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ブリーズアップセール上場予定馬の調教DVDを公開します(事務局)

ブリーズアップセールまで残すところ1ヶ月をきりました。このほど購買予定の皆様に送付いたします調教DVDおよび写真カタログが完成しましたので、当ブログでも公開させていただきます。

また、宮崎(3/26)および日高(4/9)の育成馬展示会時の調教供覧についてもYou Tube動画による配信を予定しております。配信準備ができましたら、本ブログでもお知らせいたします。

YouTube: 【2012 JRAブリーズアップセール】-調教DVD-JRA日本中央競馬会

 

2012 ブリーズアップセール調教DVDタイム表はこちら

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2012 ブリーズアップセール 写真カタログはこちら

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ゲート馴致について(日高)

3月も半ばを過ぎると、雪の日には「これが今年最後の雪だろう」と話しながら、春の訪れを楽しみにしています。北の大地である浦河の春はもうそこまで来ているようです。

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今年最後の雪であることを願いながら、春の訪れを心待ちにしています。北海道の春はもうそこまで来ているようです。

●育成馬の近況 ~Work調教の開始~

育成馬達はブリーズアップセールに向け順調に調教メニューをこなしております。前回、お伝えいたしましたとおり、800m屋内トラックでの調教をベースとしながら、週2回の坂路調教を実施し、1週間の調教の流れをパターン化させ、調教コースによるオンオフの区別の理解を馬に促すことを引き続き行っております。2月から開始しているこの調教パターンによって、多くの馬が調教のオンオフを理解してきたように感じています。また、体力面および心肺機能も強化され、坂路調教では“on the bridled”での2本のステディキャンター(54秒/3F)を安定して走行できるようになってきました。

このように、体力面と精神面の安定が図られてきたので、3月中旬からはwork調教と呼んでいる坂路の2本目に2頭併走での少し速めのキャンター(48秒/3F)を開始しております。この時にも、単なる走行タイムよりも最後まで“on the bridled”の手応えを重要視しています。この調教のパターンを3週間ほど継続し、安定した走行が可能となった段階で、次のステップに進んでいきたいと考えています。同じことの繰り返しが調教であると理解しつつも、それが難しいことを感じざるを得ない今日この頃です。

 

坂路コースでは1本目は4頭を1つのロットとした縦列でのストリングを組んでのステディキャンター54秒/3Fを、2本目は併走での少し速めのキャンター(48秒/3F)を実施しています。縦列調教画像は先頭からオテンバコマチの10(牝 父:ケイムホーム)、メジロマルチネスの10(牝 父:デュランダル)、スルーパスの10(牝 父:サウスヴィグラス)、フラワーサークルの10(牝 父:アルデバラン)、併走調教画像は左がヒカルヤマトの10(牡 父:アドマイヤジャパン)、右がユメノセテアラムの10JRAホームブレッド 牡 父:ケイムホーム

ゲート馴致について

さて、今回はゲート馴致について触れてみたいと思います。一般的に馬、特にサラブレッドは警戒心が強い動物であると考えられ、新しく見聞きするものや初めて経験することに敏感に反応しがちです。また、閉じ込められる様な閉鎖空間や束縛される環境に対しては、恐怖や警戒心から逃避しようとします。このような馬の性格を踏まえて、ゲート馴致のみならず全ての馴致過程において、焦らずに馬が理解するまで根気よく馴らす必要があります。

ゲートに対する馴致

まずはゲートが安心できる場所であることを馬に学習させるために、ゲートは日常の運動中に身近に見える場所に設置します。引き馬やドライビングの段階において十分ゲートを通過させ、可能な限りゲートに対する恐怖心を取り除くようにします。次に騎乗して幅の広い練習用ゲートを通過させます。ゲート通過が可能になれば、毎日の調教時に通過し、ゲート通過に馴らします。徐々に競馬で使用するのと同じ幅のゲート通過に馴らしていきます。

