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魅せる育成(宮崎)

南国の地、宮崎でもすっかり朝晩涼しくなってきました。放牧地から帰ってくる馬の表情も爽やかです。

   さて、ご存知のとおり宮崎育成牧場では今年の3月より、JRAの勝馬投票券の発売(会員制)を開始しています。昨シーズン(現2歳世代)の育成馬達も1ヵ月程、場外発売を行っている日に調教を実施したのですが、育成シーズン途中からの場外発売開始ということもあり、場外発売所から遠く離れた内馬場(500mダートコース)での調教を主に実施しました。

今シーズンから宮崎育成牧場では、日本で唯一の育成馬がいる場外発売所として、『魅せる育成』をテーマに掲げ育成業務を展開しています。その第一弾として、場外発売日に1,600m馬場を利用した調教を実施し、場外発売所に来られたお客様にも調教をご覧いただいていますので、その様子を紹介します。

1,600m馬場を利用した調教は、昨年と比べて約3週間早く開始しています。これは千葉、八戸の1歳市場で購買した5頭の育成馬に対し、これまでの馴致スケジュールを前倒しした別群を設定し、早期から馴致を開始したことにより実現しました。

秋競馬の盛り上がりにあわせるように、1,600m馬場を利用した調教が実施されてきました。騎乗しての常歩や速歩、そして10/16(土)にはついに場外発売のお客様の目の前で駈歩を披露することができました。場外発売所内に案内文を掲示し、育成馬の調教を行う旨を予告したこともあり、人数は少ないですが熱心なお客様に見守られ、誘導馬に導かれた5頭の育成馬達は無事調教を披露することができました。 

【当日の調教メニュー】

 500mダートコース 常歩0.5周 速歩0.5周 駈歩1

 1600mダートコース 速歩1000m 駈歩1600m(30/F)

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500mダートコースでウォーミングアップを行う育成馬

左から誘導馬、エアココの09(牝、父:ケイムホーム)、ガルデーニエの09(牝、父:スウェプトオーヴァーボード)、ヘバラーの09(牝、父:マイネルラヴ 

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1,600m馬場に向かうガルデーニエの09(牝、父:スウェプトオーヴァーボード

場外発売所のお客様をはじめ、地元宮崎の方々に育成馬を応援していただくため、宮崎育成牧場ではできるだけ育成の様子を公開しようと考えております。最近では、実際に場外発売所に来られたお客様を育成厩舎にご案内することも珍しくありません。事前にお問い合わせいただければ対応いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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1,600mダートコースでの調教風景(背景は旧スタンドと場外発売所)

場外発売所は馬場と隣接しており、一歩外に出ると目の前に1600ダートコースが広がり、目の前で実施される調教を見ることができます。

1,600mダートコースでのクーリングダウン

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離乳後の子馬たち(生産)

8月の離乳を終え、ひと段落した当歳馬たちですが、9月の中旬には恒例の血統登録検査が行われました。血統登録検査は、競走馬になるための第一歩でもあり、サラブレッドとして競馬に出走するためには、サラブレッドである旨の証明を受け、そして登録されなければなりません。血統登録のための検査は、最近の10年ほどで大きく変わり、血統、すなわち親子鑑定は、2003年に血液型検査からDNA型検査に変更され、さらに2007年からは、個体識別にマイクロチップ検査が導入されたために、血統登録検査は簡便かつより正確なものに発展しています。

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個体識別のためのマイクロチップ検査

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検査のためにトリミングされた

当歳馬キセキスティール10(牡 父:ケイムホーム

2007年産駒から、血統登録を行った全頭に対してマイクロチップが装着された結果、本年の札幌競馬開催における出走馬のマイクロチップ装着率は、6070%にも達しました。このように、現在は、競馬の公正確保に不可欠な装鞍所での出走馬の個体照合にも、マイクロチップが利用され、非常に有益なものとなっています。

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札幌競馬場の装鞍所でのマイクロチップ検査

出走馬の60~70%はマイクロチップを装着している

また、9月の下旬には分場へと放牧地を移動し、24時間放牧を開始しました。離乳後の不安を乗り切り、8頭の群れで落ち着いていた当歳馬たちでしたが、放牧地の移動という環境の変化に少しストレスを感じているようにも映りました。体重は前日から510kg減少し、放牧地での1日の移動距離は12kmから18kmに増加していました。母馬と離別する離乳時には、ストレスは最小限に止めることを第一に考えていましたが、離乳後は、可能な限り多くの環境の変化を経験させ、「心のブレーキング」を行うことも重要であると考えています。しかしながら、秋から冬にかけては、寒暖の変化も激しいため、感染症の発症には細心の注意を払わなければなりません。

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放牧前には飼付け場所となるシェルターに慣らしておく

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環境の変化を乗り越えリラックスする当歳馬たち

当歳馬たちを分場へと移動した当日の午後に、日高育成牧場内にヒグマが出没しました。分場は、本場よりもさらに山奥になるために、少し心配する一方で、子馬たちにとって適度な刺激となり、「心のブレーキング」になればとも思っています。

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当場の敷地内に出没したヒグマ