導入2日目、
ある程度の距離を保っていれば同じ放牧地にいても、乳母は攻撃してきませんが、
通常の母子の様子とは、かなりかけ離れています。
人の保持がなければ哺乳はできず、
乳母には、噛み付き防止の「口カゴ」、
蹴ることを防止するための「足かせ」が装着されています。
乳母の母性本能を覚醒させる方法として、他の馬との接触があります。
特にオス馬の存在が刺激になるという説があります。
そこで、2頭がいる放牧地に乗馬(去勢馬)を連れてきましたが、
あまり、効果は認められませんでした。
乳母導入の2日目でしたが、あまりに進展がなく、実の母馬の元に戻すことも考えました。
しかし、後戻りよりも前進することを選択し、思い切って他の母子の馬群がいる放牧地に放してみました。
最初は、子馬が他の馬に追いかけられて、逃げ惑い孤立し、
誰もが、他の馬群との放牧は早すぎたと後悔した瞬間、
突然、乳母が子馬を他の馬から守るしぐさを見せるようになり、
ここから、乳母と子馬の距離がグッと縮まりました。
不思議なもので、あれほど子馬を敬遠していた乳母も、
ほかの母子との馬群に入り、逃げ惑う子馬に頼られることにより、母性本能のスイッチがオンに入ったようです。
集団生活を基本として子孫を残し続けてきた「馬」という動物の本能を改めて実感しました。
その後は、乳母は保持されなくても、
人が近くにいれば、哺乳を受け入れるようになりました。
現在も、本当の母子のような距離の近さまでには至っていませんが、
他の母子と同じ放牧地で、昼夜放牧されています。
人工哺乳は継続中ですが、体重増加率は他馬と同程度になりました。
馬房や放牧地では、このように変則的な方法で哺乳しています。
子馬の「生きたい」という生命力の強さには脱帽です。
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