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育成馬ブログ 生産編③(その1)

●繁殖牝馬の飼養管理

 

前回から引き続き「ケンタッキーの馬産」について

紹介していきたいと思います。

今回は、繁殖牝馬の飼養管理についてお話します。

 

○繁殖牝馬の飼養管理の違い

 

日本(日高地方)と米国(ケンタッキー州)の

繁殖牝馬の飼養管理の違いについて図1にまとめました。

まず分娩前の管理についてですが、

日本では分娩前にウォーキングマシンもしくは

引き馬による運動を課す牧場が多いのに対し、

米国ではそのような特別な運動は課されていませんでした。

 

また、近年日本では分娩時に子馬を引っ張らない

“自然分娩”が普及しつつありますが、

米国では子馬を引っ張りかつ母馬に鎮痛剤を投与するなど、

積極的な分娩介助がなされていました。

ヒトの医療で出産する際に“無痛分娩”が普及していることが

背景にあるのではないかと考えられました。

 

種付の際には、日本では牧場のスタッフが

母子両方を馬運車に載せて種馬場まで連れて行くのが一般的ですが、

米国では牧場のスタッフは立ち会わず、

輸送業者が種馬場まで母馬を連れて行く、

その際子馬は馬房内に置いて行くというスタイルが普及していました。

 

そのほか、日本ではエコー検査で子宮内に空気が認められた場合など

必要な馬のみ陰部縫合いわゆるキャスリックが行われていますが、

米国では伝統的に牝馬全頭に対し陰部縫合が行われていました。

 

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図1 繁殖牝馬の飼養管理の違い

 

○分娩前の繁殖牝馬の放牧

 

繁殖牝馬の管理について、個別に説明していきます。

まず分娩前の放牧については、

空胎馬は基本的に24時間放牧されていました(図2)。

感染症予防のため、空胎馬は妊娠馬から隔離され、

本場から離れた分場で管理されていました。

 

妊娠馬については、分娩予定日まで1ヶ月以上間隔がある馬については

空胎馬と同じく24時間放牧され、放牧地で飼付がなされていました。

分娩予定日の1ヶ月未満になると、分娩厩舎付近に集められ、

1日8時間程度の昼放牧に切り替えられていました。

放牧地で分娩してしまうこともあるため、30分毎にスタッフが見回り、

分娩監視をしていました。

 

放牧地の広さを決める際の目安に

“1 acre, 1 horse(ワンエーカー、ワンホース)”という言葉が

使われていました。

これは馬1頭当たり1エーカー(約0.4ヘクタール)以上の

広さが必要という意味です。

この基準より広い放牧地が用意できれば、

馬は栄養面でも運動面でも支障をきたすことなく

すこやかに成長することができると考えられていました。

 

また、温暖なケンタッキーと言えども12月から2月までは

寒さで放牧地の牧草が伸びなくなるため、

草架を使用し放牧地内に乾草が置かれていました。

中に入れる乾草はルーサン、もしくは

ルーサンとオーチャードのミックスが使われていました。

 

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図2 分娩前の繁殖牝馬の放牧

 

(つづく)