ゲートでの駐立と扉の閉鎖

 ゲート通過に馴れた後は、ゲートの扉を開いた状態で駐立することを馴らします。その後は前扉が開いた状態で駐立させ、後躯を十分にパッティングしてから後ろ扉を閉めます。この時に馬が落ち着いているようであれば、騎乗者の扶助で少し後退させて、後ろ扉に臀部が触れることを経験させます。このときに、馬が前に突進する可能性があるので注意して行います。最後に前扉を閉めて最終的なゲート内での駐立に馴らします。

発進馴致

 前後の扉を閉鎖しても馬がリラックスした状態で駐立できたら、以下の手順で最終確認を行います。

1)騎乗した状態で前扉を閉めたゲートに入れる 

2)後ろ扉を閉める 

3)ゲート内でおとなしく10秒程度駐立させる 

4)前扉を開け、騎乗者の扶助により常歩で発進する 

JRAではジャンプアウトまでの馴致は行っていませんが、ゲートの前扉が開くとともに、騎乗者の扶助により常歩でスムーズに出ることができるところまで練習しています。この発進馴致の確認は12月末に日を改めて2回行った後、3月上旬に再確認を行っています。また、その後も毎日、扉のないゲートを落ちついた状態で常歩通過しています。このような状態でトレセンにバトンタッチできるよう心掛けています。

 

警戒心が強いサラブレッドは初めて経験することに敏感に反応しやすいため、ゲート馴致のみならず全ての馴致過程において、焦らずに馬が理解するまで根気よく馴らす必要があります。

最後になりますが、日高育成牧場の育成馬展示会は49日(月)10時~に開催を予定しております。実馬の立ち馬展示後には、1600mトラック馬場において騎乗供覧という形でブリーズアップセール上場予定馬のトレーニングを皆さまに披露させていただきます。

また、日高育成牧場では、軽種馬育成調教センター(BTC)が行う騎乗者養成コースの研修生に対して1月から実践研修の場を提供してきましたが、育成馬展示会はその研修の総仕上げの場ともなっています。研修生も展示および騎乗供覧に参加しますので、彼らの研修の成果もご覧いただければ幸いです。多くの皆さまのご来場をお待ち申し上げております。

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49日(月)の日高育成牧場の育成馬展示会ではBTC騎乗者養成コース研修生の騎乗ぶりにも注目して下さい。写真は2011年の育成馬展示会BTC研修生を背に軽快な走行を披露したダンツミュータント号(先頭、父:マイネルラヴ)とモンストール号(2番手、父:アドマイヤマックス

活躍馬情報(事務局)

先週の中山競馬7R(3500万)におきましてJRA育成馬オペラダンシング号が優勝しました。同馬は、宮崎育成牧場で育成調教され、昨年のブリーズアップセールにて取引された馬です。

また、同馬の優勝により昨年当セールで取引された育成馬は、14頭勝ちあがり(新馬戦優勝6頭含む)、延べ20勝(内オープン競走3勝、特別競走2勝)となりました。

今後もJRA育成馬の活躍にご期待頂ければ幸いです!

    本年のブリーズアップセールは424日(火)に開催いたします。

多くの皆様にご来場頂ければ幸いです。

                    【325日(日) 3回中山競馬2日目 7R】  

                3500万 (ダート:1,800m

             オペラダンシング号(セイントリープレアの09 牡

                 父:オペラハウス  厩舎:尾形充弘 (美浦)  

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初乳の重要性~「移行免疫不全」について~(生産)

 日高育成牧場では、2月23日に今年初となるJRAホームブレッドが誕生しました(写真1)。予定日はちょうど1週間ちがったのですが、1頭の分娩が終わるとそれに触発されたのか隣の馬房で見ていた次の1頭にも陣痛が来て分娩を始めました。視覚?嗅覚?それとも別の何か?馬の分娩を誘発する物質があるのでしょうか。馬の繁殖のメカニズムにはまだまだ未知の部分が多く、我々の研究テーマは尽きることがありません。さて、今回は、新生子馬にとって問題となる「移行免疫不全」のお話です。

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写真1 今年のJRAホームブレッド第1号「ドリームニキハートの12」

(めす、父アルデバラン、母の父チーフベアハート)

