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人と馬との関係を考える①

今日は少々真面目な話です。

 

ここ競走馬リハビリテーションセンターでは、

病気やケガで休養を余儀なくされた馬たちをお預かりし、

厩務員課程を目指す若者達が世話をしています。

 

 

 

我々人間でも、特に子供は外に出たいものですが、

馬もある程度の時間は外に出たり、適度な運動をしたい生き物です。

しかし、リハビリ中の馬は、痛めてしまった部位を治すことを第一に、

休養させるか、競馬に出走している時よりごく軽めの運動しか出来ません。

 

 

馬達にとってはストレスのたまる環境です。

 

 

歩きなさいの指示で、歩く。脚でトンと指示を出せば、走る。

といった人馬のやりとりが成立しなくなること、しばしば。

そういったことを繰り返しているうちに、

馬が人を理解しようとしなくなるケースも稀にあります。 

  

 

 

馬(療養馬)に、人(研修生)を理解しようとするよう意識を変えさせたい。

それを実現するには、

人(研修生)も、馬(療養馬)を理解しようと歩み寄らなければいけない。

  

 

 

美浦トレーニング・センター乗馬苑の馬取扱いのプロの方が、

ホースクリシャン・宮田朋典氏の提唱する人馬の共生メソッドをベースに、

人馬の相互理解を深めるためのグランドワークを提案してくれました。

 

  

グランドワークとは、動物の行動心理学をもとに、

馬上ではなく地上で馬の心理等を考慮しながら、

人の出す小さなサインを通じて馬との相互理解を深める作業です。

 

 

  

実際には競走馬の療養馬にも応用しましたが、本ブログでは、

最近ワガママ(※)が目立ってきていた当センターの乗馬くんへの応用をご紹介したいと思います。

※装鞍を嫌がる、引き馬の際に暴れる、訓練時に跳ねて人を振り落とそうとする

 

 

 

 


まず、馬房内で人間への反応(指示に従うのか)。

①馬房内で無口ではなくロープホルター(※)を使用して馬に指示を出します。

※コブを支点としてプレッシャーとリリースの方向を伝えやすい馬具

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②ロープホルターと手の合図で指示を出しながら、方向転換。

小さく旋回させる。進む、止まる。指示に従って行動するかどうかの確認。

受け入れました。

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③人の指示に従うことが確認されたら、

指示→行動の合間に、馬の項を押しながらヘッドダウンを促します。

(頭が下げると馬は安心感が増すため、人の指示で頭を下にする)

受け入れました。

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④音に対する恐怖心軽減するために長鞭の先にビニル袋を付けたものをバサバサ。

 受け入れなければ受け入れられるよう徐々に距離を遠→近、音を大→小していきます。

こちらは感じて欲しくない刺激に鈍化させる作業ですが、受け入れました。

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写真で見ると分かりづらいのですが、

指示を出し、馬が受け入れたら褒める。

この繰返しの中で、

少しずつ人馬の関係が変わっていっていく、、、気がしました。

 

 

 

しかし、翌日人が馬房の前を通ると、この乗馬くん。

馬房から顔を出し、威嚇してきました。

短時間では、馬の意識は大きく変えるところまでは至りませんでした。

 

 

 

しかし、

馬房内では人の指示に従ったということは、先に進めそうです。

翌日は、丸馬場でのアプローチに挑戦しました。

その時の模様は明日のブログで。

 

 

 

 

 

 

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当センターでは療養馬を担当する研修生を募集しています(要1年以上の乗馬経験)。

興味のある方は以下の電話番号にお電話ください。

競走馬リハビリテーションセンター 総務係 TEL:0246-43-3185