【美浦TC】馬の歯
こんにちは。
今回は獣医さんからのレポート3回目。テーマは「歯」です。馬の歯はどうなっているのか?ぜひご覧ください!
さて、突然ですが、ヒトはどのようにしてウマをコントロールできるようになったか、ご存知でしょうか?答えは幾つかありますが、最も重要なことはハミを開発し、上手に利用できたことです。
ヒトの歯(大体32本)が隙間なく切歯(前歯)から後臼歯(奥歯)まで並んでいるのに対し、ウマの歯(牡馬で40本、牝馬で36本)は切歯と前臼歯の間に大きな隙間(歯槽間縁)があります。この部分があったからこそ、ヒトはウマにハミをかませ、ウマの動きをコントロールできるようになったのです。大昔のある優れた馬術者がハミを開発し、ウマにかませた時から、ヒトとウマの関係はより親密になったのです。
また、ウマは草食性であり、常に草をすり潰す必要があるため、ヒトと歯の構造は異なります。ヒトの歯の表面がエナメル質で覆われているのに対し、ウマの歯はエナメル質、セメント質、象牙質の異なる3つの歯質で覆われています。この柔らかい歯質(象牙質)と硬い歯質(エナメル質)により複雑な噛み合わせ面をつくり、やすりのように草をすり潰すのです。このため、ウマは年をとるにつれて歯が磨耗し噛み合わせ面の形状が変化します。これを利用してウマの年齢を推測することも可能なんですよ。
次は歯のトラブルについてのお話です。
皆さんは健康な歯をお持ちですか?ヒトにはムシ歯や、歯槽膿漏など歯のトラブがいろいろあります。
ウマでも同様の疾患が発生することもありますが、最も多いのは斜歯です。これは、やすりのように使用した臼歯が磨耗した結果、鋭く尖ってしまい、自分の舌や頬を傷つけてしまう状態です。口の中が痛いので、飼葉食いが落ちたり、ハミ受けが悪くなったりします。また、集中力が落ちて、イライラすることもあるでしょう。その場合には歯鑢(しろ)を用いて噛み合わせがよくなるように削り落とします。(右の写真をご覧ください。)
健康で強い競走馬にするために、歯の管理をするのも獣医師の仕事の一つです。
これから暑い夏を迎えます。冷たいものがキーンと歯にしみないように、皆さんも歯のチェックしてみてはいかがでしょうか。