「移行免疫不全」とは

 有名な話ですが、馬の胎盤の構造はヒトと異なるため、妊娠中に母馬の抗体(免疫グロブリン)が血液を介して子馬には移行せず、初乳を摂取することで初めて子馬は抗体を獲得します。生後2週齢から子馬自身で抗体を産生し始めますが、その量は約3ヶ月齢までは十分ではないと言われています。ですので、いかに良質の初乳を子馬に摂取させるかが生後まもない子馬の感染症予防の観点から重要になります。もう少し詳しく言えば、母馬に対しては分娩予定日の1~2ヶ月前までに各種ワクチン(馬インフルエンザ、馬ロタウイルス、破傷風、馬鼻肺炎など)を接種しておくと、高濃度の免疫グロブリンを子馬に移行させることができます。また、環境中の細菌やウイルスの抗体を作るために、子馬が生まれた後親子を放牧する予定のパドックなどに同じく分娩1ヶ月前までに放牧しておくと良いでしょう。

母馬の乳汁を用いた検査

子馬は初乳さえ飲めば問題ないかと言えば、実はそうではありません。母馬の出す初乳の質が常に良いとは限らないからです。分娩前に漏乳していたりすると、初乳中の免疫グロブリンがすでに流出してしまっており十分でないことがあります。初乳の質は見た目でもある程度判断できますが(写真2)、初乳に含まれる免疫グロブリンの量をより正確に推測するには、糖度計を用いたBrix値を指標とすることを推奨します。初乳のBrix値が20%以上であれば免疫グロブリンの豊富な良質の初乳と推測することができます。このBrix値は、子馬が十分初乳を摂取したかどうかを推測することにも利用できます。「子馬が摂取前の初乳のBrix値」から「分娩1012時間後の乳汁のBrix値」を引いた差が10以上であれば十分量の抗体が移行したと推測できます。もし、その値が10未満であれば子馬は「移行免疫不全」の状態にあると判断されます。

Brix値についてはこちらをご参照下さい。

「日高育成牧場での分娩前後の対応」

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写真2 良質の初乳は「緑がかった黄色」に見えます

子馬の血液を用いた検査

 前述の母馬の乳汁を用いた検査はあくまでも推定で、厳密に言えば子馬の血液中の免疫グロブリンを測定することが望ましいと言えます。しかしながら、現在のところ免疫グロブリンそのものを測定するには外部の検査機関に依頼することになりますが、すぐには結果が出ません。子馬が初乳を吸収できるのは生後24時間以内と言われており、結果を待ってからストックしてある初乳を飲ませようと思っても遅いということになってしまいます。そこで、簡易に子馬の血液中の免疫グロブリンを測定する方法として、「グルタルアルデヒド凝集反応」があります。この方法は、グルタルアルデヒドという消毒薬や固定液として使われる試薬を子馬の血清と混ぜて、血清が固まる時間から免疫グロブリン量を推定するという方法です。この方法は獣医師による検査が必要ですが、詳細は下記の通りです。

1. グルタルアルデヒドを純水で10%に希釈した溶液を用意する

2. 血清500μℓに10%グルタルアルデヒドを50μℓ加える

3. 血清が固まる時間を測る

4. 10分以内で固まればIgG800mg/mℓ以上(優良)

5. 60分以内で固まればIgG400800mg/mℓ(可)

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写真3 子馬の血液中に十分な抗体が移行していれば血清が固まります

「移行免疫不全」の治療法

①冷凍初乳の投与

 前述の「子馬が摂取前の初乳のBrix値」から「分娩1012時間後の乳汁のBrix値」を引いた差が10未満の場合、もしくは「グルタルアルデヒド凝集反応」で血清が固まる時間が60分以上かかる場合には子馬は「移行免疫不全」の状態にあると判断され、治療が必要になります。

