« 厳冬期の1歳馬の管理~移動距離を増やす工夫~(生産) | メイン | ブリーズアップセールの上場番号が決定しました(事務局) »

競馬学校の騎手課程生徒の研修(日高)

 日高育成牧場のある浦河でも、日中は運動をすると少し汗をかく日もあり、少しずつではありますが、春の訪れを感じさせる今日この頃です。我々は気温の上昇や雪解けの進行程度によって春の訪れを感じることが一般的ですが、自然界に生きる動物が最も春の訪れを感じることができるのは、日照時間の延長ではないかと想像します。実際、冬期にも昼夜放牧を継続している1歳馬達も日照時間の延長を体感して春の訪れを感じているためなのか、1月初旬と比較すると放牧地でじゃれ合う姿も目立つようになってきました。

●ライトコントロール法

 このように、長日性季節繁殖動物である馬は、日照時間、つまり光によって季節を感じています。この現象を利用したのが「ライトコントロール法」です。このライトコントロール法は、電球や蛍光灯の照明によって日照時間を人工的に延長させ、冬期に卵巣活動が休止している繁殖牝馬の性腺機能の発達を促すことで初回排卵を早めるために開発された方法です。

 JRAでは、繁殖牝馬に発情を誘発するライトコントロール法を育成馬に応用しています。この育成馬への応用の背景には、冬期は日高育成牧場よりも宮崎育成牧場の方が、馬を仕上げやすいという経験、また、冬期の日照時間が日高育成牧場よりも長い宮崎育成牧場の馬は、骨や筋肉の発育に関与する性ホルモンの分泌量が日高育成牧場の馬よりも高いという事実が存在しています。

 ライトコントロール法(1歳の12月から2歳の4月までの間、馬房の天井にタイマー式の100W白色電球を設置し、昼14.5時間、夜9.5時間の環境を作出)を育成馬に応用することにより、牡馬では筋肉量が増加し、また、牝馬では性ホルモンの分泌時期が早くなり、分泌量も高くなること、さらに、毛艶は牡牝に関わらず良くなる効果を認めています。これらの結果は、冬期の北海道において競走馬の育成を行う場合には、効果的な方法であると考えられます。

Photo

 育成馬へのライトコントロール法の応用。LED電球によってもライトコントロールの効果が得られます。

●育成馬の近況

 JRA育成馬の調教は、2月に入りさらに本格化しています。調教のベースとなる800m屋内トラックでは2,400m~3,200m(F24~22秒)の調教を実施し、基礎体力を養成する目的で“リラックス”した状態での調教に主眼を置き、メンタル面を落ち着かせ、競馬に不可欠な隊列を整えた調教を心掛けています。一方、週2回は屋内  1,000m坂路コースにおいて、3~4頭を1つのロットとした縦列でのストリングを組んでのステディキャンターを2本実施しています。1本目が60秒/3F、2本目が54秒/3Fをスピードの目安とし、“On the bridle”での走行を意識しています。また、坂路調教の翌日には再び800m屋内トラックで“リラックス”した状態での調教を実施しています。このように、1週間の調教の流れをパターン化することによって、馬への“オン”と“オフ”の区別の理解を促し、肉体的な疲労の回復のみならず、メンタル面のケアも心掛けています。

 日頃の調教から、スピードよりも“On the bridle”の手応えを重要視し、ブリーズアップセールの“走行タイムよりも馬の走法や出来映えをアピールする”というスローガンに則した仕上げ、また、ブリーズアップセールが目標ではなく競馬で能力を発揮できることを目標としています。

 

 

 

 競馬学校の騎手課程生徒の騎乗研修期間2/7~11)中の調教動画。いずれも赤白帽色の騎乗者が騎手課程生徒になります。

●競馬学校騎手課程生徒の研修

 さて、日高育成牧場ではJRA育成馬を活用して騎乗技術者、牧場従業員、獣医師など広く生産・育成および競馬に携わる優秀な人材を競馬サークルに供給することができるよう、様々な実践研修を行っています。今回は、その中でも最も若い研修生である競馬学校の騎手課程生徒30期生7名の研修について触れてみたいと思います。

 ご存じのようにブリーズアップセールの騎乗供覧では、JRA育成牧場の職員はもちろん、現役騎手の他、騎手になるための教育の一環として競馬学校の騎手課程生徒達が騎乗しています。実は、これらの中で、最も騎乗数が多いのは騎手課程生徒です。

 

Photo_2

 ブリーズアップセールの騎乗供覧に備えて育成馬に騎乗する騎手課程生徒(先頭右、後方左右の赤白帽色)。左先頭からエイシンパンドラの11(牝父:ダンスインザダーク)、キャニオンリリーの11(牝 父:ヨハネスブルグ)、右先頭からクレバーマリリンの11(牝 父:ディープスカイ)、アポインテッドラブの11(牝父:マツリダゴッホ)

 今回の研修では、ブリーズアップセールの騎乗供覧に備えたJRA育成馬の騎乗研修(騎乗研修の様子は上の動画をご参照下さい)が主となり、1日に3頭の育成馬に騎乗しました。研修中は騎乗研修以外にも、早朝から朝飼付け、騎乗前の馬房掃除、騎乗後の手入れにとどまらず、近隣牧場の見学、セリに上場するためのコンサイナー業務に関する講義、さらには浦河ポニー乗馬スポーツ少年団との交流など普段では体験できないことを経験できたのではないでしょうか。これらの経験の中でも、生産者の方々の繁殖牝馬や1歳馬に対する思いを聞く機会を得て、1頭の競走馬が競馬場で出走するまでには、多くの人々が関わっていることを改めて理解できたものと思います。

 

Photo_3

 浦河ポニー乗馬スポーツ少年団の練習に参加した競馬学校の騎手課程生徒。

 4月23日(火)にJRA中山競馬場で開催されるブリーズアップセールでは、JRA育成馬のみならず、騎手課程生徒の騎乗ぶりにも注目していただきたいと思います。当日は、是非、JRA中山競馬場までお越し下さい。

Bu

 

 ブリーズアップセールでは競馬学校の騎手課程生徒の騎乗ぶりにも注目して下さい。写真は2012 JRAブリーズアップで騎手課程生徒を背に力強い走行を披露したシンネン号(2月16日1回小倉3日目10Rあすなろ賞優勝馬 父:ステイゴールド 母:キタサンバースデー)。※写真提供:馬市ドットコム様