24-25育成馬ブログ(宮崎②)

〇育成馬の入厩と育成研究(UTC)について
 

 9月23日にセプテンバーセールで購買した4頭と輸送を延期していたサマーセール購買馬の1頭の5頭が北海道から長旅の末、宮崎育成牧場に到着しました。これをもって、本年も宮崎育成馬22頭(牡11頭、牝11頭)が揃いました。今年はミスチヴィアスアレックスをはじめ、キセキやダノンスマッシュ、ダノンキングリー、マテラスカイ、クリソベリルといった新種牡馬の産駒から、キタサンブラックやモーリスといった実績のある種牡馬の産駒まで22頭すべて種牡馬が違うバラエティ豊かなラインナップとなりました。すでに馴致が始まっていますが、彼らが将来、競走馬として活躍できるよう、職員一同精いっぱい育成していきたいと思います。11月2日には秋の育成馬見学会を開催します。皆様に実際に今年の育成馬をお披露目する機会となりますので、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。

 さて、我々はこれまで育成馬の様々なデータを取り、育成研究として発表してきました。今年、宮崎育成牧場で実施する研究を1つ簡単に紹介したいと思います。今回我々はUTCという機器を用いて若馬の屈腱部の検査を定期的に実施していく計画を立てています。UTCとはUltrasound Tissue Characterizationの略で、腱・靭帯の横断像を0.2mm間隔で連続撮影できる超音波診断装置(エコー)です。撮影部位を三次元的に画像構築し、腱線維束の太さや連続性の違いにより腱線維配列を4段階に分類し腱全体に占める割合を百分率で評価することが可能で、新たな腱・靭帯の評価法として注目されています。本会では常磐リハビリテーションセンターにて、屈腱炎発症馬のリハビリ中の検査として使用されています。もともと馬用に開発された機器ですが、最近は人医療でもアキレス腱を評価するために使用されているようです。

 育成馬も馴致が始まり人が騎乗して調教をしていくと、一部の馬の中には屈腱部に症状が現れることがあります。その症状も様々でほとんどは一過性で病的なものではなく、生理的な反応と考えられます。これまで我々は、育成期の屈腱部に関する研究として一時的に浅屈腱が太くなる馬でも競走期の成績や浅屈腱炎の発症率に差はないということや、育成期には正常でも浅屈腱内に微小な血管が見られることがあるといったことを発表してきましたが、今回はこのUTCを用いて育成期に若馬の屈腱の配列がどのように変化するのかというのを調べていきたいと思っています。データを蓄積する必要があるため結果が出るのは何年か先のことになると思いますが、この研究が育成期の屈腱部の症状の解明につながることや、将来、競走馬の事故防止や、いまだ競走馬を悩ませている浅屈腱炎の予防につながる基礎研究となることを期待しています。

Utc1_3写真①実際に検査しているところ

Utc2_3写真②プローブが自動で動いていきますが、正確な検査画像を得るためには技術が必要です

Utc3_2写真③得られた画像は腱繊維の配列によって色が変わります(正常な馬の画像です)

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先週の競馬でJRA育成馬が2勝を挙げましたsign01

9月14日(土)中京競馬4R 3歳以上1勝クラスで、ラミアストラーダ号(育成:日高)、9月14日(土)中京競馬9RききょうS(2歳オープン)でスリールミニョン号(育成:日高)が勝利しましたsign01

_202409144r1_04_fe69469月14日(土)中京競馬4R 3歳以上1勝クラス ダ1,900m

ラミアストラーダ号(タカミツサクラ2020)牡 父:エピファネイア

厩舎:田中 克典(栗東)

馬主:前田 幸治 生産牧場:木村牧場

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9月14日(土)中京競馬9R ききょうS(2歳オープン) 芝1,400m

スリールミニョン号(ルミノハレブタイ2021)めす 父:ミスターメロディ

厩舎:高橋 康之(栗東)

馬主:福盛 訓之 生産牧場:笹川大晃牧場

今後のさらなる活躍をお祈り申し上げます。

24-25育成馬ブログ(日高①)

〇新人職員の速歩ドライビング練習

 サマーセールも終わり、現在日高育成牧場では54頭(ホームブレッド7頭、市場購買馬47頭)のJRA育成馬を繋養しています。これまで当ブログでも何度かご紹介してきましたが、近年騎乗馴致の際に速歩でのドライビングを行っています。今回は、新人職員の速歩ドライビング練習についてご紹介したいと思います。

