「屈腱炎」の治療方法
こんにちは。
今回は、前回から引き続いて「屈腱炎」のお話です。
前回は、その検査方法についてご紹介しましたが、今回は、最近研究が始まった新しい
治療方法について、簡単にご紹介したいと思います。
その治療方法は、「幹細胞移植:かんさいぼういしょく」というものです。
この方法は再生医療を応用したもので、日本の馬の分野では数年前から始まりました。
まず、「屈腱炎」を発症した競走馬の骨髄や脂肪組織等から、体内の色々な細胞に変化
できる細胞(幹細胞)を取り出します。
この幹細胞は、病気(屈腱炎)によって失われた細胞に変化し、その(腱の)機能を元どおり
に再生することが期待されています。
JRAでは、競走馬の胸骨から幹細胞を取り出しています。
取り出した幹細胞は、約3週間かけて必要な量になるまで培養し、細胞数を増やします。
細胞数が十分に増えたところで、「屈腱炎」を発症した部分(前回お話した浅屈腱中央の
黒い部分)に移植します。
エコーで炎症部位を確認しながら、注意深く注入します。
通常、炎症部位は「かさぶた」のような組織で埋められてしまい、元通りにはなりません。
このため再発しやすく、「競走馬の不治の病」と言われてきました。
この治療方法において、移植された幹細胞は『「自分は腱の細胞になるんだ」と思い込み、
元通りの腱組織を再生しようと働く』と考えられています。
この治療方法は始まったばかりで多くの課題がありますが、今後の研究に期待しましょう。