~姿勢?いいえ肢勢(しせい)のお話です~
今回の育成馬ブログでは「馬の肢(あし)」に関して少しお話をしたいと思
います。
皆さんも学校などで「姿勢を正して!」と言われた経験はありませんか?
人間でしたら言葉で伝えれば背筋を伸ばして姿勢を正すことも出来ますが、
馬には伝わらないものです。
ただ、馬の場合は姿勢ではなく「肢勢(しせい)」・・そう肢(あし)の
立ち姿が重要です。
当場では、毎年10頭近くの仔馬達が誕生していますが、生まれたばかりの
仔馬たちの中には、写真1のように安定しない肢勢の立ち方をする馬もいます。
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写真1 生後まもない子馬。まだ立ち方が安定してない。
このような肢勢はほとんどが成長とともに改善しますが、矯正が必要になる
こともあります。そこで普段から歩き方や肢勢の観察を行い(写真2)、必要
があれば蹄(ひづめ)を切って調整します(写真3)
ただし、削蹄だけでは改善できない場合には道具などを使って肢勢の矯正を
行います、まさに「肢勢を正して!」ですね。
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写真2 歩き方や肢勢をチェック
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写真3 蹄を切って調整中
一例として、写真4は軽度の内反姿勢の仔馬のものです。内反姿勢とは下肢
関節が体の中心に向かって曲がってくる肢軸異常の一つで、蹄尖が内を向く
「内向肢勢」とは区別されています。
写真の仔馬の場合は、削蹄でのバランス調整だけでなく、蹄用のウレタン製
樹脂の充填材を使い(写真5)、蹄の外側を人工的に広くする「張出し」
(写真6)を設けることによって正常な肢軸に近づくよう矯正を行いました。
これらの矯正は早ければ早いほど効果が期待できます。
重要なことは普段から肢勢を観察し、何か異常を感じたらみつけたら早期に
適切な処置を施すことです。これこそ早期発見、早期治療ですね!
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写真4 内反肢勢の仔馬。腕節以下が内に曲がっている
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写真5 矯正のために蹄用のウレタン製樹脂の充填材を使用して張出しを製作
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写真6 完成した張出し部分