まず推奨されるのがストックしておいた初乳を飲ませるという方法です。初乳をストックする方法は、まず対象馬ですが初産や高齢の繁殖牝馬では初乳の質は良くても量が十分でない場合があるので避けます。また、過去に新生子溶血性貧血(新生子黄疸)を起こしたことのある繁殖牝馬も避けます。1頭の繁殖牝馬から25%以上のBrix値を持つ初乳を500mℓ採乳することを目安とします。搾乳の前にタオルなどで乳房を拭き、ボウルなどで乳汁を受けます。ガーゼなどで濾過してゴミを除去し、ジップロックなど密閉できる容器で保存します。100mℓずつ小分けにしておくと、投与の際量がわかりやすくて便利です。一般の家庭用冷蔵庫では1年間程度は品質を保っていられます。解凍する際は自然解凍かぬるま湯を用いて行なって下さい。電子レンジなどを用いて高温にしてしまうと、たんぱく質が変性してしまうため、せっかくの初乳が台無しになってしまいます。投与は哺乳瓶などで5001000mℓ与えますが、子馬が飲まない場合は獣医師を呼び経鼻カテーテルを用いて強制的に投与する必要があります。子馬が初乳を吸収できるのは生後24時間以内と言われており、中でも6時間までの吸収率が最も高いと言われています。ですので、初乳の投与は遅くとも生後24時間以内、可能であれば12時間以内、理想的には6時間以内に実施します。

②血漿輸血

 初乳のストックがない場合、もしくは冷凍初乳を投与したにもかかわらず「グルタルアルデヒド凝集反応」の結果が改善されない場合は「血漿輸血」を考慮しなくてはなりません(写真4)。海外では血液型不適合の起こらないユニバーサルドナーの血液を用いた輸血用血漿製剤が市販されていますが、日本国内ではありません。ショックなどの副作用もありますので、あくまでも保存初乳の投与を第一選択として考えるべきです。

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写真4 血漿輸血の様子

 新生子馬は感染症に弱く、成馬であればただの熱発で済むようなものでも、肺炎や化膿性関節炎など重篤になる恐れがあります。子馬の免疫状態を正しく把握しておくことが、子馬の将来のために非常に重要です。

「育成馬を知ろう会」を開催しました(宮崎)

3月に入っても厳しい寒さが残る日本列島。しかし、宮崎育成牧場では春の気配を感じることが増えてきました。日中は気温が20度を上回ることも多く、調教中には小鳥がさえずります。騎乗者もジャンパーを脱ぎ、半袖で1日を過ごす者も少なくありません。

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場内の桜にも花がつき、だいぶ春らしくなってきました。

育成馬の調教ですが、年明けより1,200mのキャンターを2本行うインターバルトレーニングに取り組んでおり、2月中旬からはスピード調教を開始しました。現在は2本目のキャンターをラスト3ハロン45秒程度(ハロン15秒程度)で走る調教を行っており、基礎体力(心肺機能や筋力)が向上した育成馬たちをみてとても頼もしく、心強く感じます。

 さて、当場で39日・10日に「育成馬を知ろう会」を開催しましたので簡単にご紹介します。このイベントは、近年馬主になられた方々をお招きし、セリで馬を購買する際の参考としていただくために開催しました。セリで馬を購買する楽しさや購買した馬が競走馬になる過程でどのような調教を行っているかをお伝えするため、馬の見方、選び方および購入する際に注意することなどをご紹介し、育成馬の調教や飼養管理を行っている様子を間近でご覧頂きました。

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育成馬の見方や選び方の説明を行いました。馬は17ロマンスビコーの10(牡、父:シンボリクリスエス

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比較展示の形式で育成馬をご覧頂きました。

JRAブリーズアップセールは、セリに不慣れな方にもわかりやすい「入門編のセリ」として開催しています。その一環として開催されましたこのイベントで、一人でも多くの新規馬主の方々に「セリで馬を買う楽しさ」が伝わり、セリに参加される方が増えることを心より祈っております。

 また、このようなイベントのないときでも、馬主・調教師の皆様にいつでも調教や飼養状態をご覧いただける環境を整えています。一人でも多くの方に育成馬をご覧いただき、ブリーズアップセールで「JRAが育成した馬たち」の関係者になっていただけたら幸いです。セール開催まであと1ヶ月少々、気を引き締めて育成馬の管理にあたりたいと思います。

