東京農工大学 家畜生理学教授)のご意見を伺うことができましたので、ご紹介致します。

『成長ホルモンの分泌を刺激する主な要因は、次の3つです。
1)睡眠
 ヒトの場合には、ノンレム睡眠(夢を見ない深い眠り)の時に分泌が亢進します。サルでも同様な事が報告されていますが、その他の動物では、サンプリングが難しく報告がありません。恐らく、哺乳類で共通の機構と考えられます。馬では、子馬がバッタリ横になって寝る時に成長ホルモンが分泌されていると想像していますが、測定した報告はありません。

2)運動
 馬でもヒトでも、運動すると成長ホルモンの分泌が亢進します。トレッドミルで実験馬を走らせた時の血液中の成長ホルモンを測定して、明らかに上昇する事実が確認されています。運動による成長ホルモンの分泌は、馬やその他の動物にとっては、重要な機構と考えています。

3)基礎分泌
 成長ホルモンの分泌は、パルス様の分泌様式を示します。馬では、約6時間に1回分泌されます(そのため、血液中の成長ホルモンを測定する場合には、注意が必要です)。また、ストレス負荷に対しては、分泌が亢進するという論文と、反対に抑制されるという論文があり、議論が分かれているようです。

以上のことを考え合わせますと、科学的なデ-タは、発表されていませんが、横になってぐっすり熟睡している時や、駆けまわっている時に、成長ホルモンの分泌が上昇していると考えています』

専門家の意見にあるように、我々も成長ホルモンの分泌には横たわって寝る状態が最も良いと考え、最低6時間ほどは馬房の中で休息させるべきではないかと思っていました。しかし、放牧地で仲間と餌を食べて、遊ぶことによる「精神面の成長」や「体力の増強」などの効果を期待し、昼夜放牧を選択しております。

その効果に関する科学的な根拠は、まだありませんが、いずれは昼夜放牧群と昼放牧群(WM&ライトコントロール&馬服)に分けて、成長ホルモンや皮下脂肪等のデータを取れればと考えております。

当ブログでは、このような読者の方からのご意見、ご質問をお待ちしております。jra-ikusei@jra.go.jp

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