国際ウマ・イヌ運動解析学会(ICEL9)に参加しました
運動科学研究室の杉山です。
本年夏(8月末)に、オランダはユトレヒト(図1)で開催された国際ウマ・イヌ運動解析学会(International conference on Canine and Equine Locomotion 9; ICEL9)に参加しました。父の仕事の関係で幼少時にオランダで数年暮らした経験から、私にはとても懐かしく、学会を含めて美しいオランダの一部を紹介したく思い筆をとりました。
ユトレヒト大学は、オランダ最大の大学というだけでなく、ヨーロッパ全体でも屈指の規模を誇ります(図2)。会場となった講堂はセレモニーホールとしての特色を持ち、後方2階には大きなパイプオルガンがあって、いかにもヨーロッパを彷彿させる佇まいでした。
図1. 美しいユトレヒトの街並み
図2. 講演のためのステージ;日本と異なり、演者は中央の演題で喋り、右手奥のモニターと、これとは別に設けられた聴衆付近のモニターに発表スライドが映されるしくみでした。
ICEL9では、主に乗用馬とスポーツドッグの動きを解析し、学術の視点から議論されます。総じて、動画やウェアラブル・デバイスなどを使って動物の動きを測定し、怪我の発生機序や事故防止について研究したものが数多く発表されました。ユトレヒト大学も運動解析学では有名な大学で、慣性センサーとモーションキャプチャを用いた歩様解析技術を使って、馬場馬術における人馬一体の動きの対称性を評価することに非常に高い関心を持ち、解析結果を報告していました。馬術ではウマの背中や腰部の関節可動域の動きとライダーの動きとのバランスが競技に影響してきます。ゆえに、人馬にモーションキャプチャのマーカーを取り付けた解析報告をはとても印象的でした(図3)。
図3.馬の背腰に取付けられたモーションキャプチャ・マーカー
近年、スポーツ競技に特化した動物の疾病の予防と診断には、運動中のモニタリングが重要であると結論付ける報告が多く、これらの研究成績を臨床にも応用しようと、ユトレヒト大学内の病院には巨大な歩様検査場が併設され(図4)、すでに実用に向けて動いているのは驚きでした。
図4.ユトレヒト大学構内の歩様検査場
オランダの9月は朝晩涼しく、厚手のコートを着ても問題ないような気候で、北海の怒涛や風や、霧雨の運河の橋の記憶が蘇えりました。今回、ICEL9に参加させていただき、運動解析の重要性を改めて認識でき、今後の研究の動機づけになりました。