話は変わりますが、宮崎育成馬の現在の装蹄状況についてお知らせします。セールに上場する全馬の四肢装蹄が229日に終了しました。今年の育成馬は大きな蹄病もなく、装蹄も順調に行うことができました。入厩当時、体も蹄も小さい馬たちの様子をみながら削蹄を行っていたことを懐かしく思い出します。さらに負荷の大きくなるスピード調教に向け、準備万端です。

今回は落鉄により蹄壁の一部が欠損し、釘を用いた装蹄が困難となった育成馬に接着装蹄(釘を使わず、接着剤で蹄鉄を装着する装蹄法)を実施しましたのでご紹介します。ご存知のとおり、ディープインパクト号は接着装蹄を行って出走していました。接着装蹄は蹄壁が欠損して蹄釘での装着が困難な場合や、蹄壁が薄く蹄釘によるストレスを避けることが望ましい馬に使用されますが、育成馬にもこのような装蹄技術は応用されています。現在、同馬はブリーズアップセールに向けて順調に調教をこなしています。

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接着装蹄を施した蹄。調教も順調にこなしています。

宮崎は気候が温暖で年中青草を食べられるため、馬体や蹄の成長には最高の環境といえます。現在、宮崎育成牧場では育成期の調査研究の一環として蹄壁がどの程度伸びるか調べています。また、日照時間の短くなる12月からは半数の馬にライトコントロール法を実施し、ライトコントロール法の有無で蹄壁の成長に違いがあるかについても併せて調査しています。10月から始めた調査で、12月までは見られなかった両群間の成長の差が、12月以降ライトコントロール法を開始した群で蹄壁の成長が早くなる傾向が見られました。今後も調査を継続し、データがまとまりましたらお知らせしたいと思います。

競馬学校騎手課程生徒の研修(日高)

最低気温が-20を下回る日もあった厳しい寒さの1月とは対照的に、2月は降雨を認めるなど少し寒さが緩み、冬の寒さも峠を超えたように感じられました。3月を迎えましたが、一面雪で覆われている浦河では、まだまだ春の訪れを感じることはできません。

しかし、育成馬達の調教後の息の入りの変化を見ていると、4月のブリーズアップセールへのカウントダウンを実感でき、私たちに春の訪れを感じさせてくれます。

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捕獲したキジをくわえ威嚇するキタキツネ。この姿を見ていると、厳しい冬を乗り越えることに生きる意味があるのではと感じてしまいます。北海道の春の訪れはもう少し先のようです。

育成馬の近況 ~調教メニューのパターン化~

育成馬達は順調に調教メニューをこなしており、ベースとなる800m屋内トラックでは、基礎体力を養成する目的で“オフ”の状態での調教に主眼を置き、メンタル面を落ち着かせ、競馬に不可欠な隊列を整えた調教を心掛けています。

また、2回は屋内1,000m坂路コースにおいて、34頭を1つのロットとした縦列でのストリングを組んでのステディキャンターを2本実施しています。スピードは1本目が60秒/3F2本目が54秒/3Fを目安としon the bridledでの走行を意識しています。

そして、坂路調教の翌日には再び800m屋内トラックで“リラックスを目的とした調教を実施しています。このように、1週間の調教の流れをパターン化することによって、馬への“オン”と“オフ”の区別の理解を促し、メンタル面のケアも心掛けています。日頃の調教からスピードよりも“on the bridled”の手応えを重要視し、ブリーズアップセールの“時計よりも馬の走法や出来映え”をアピールするというスローガンに則した仕上げを目標としています。

2回は坂路コースで4頭を1つのロットとした縦列でのストリングを組んでのステディキャンターを実施し、調教メニューをパターン化しています。先頭からダンシングサクセスの10(牡 父:アグネスタキオン)、ユメノセテアラムの10(牡 父:ケイムホーム)、セーフアズロックの10(牡 父:アルデバラン)、メガクライトの10(牡 父:アルデバラン

