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冬到来!(日高)

日高育成牧場のある浦河では10月末頃から“雪虫”が飛び交い、さらに最低気温が氷点下になる日もあり、徐々に冬の気配が感じられていました。そして、1115日にはついに初雪が降り、まさに冬到来となりました。野生のエゾ鹿達も繁殖期を終え、夏毛から冬毛へと衣替えを終え、越冬の準備を始めています。

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 エゾ鹿達も夏毛(左)から冬毛(右)へと衣替えを終え、越冬の準備を始めています。

さて、3群に分けて騎乗馴致を進めてきたJRA育成馬ですが、各群とも順調に進んでいます。9月中旬から騎乗馴致を開始している1群の牡馬は、800m屋内トラック馬場での調教実施時には、1列縦隊で1周した後、手前を変えて二列縦隊でキャンターを2周、計2,400mのキャンターを行っています。また、1群の牡馬はBTC1600mトラック馬場においても1周のキャンター調教を行っています。この広い調教コースでは、ある程度のスピードで(F2320程度)まっすぐに走行することを馬に教える目的で調教を実施しています。

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 1600mトラック馬場でキャンターを行う1群の牡馬

10月上旬から騎乗馴致を開始している2群の牝馬は、800m屋内トラック馬場での集団調教が可能な段階にまで進んでおり、リードホースを先頭に1列縦隊で1周した後、手前を変えてさらに1周、計1,600mのキャンターを行っています。一方、10月下旬から騎乗馴致を開始している牡と牝が混在する3群も騎乗に向けてドライビングを十分に行っています。

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 騎乗前にドライビングを十分に行っている3群の馬。シャカラカベイビーの10(牝 父オレハマッテルゼ)

騎乗馴致を進めていくと、牝馬の中には牡馬と比較して騎乗に至るまでに順調さを欠く馬、例えば、腹帯を嫌う馬、ランジングレーンがお尻に触れることを嫌う馬、さらには騎乗されるのを嫌う馬なども認められます。これは、牝馬は牡馬と比較して繊細であることが原因であると考えられます。このような牝馬に限らず騎乗馴致を行う際には、馬に理解させることを第一に考え、その理解を日々積み重ねていくように進めていかなければなりません。騎乗馴致時にラウンドペンの中で馬が反転するなどの行動は、馴致を行っている者が無意識のうちに馬に対して反転させる“扶助”を出していると考えるべきであり、そうなってしまった場合には、感情的になって馬と戦わずに、前のステージに戻って再度理解させるように対応しなければなりません。この騎乗馴致の段階で馬に理解させることに失敗してしまうと、競馬のステージにおいても騎乗者の扶助を理解することなく、ただ疾走するだけか、あるいは“あきらめ”を身に付けた馬になってしまう可能性が高くなるので、細心の注意を払って騎乗馴致を進めています。

話は変わりますが、先日、800m屋内トラック馬場に珍しいお客さんが訪れました。今までにも常連さんの“キタキツネ”や、調教中に先頭を走行し“ラビット”としてスローペースを演出していた“エゾユキウサギ”などがやってきましたが、今回のお客さんは“エゾフクロウ”です。番兵のごとく馬場の屋根裏に鎮座し、微動だにせず調教を見守っていました。夜行性のために日中はほとんど寝ているらしいのですが、欠伸をしている最中にコースを馬が通ると、片目をつむりながら首を回して馬を追いかける姿が非常に愛らしく映りました。フクロウは古来から世界各国でさまざまなものの象徴とされてきました。日本でも頭がクルクル回ることから“知恵の神”として扱われていたり、また“不苦労”の字から “幸福を呼ぶ”鳥といわれてきました。今回の愛らしいフクロウも、馬達に幸福をもたらしてくれる守護神であることを願っています。

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 今回の来場者は馬達の守護神“エゾフクロウ”でした。