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24-25育成馬ブログ(生産①)

秋は講習会の季節です


 今年は比較的暖かい秋となっている日高地方ですが、10月中旬を過ぎて急に朝夕冷え込むようになってきました。雪の季節ももう目前です。寒暖差が激しい時期になりますので、馬達同様、私たちも体調管理には十分気を付けて過ごしたいと思います。

 さて、日高育成牧場の繁殖班では9月~11月は例年多くの研修や講習会を行う季節となっています。例えば、JBBA主催で近隣牧場の皆様向けの「実践研修プログラム」。こちらは各牧場の比較的若手の皆様向けの講習で、学びたい内容を参加者の皆様に選んでいただき、それに合わせたカリキュラムを組み、講義や馬を使った実習を行います。
 その他にも毎月行っている「担い手飼養管理集中研修」なども通して、こちらから発信するだけでなく、牧場や馬産業関係者の皆様と貴重な情報交換をすることができる、とても有意義な時間となっています。

Photo_3牧場の皆様の研修の様子。馬のBCSのつけ方の実習などを行っています。

 また、今年は静内の小学校において、6年生に向けて馬に関する授業をする機会もいただきました。生徒さんたちが住んでいる日高地方が、競走馬生産にとってどれほど重要な地域なのか、馬はどのようにして生まれ、人を乗せることを覚え、そして競走馬になっていくのか、などをお話したのですが、皆さんとても真剣に聞いてくれました。
 質問の時間も、時間いっぱいまで途切れずにたくさんの手が挙がり、馬に対する興味や熱のすごさに圧倒されて帰ってきました。競馬サークルでは長らく人材不足が叫ばれていますが、今回の生徒さんたちのように、子供たちや若い方々が少しでも多く馬文化に関心をもってもらえたら、未来は明るいのではないかと思います。

Photo静内の小学校の授業の様子。皆さん熱心に授業を受けていました

 人材確保のトピックスとして、JRAでは本年から新しい試みとして、馬に関わる様々な職業をご紹介するサイト「UMAJOB」を開設いたしました。馬に関わる仕事としては、牧場スタッフ、厩務員、騎手、獣医師、装蹄師など様々ありますが、それらが実際にどのような仕事内容なのか、どうしたらその職に就けるのかなどの情報をわかりやすくまとめています。ご興味のある読者の方は是非一度ご覧ください。

UMAJOB −お仕事紹介 生産牧場スタッフ−

 最後に、日高育成牧場の当歳馬たちの近況です。9月中旬までで、10頭全ての離乳が終わり、子馬たちだけでの昼夜放牧が続けられています。例年は9月中により広い放牧地がある分場に移動させるのですが、今年は分場の厩舎の改築のため移動できずにいました。しかし、この工事もつい先日無事に終わり、新しい厩舎が完成しました。

Photo_4完成した分場の新しい厩舎

 近々移動させる予定なのですが、現在は「馬運車に乗る練習」をしています。当歳馬達にとっては初めての経験になる馬運車への乗車。馬は狭くて暗い環境は得意ではなく、そもそも初めてのものには「物見(ものみ)」をして警戒する性質があるため、初めはなかなか乗ってくれません。大体数日から1週間程度かけて「馴致(じゅんち。ならすこと)」をします。初日は車を近くで見せるだけ、翌日は荷台の入り口に近づけるだけ、その次は入口に少し入ってみる・・・といったように、馬の反応を見ながら少しずつ納得させていきます。面白いもので、こういった行程を馬に経験させる中では、馬ごとの性格の違いがハッキリ出てきます。嫌がって立ち上がって抵抗する馬、はじめは怖がっても意外にすんなり入る馬、など様々です。このように色々な経験をたくさん積むことで、成長して強い馬になってほしいと願っています。

Photo_2馬運車馴致の様子

JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-について

 JRA日高育成牧場での繁殖牝馬や子馬の管理方法・考え方を記載した「JRA育成牧場管理指針-生産編(第3版)-」を発行しています。下記のサイトからPDFファイルをダウンロードできますので、ぜひともご活用ください。

「JRA育成牧場管理指針(生産編)」

24-25育成馬ブログ(宮崎②)

〇育成馬の入厩と育成研究(UTC)について
 

 9月23日にセプテンバーセールで購買した4頭と輸送を延期していたサマーセール購買馬の1頭の5頭が北海道から長旅の末、宮崎育成牧場に到着しました。これをもって、本年も宮崎育成馬22頭(牡11頭、牝11頭)が揃いました。今年はミスチヴィアスアレックスをはじめ、キセキやダノンスマッシュ、ダノンキングリー、マテラスカイ、クリソベリルといった新種牡馬の産駒から、キタサンブラックやモーリスといった実績のある種牡馬の産駒まで22頭すべて種牡馬が違うバラエティ豊かなラインナップとなりました。すでに馴致が始まっていますが、彼らが将来、競走馬として活躍できるよう、職員一同精いっぱい育成していきたいと思います。11月2日には秋の育成馬見学会を開催します。皆様に実際に今年の育成馬をお披露目する機会となりますので、ぜひ足を運んでいただけたらと思います。

 さて、我々はこれまで育成馬の様々なデータを取り、育成研究として発表してきました。今年、宮崎育成牧場で実施する研究を1つ簡単に紹介したいと思います。今回我々はUTCという機器を用いて若馬の屈腱部の検査を定期的に実施していく計画を立てています。UTCとはUltrasound Tissue Characterizationの略で、腱・靭帯の横断像を0.2mm間隔で連続撮影できる超音波診断装置(エコー)です。撮影部位を三次元的に画像構築し、腱線維束の太さや連続性の違いにより腱線維配列を4段階に分類し腱全体に占める割合を百分率で評価することが可能で、新たな腱・靭帯の評価法として注目されています。本会では常磐リハビリテーションセンターにて、屈腱炎発症馬のリハビリ中の検査として使用されています。もともと馬用に開発された機器ですが、最近は人医療でもアキレス腱を評価するために使用されているようです。

 育成馬も馴致が始まり人が騎乗して調教をしていくと、一部の馬の中には屈腱部に症状が現れることがあります。その症状も様々でほとんどは一過性で病的なものではなく、生理的な反応と考えられます。これまで我々は、育成期の屈腱部に関する研究として一時的に浅屈腱が太くなる馬でも競走期の成績や浅屈腱炎の発症率に差はないということや、育成期には正常でも浅屈腱内に微小な血管が見られることがあるといったことを発表してきましたが、今回はこのUTCを用いて育成期に若馬の屈腱の配列がどのように変化するのかというのを調べていきたいと思っています。データを蓄積する必要があるため結果が出るのは何年か先のことになると思いますが、この研究が育成期の屈腱部の症状の解明につながることや、将来、競走馬の事故防止や、いまだ競走馬を悩ませている浅屈腱炎の予防につながる基礎研究となることを期待しています。

Utc1_3写真①実際に検査しているところ

Utc2_3写真②プローブが自動で動いていきますが、正確な検査画像を得るためには技術が必要です

Utc3_2写真③得られた画像は腱繊維の配列によって色が変わります(正常な馬の画像です)