ブリーズアップセールの騎乗供覧に備えて

さて、日高育成牧場には毎年、大学生を対象とした「サマースクール」をはじめとして多くの研修生が来場しますが、2月の中旬にはその中でも最も若い研修生がやってきました。その研修生とは、競馬学校の騎手課程29期生6です。

皆様ご存じのように、ブリーズアップセールの騎乗供覧では、JRA育成牧場の職員はもちろん、現役騎手の他に、騎手になるための教育の一環として競馬学校の騎手課程の生徒達も騎乗しています。その中でも最も騎乗鞍が多いのが騎手課程生徒となっています。

今回の研修では、ブリーズアップセールの騎乗供覧に備えたJRA育成馬の騎乗研修がメインとなり、1日に3頭の育成馬に騎乗しました。研修初日には、2歳のこの時期の若馬に初めて騎乗するという緊張感も手伝って、騎乗姿勢に硬さが見受けられましたが、鞍数が増えていくに従って未来の名ジョッキーを予感させる巧みな騎乗へと変わっていきました。

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ブリーズアップセールの騎乗供覧に備えて育成馬に騎乗する騎手課程生徒(左2番手、右先頭および2番手)。先頭左からサマーヴォヤージュの10(牡 父:ネオユニヴァース)、フェリストウショウの10(牡 父:フォーティーナイナーズサン)、ペイミーキャッシュの10(牡 父:ケイムホーム)、先頭右からフジティアスの10(牡 ホームブレッド父:ケイムホーム)、ワンモアベイビーの10(牡 ホームブレッド 父:ケイムホーム

ホースマンとして

研修中は早朝から朝飼付け、騎乗前の馬房掃除、育成馬の騎乗、騎乗後の手入れ、そして治療および検査の手伝いにとどまらず、近隣牧場の見学、セリに上場するためのコンサイナー業務に関する講義、さらには浦河ポニー乗馬スポーツ少年団との交流など普段は接することのない方々との交流を持つことができました。

特に普段接することの少ない生産者の方々の繁殖牝馬や1歳馬に対する思いを聞く機会を得て、1頭の競走馬が競馬場で出走するまでには、多くの人々が関わっていることを改めて理解することができたのではないでしょうか。

また、好奇心旺盛な1歳馬と触れ合う機会を得て、馬という動物の自然な姿や行動を少しは理解することができたのではないでしょうか。これらの経験が立派なホースマンとしての礎となるものと思われます。

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生産者の方の話に聞き入る騎手課程生徒。1頭の競走馬が競馬場で出走するまでには、多くの人々が関わっていることを理解できたのではないでしょうか。

人材づくりの重要性

今回の研修は移動日も含めて6日間と非常に短い期間でしたが、私が感じた彼らの特筆すべき点は、我々のアドバイスをいとも簡単に自分のものとして吸収することができる「柔軟性」、つまり「若さ」です。別の言い方をすると、まだ自分の軸となる考え方が構築されていないともいえるのでしょう。

将来、優れた騎手あるいはホースマンになれるかどうかは、個人の資質はもちろん重要ですが、それに勝るとも劣らないくらい彼らを取り囲む環境が彼らの将来を左右するのではないかということを感じずにはいられませんでした。

一方、彼らにはその環境が与えられるのを待つのではなく、自ら進んでその環境を手に入れられるように多くの人と接し、談笑するだけでなく真の言葉を引き出せるように努力するとともに、時間があれば著名人が執筆した本を読み、何かのヒントを得られるよう心がけてほしいと感じました。

強い馬づくりのためには、人材をつくることが常に先であることを改めて実感することができた今回の研修でした。

424日(火)に開催されるブリーズアップセールでは、JRA育成馬のみならず、騎手課程生徒の騎乗ぶりにも注目していただきたいと思いますので、是非、中山競馬場までお越し下さい。

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424日(火)のブリーズアップセールでは競馬学校騎手課程生徒の騎乗ぶりにも注目して下さい。写真は2011JRAブリーズアップセールで騎手課程生徒を背に軽快な走行を披露したJRAホームブレッドのマロンクン号(父:デビッドジュニア