 2年ほど前から我々は騎乗馴致段階で“速歩でのドライビング”を積極的に取り入れています(写真1、動画1)。まず、速歩のドライビングでは「左!」「まっすぐ!」「右!」「まっすぐ!」「左!」「まっすぐ!」「右!」・・・という風に、短時間で多くのコマンドを馬に出し続けることとなるため、馬が人にフォーカスし、人から出される命令にすぐに応えようと従順になる効果があると感じました。その結果、以前より人の言うことをきく馬が増えた気がしています。
 また、常歩よりも速いスピードでドライビングを行うことにより、馬が本当にまっすぐ進んでいるか、開き手綱の扶助を理解しているかが確認でき、結果として騎乗調教開始後にまっすぐ走れる馬が増えました。例えて言えば、自転車を運転する際に、ゆっくり漕ぐとフラフラしてしまいますが、ある程度のスピードを出し続けることでまっすぐな状態を維持できるのと同じ理屈です。スタッフたちには速歩で進む馬と同じ速さで移動しなくてはならないため苦労をかけましたが、そのおかげで走路での騎乗調教開始直後からまっすぐ走れる馬を作ることができました。

Photo(写真1)速歩でのドライビング

https://youtu.be/EmuFczpnADo

(動画1)速歩でのドライビング

 昨シーズンからは具体的に、「8の字」や「コの字」といった図形をきれいに描いてドライビングおよびその後の各個騎乗をするように指示しました。「8の字」のドライビングでは直線部分で左右のハミをあえてフリーにすることで、ハミが外れている状態ではひたすらまっすぐ前進していれば良いことを教えていきました(図1)。「コの字」のドライビングでは覆い馬場の出入口など馬が気をとられそうなポイントをあえてまっすぐに通過させることで、人の指示があるまではまっすぐ走り続けなくてはならないことを教えこみました。その結果、馬にとって“まっすぐ走り続けることがオフ”の状態を作ることができ、更にまっすぐに走れる馬が増えたと実感しています。

Photo_3(図1)8の字の図形

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(図2)コの字の図形

 さてこの「速歩でのドライビング」ですが、誰でもいきなり出来る訳ではありません。騎乗することとは別のスキルが要求されるため、今年初めて日高育成牧場勤務になった新人たちには育成馬の騎乗馴致開始前に乗馬を用いて速歩ドライビングの練習をしてもらっています。
 ドライビングで馬を曲げるためには、曲がりたい方向(左に曲がりたいなら左)の手綱を短く持つ方法と、曲がりたい方向と逆の方向(左に曲がりたいなら右)の手綱を伸ばす方法の2つのやり方がありますが、今回はどちらかといえば簡単な前者の方法についてご紹介します。まず、左に曲がりたい場合、レーンを2本とも右手に持ちます。次に空いた左手で2本のレーンを束ねている箇所より前方(馬側)で左のレーンを持ちます。そうすると、左のレーンが右のレーンより短くなり、左のレーンが張られるため、馬が内方姿勢となり左に曲がります(図3)。これが基本の動作となり、あとは人の脚力で速歩をする馬についていき、この動作を繰り返せるように練習するのみです(写真2、動画2)!

Photo_5(図3)曲がりたい方向の手綱を短く持つ方法

Photo_6(写真2)速歩ドライビングの練習

https://youtu.be/L7gTmlZib0E

(動画2)速歩ドライビング練習風景

 以上、今回は新人職員の速歩ドライビング練習についてご紹介いたしました。今シーズンも9月4日から育成馬の騎乗馴致を開始いたします。今回の記事が普段育成牧場で馬を調教されている皆さんの少しでもお役に立てば幸いです。

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8月18日(日)中京競馬1R 障害3歳以上未勝利で、日高育成牧場で育成されたプリモスペランツァ号が勝利しましたsign01

同馬は平地3勝に続く、4勝目となります。

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8月18日(日)中京競馬1R 障害3歳以上未勝利 芝3,000m

プリモスペランツァ号(カーナヴァル2019) 牡 父:エスケンデレヤ

厩舎:中竹 和也(栗東)

馬主:伊藤 篤 氏 生産者:オリエント牧場

今後のさらなる活躍をお祈り申し上げます。

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先週の競馬でJRA育成馬が1勝を挙げましたsign01

7月28日(土)新潟競馬9R 3歳未勝利で、ゲインサポート号(育成:宮崎)が勝利しましたsign01

_202407289r_09_b1859 7月28日(土)新潟競馬9R 3歳未勝利 ダ1,800m

ゲインサポート号(ローザミスティカ2021)  

