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育成馬ブログ 日高④(その2)

●喉頭部超音波検査について

 

前回の内容に引き続き喉の話題となりますが、

今回は喉頭部超音波(エコー)検査について説明します。

 

日高および宮崎の両育成牧場では、

今年から育成馬全頭に対し喉頭部のエコー検査を行っています。

この検査は、喉頭片麻痺やその前駆病態の診断の指標として、

喉頭の動きを支配している

筋肉群(外側輪状被裂筋:CAL、背側輪状被裂筋:CAD)を

評価することの有用性を調査しています。

 

喉頭部エコーは以下のように枠場にて鎮静下で行われます(図1)。

 

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図1 喉頭部エコーの様子

 

喉頭片麻痺は被裂軟骨小角突起が外転機能不全を起こすことで

気道狭窄と呼吸障害を呈す疾患であり、

そのほとんどは迷走神経の枝の反回神経が障害され、

被裂軟骨の運動に関わる喉頭部の筋肉が麻痺に陥ることにより起こります。

この場合、CALやCADの筋組織全体が

萎縮および変性することが知られており、エコー検査により、

萎縮については断面積の低下として、

変性については輝度の増加(白っぽく見える)として描出されます。

 

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図2.CAL縦断面:正常像と比較して

喉頭片麻痺症例のCALの輝度が高い(色が白い)

 

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図3.CAD横断面:正常像と比較して

喉頭片麻痺症例のCADは薄く、輝度が高い。

 

このように、エコー検査は極めて有用な診断手法ですが、

単独でパフォーマンスへの影響の有無を判断することはできません。

そのため、安静時および運動時内視鏡、

さらに騎乗時の呼吸音やパフォーマンスなどの

総合的な診断が必要になります。

 

喉頭部エコー検査は近年その注目を集めていますが、

まだまだ研究途上の分野でもあり、

エコー所見と呼吸器異常との関連性には

明らかになっていないことが沢山あります。

日高・宮崎の両育成牧場では、

育成馬の喉頭部エコーと内視鏡のデータを併せて蓄積していくことで、

競走能力に影響を及ぼす呼吸器病態を解明し、

より早く、正確な診断を行えるよう研究を進めています。