父:デクラレーションオブウォー

厩舎:斉藤 崇史(栗 東)

馬主:中越 達也氏 生産者:矢野牧場

今後のさらなる活躍をお祈り申し上げます。

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先週の競馬でJRA育成馬が1勝を挙げましたsign01

7月20日(土)福島競馬1R 2歳未勝利で、アイビーヒメチャン号(育成:日高)が勝利しましたsign01

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7月20日(土)福島競馬1R 2歳未勝利 ダ1,150m

アイビーヒメチャン号(マトゥリアルカ2022) 牡 父:パイロ

厩舎:牧 光二(美 浦)

馬主:石坂茂ラボ (株) 生産者:静内山田牧場

今後のさらなる活躍をお祈り申し上げます。

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先週の競馬でJRA育成馬が2勝を挙げましたsign01

7月6日(土)小倉競馬1R 障害3歳以上未勝利で、オオキニ号(育成:宮崎)、

7月7日(日)小倉競馬6R メイクデビュー小倉で、スリールミニョン号(育成:日高)が勝利しましたsign01

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7月6日(土)小倉競馬1R 障害3歳以上未勝利 芝2,860m

オオキニ号(ポポチャン2019) 牡 父:アドマイヤムーン

厩舎:鈴木孝志(栗東)

馬主:岡 浩二 氏 生産者:ハクツ牧場

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7月7日(日)小倉競馬6R メイクデビュー小倉 芝1,200m

スリールミニョン号(ルミノハレブタイ2022) 牝 父:ミスターメロディ

厩舎:高橋康之(栗東)

馬主:福盛 訓之 氏 生産者:笹川大晃牧場

今後のさらなる活躍をお祈り申し上げます。

24-25育成馬ブログ(宮崎①)

〇九州1歳市場と1歳馬の入厩

 6月になり新馬戦が始まりました。先日送り出した2022年産まれの育成馬たちもデビューし始めています。今後の活躍を期待しています。さて、新馬戦が始まり梅雨の時期を迎えると、早くも来年のブリーズアップセールに向けて動き始めます。
 6月18日にJBBA九州種馬場で九州1歳市場が開催されました。今年最初の1歳市場であり、今後次々と開催される1歳市場の動向を占う上でも注目されます。そして我々にとってはヨカヨカを購買した思い入れのある市場です。九州産馬はJRAでは小倉競馬場で、地方競馬では佐賀競馬場で九州産馬限定レースが組まれており、またヨカヨカや中山グランドジャンプを連覇したイロゴトシなどの活躍もあって人気があります。一時期は30頭程度まで減った生産頭数も100頭近くまで増えてきています。その人気を反映するように、セリ会場へ多くの購買者が来場し、このセリ特有の上場馬1頭ずつの展示にたくさんの熱い視線が送られていました。

 結果31頭の上場馬のうち、22頭が売却され18年ぶりに売却率が70%を超えました。また九州1歳市場最高価格の馬が出るなど、この後続く各地の1歳市場も昨年以上に活況になることを予感させる市場となりました。本会もタムロウイング2023(父ヴァンセンヌ)を550万円(税込)で購買しました。生産牧場はヨカヨカと同じ熊本県の本田土寿さんです。本馬の兄であるタムロドリーム(父ジャスタウェイ)も宮崎育成牧場出身のJRA育成馬で小倉競馬場の新馬戦で勝利をおさめています。

Photo 写真① 多くの来場者が注目する中での1頭ずつの展示

Photo_2 写真② 南国らしいセリ会場

 そのタムロウイング2023が6月25日に宮崎育成牧場に入厩しました。今年の1歳世代の最初の入厩となります。まだまだ幼い体つきをしていますが、青草をたくさん食べて成長し、第二のヨカヨカを目指して頑張って欲しいと思います。
 他の1歳馬が来るまで2週間ほどは1頭だけですが、寂しくないように乗馬と一緒に放牧管理していきます。

Photo_3 写真③乗馬と一緒に放牧(手前がタムロウイング2023)

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先週の競馬ではJRA育成馬が3勝を挙げましたsign01

6月22日(土)東京競馬3R 3歳未勝利でミスファントム号が、函館競馬4R 3歳未勝利でダンツドール号が、6月23日(日)東京競馬6R 3歳未勝利でミスヨシゼン号が勝利しましたsign01

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6月22日(土)東京競馬3R 3歳未勝利 ダ1,300m

ミスファントム号(エクディス2021) 牝 父:スワーヴリチャード

厩舎:矢野英一(美浦)

馬主:村田 哲朗 氏 生産者:沖田 博志 氏

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6月22日(土)函館競馬4R 3歳未勝利 ダ2,400m

ダンツドール号(エアブライス2021) 牝 父:ホッコータルマエ

厩舎:四位 洋文(栗東)

馬主:山元 哲二 氏 生産者:グローリーファーム

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6月23日(日)東京競馬6R 3歳未勝利 ダ1,400m

ミスヨシゼン号(バアゼルザウバー2021) 牝 父:シニスターミニスター

厩舎:古賀 慎明(美浦)

馬主:橋本 忠雄 氏 生産者:市川牧場



今後のさらなる活躍をお祈り申し上げます。



23-24育成馬ブログ(生産④)

各種実習および講習会を実施しました

 6月になり、日高も気温20度を超える日が続き、暑い季節がやってきました。生産牧場では分娩や種付けが一段落したのもつかの間、牧草の収穫作業や掃除刈りが忙しくなってきている頃かと思います。JRA日高育成牧場でも、牧草の成長度合いと天気予報をこまめに確認しながら、収穫のタイミングを慎重に見極めているところです。

Photo 乾草作りは天候に左右される難しい仕事です

 忙しい季節である一方、当歳馬たちを観察するにはよい季節だと思います。今年生まれた当歳馬たちは、すでに集団での親子の昼夜放牧を開始しています。離乳するのはまだ先ですが、だんだんと親子の距離が離れ、子馬同士で行動する時間が増えてきて、放牧地での行動にも個性が感じられるようになってきました。青々とした放牧地で気持ちよさそうに過ごしている子馬を見て、とても癒されています。

Photo_2 放牧地でリラックスする親子馬
 

JBBA子馬実習 

 JRA日高育成牧場におけるこの季節は、例年各種研修や実習が行われる時期でもあります。5月30日および6月6日にはJBBA日本軽種馬協会の生産育成技術者研修生の皆様の子馬実習を実施しました。この研修は、将来生産牧場や育成牧場で働きたいと考えている若い研修生の皆さんが、4月から翌3月までの1年間のカリキュラムで、馬の扱い方や生産などの知識を学ぶ研修です。同研修からは、これまでに多くの若いホースマンが巣立っていき、生産地で活躍しています。
 当牧場では、JRAホームブレッドの親子や育成馬を利用した実習を各季節で実施しており、今回は「親子馬の扱い方」というテーマで8名×2班の計16名が来場しました。実習では、子馬の手入れや保定の仕方、親子馬を同時に引き馬する方法などを、座学と実技実習の両方を通して学んでいただきました。当歳馬に初めて触れるという生徒さんも多い中、一生懸命に取り組まれているのが印象的でした。

Photo_3 一人で親子馬を引く方法を練習するJBBA研修生

馬女ネット研修会
 さらに6月5日には、日高女性軽種馬ネットワーク(通称「馬女ネット」)の皆様の研修会も開催されました。「馬女ネット」は日高管内の軽種馬産業にかかわる女性を中心とした団体で、色々な研修会などを企画し馬についての勉強をされている皆様です。今回は、「当歳馬の基本的な扱い方」というテーマでご依頼があり、当牧場の当歳馬を使って、馬房内での手入れ、保定、しつけ、経口投与の仕方や引馬の時に気を付けることなどを実習形式で体験していただきました。各牧場で普段用いているやり方がそれぞれある中で、さらに違う方法を学び取り入れようという前向きな気持ちに刺激をいただける、とても良い時間となりました。

Photo_4研修会には18名の会員の皆様がご来場されました

Photo_5 普段と違う引き馬の方法にも積極的に挑戦してくださいました

 これらの講習会などのイベントで他の団体の皆さまと交流することで、お互いの牧場の情報交換ができたり、自分の牧場でのやり方を改めて見直す良い機会となりました。さらに、馬たちにとっても、普段と異なるシチュエーションを経験することで、精神的な成長にもつながります。人も馬もこれからも様々な経験を積極的にして、成長していきたいものです。


JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-の発行
 JRA日高育成牧場での繁殖牝馬や子馬の管理方法や考え方を記載した「JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-」が発行されました。下記のサイトからPDFファイルをダウンロードできますので、ぜひともご活用ください。

https://jra.jp/facilities/farm/training/research/