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JRA育成馬が入厩しました(宮崎)

今年は全国的に暑い日が多くなっていますが、南国宮崎も例外ではありません。7月終盤ともなると気温は限りなく上昇し、鋭い日差しは容赦なく降り注ぎます。ミスト扇風機などを使用して馬の体調管理を十分行い、夏負けしないように気を使う日々が続きそうです。

さて話は変わりますが、2011JRAブリーズアップセール(425日、中山競馬場)で売却されたJRA育成馬が続々とデビューしています。宮崎で育成した馬は15頭がデビューし、そのうち3が勝ち上がりました(731日現在)。これからの更なる活躍を応援しています。

一方、宮崎育成牧場では来年のブリーズアップセールに上場予定の若駒たちが育成のスタートラインに立っています。先に開催されたセレクトセール・セレクションセールで購買した6頭(牡4頭、牝2頭)の1歳馬が、722日(金)に入厩しました。既に九州1歳市場で購買した育成馬が1頭入厩しているので、今年宮崎で育成する全24頭のうち7頭が揃ったことになります。

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馬運車から降りるズーナクアの10(牡馬、父:ダイワメジャー)。兄に重賞2勝のトウカイトリックがおり、血統的にも大いに期待できる馬です。

北海道 静内から南九州の宮崎育成牧場までの輸送は、23日にわたる長旅です。馬運車に乗った育成馬たちは2,000km以上の距離を約42時間、立ったままで過ごさなくてはなりません。今回はこの長旅の様子をお伝えしたいと思います。

720日(水)

セレクションセール翌日、宮崎に移動する6頭の育成馬は静内にある北海道市場に集まります。健康状態チェックと個体照合(マイクロチップの確認)を行ったのち、外傷予防のため輸送用肢巻きを装着します。この肢巻きは強く巻きすぎると屈腱部を圧迫してしまい、弱く巻くと輸送中にずれ落ちてしまうため、慎重に巻く必要があります。これらの準備が整ったら9頭積み馬運車に牡馬から積んでいきます。牝馬が前にいると牡馬は興奮して落ち着かないため、必ず牝馬が後ろに乗ります。馬たちは牧場から馬運車に乗って来ているので、ここで馬運車の「乗り換え」をして、12:00に北海道市場を出発しました。

 

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牧場から乗ってきた馬運車(写真上)から輸送用馬運車への乗り換え。馬間違えを防止するため必ずマイクロチップによる個体照合を実施します(写真下)。

輸送には獣医師を含む宮崎育成牧場の職員2名が付き添います。経路は、函館からフェリーに乗って青森に渡り、その後東北道北陸道中国道を通って九州へとひた走ります。輸送の大きな鍵を握るのが函館~青森間のフェリーです。馬を輸送する手段には車・飛行機・船などがありますが、馬は船輸送に最も弱いといわれています。フェリーが揺れると輸送熱(輸送が原因の発熱)を発症する馬や体調を崩す馬が多く出ます。そのため、フェリーを利用する輸送時には揺れの少ない大型フェリーを選び、少しでも換気のよい上層階に車を乗せています。今回は大型台風の影響もあってフェリーが大きく揺れたこともあり、下船後に輸送熱を発症する馬が出てしまいました。なお、この馬は直ちに抗生物質の投与を開始したこともあり、現在は元気に走り回っています。

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フェリーの乗船待ちをする馬運車。20:00発の大型フェリーに乗りました。

721日(木)

輸送開始からちょうど12時間後にあたる深夜0時に青森で下船し、本州をひたすら南下します。この頃になると元気のよかったやんちゃな育成馬たちにも疲れが出てきました。総輸送時間が42時間にも及ぶため、飼葉は車内で与えますが、車内で水をしっかり飲んで飼葉を残さず食べることが輸送中の元気のバロメーターといえます。夜21:30に宮島SA(広島県)に到着。ここを出ると、目的地の宮崎までは残り僅かです。

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車内で大人しくしているズーナクアの10。水はいつでも飲めるようにしてあります。

722日(金)

3:30 宮原SA(熊本県)に到着。輸送開始から36時間が過ぎた頃から疲労の色はさらに強まり、頭を水桶にもたれかけて休む馬も出てきます。脱水ならびに到着後の輸送熱発症を予防するため、疲労が顕著な馬にはビタミン剤と多めの補液(約4リットル)を行いました。その後九州道を走ること2時間、目的地である宮崎育成牧場に到着しました。

以上が今回の輸送の様子です。到着した育成馬は、馬伝染性貧血検査用の採血とアナボリックステロイド検査用の採尿、さらに再度の個体照合を実施します。涼しい北海道から蒸し暑い宮崎に来て、すぐ横を電車が走る新しい環境に驚きながらも自分の馬房でしっかり飼葉を食べる育成馬たちはとても逞しく見えます。

午後には短時間の集団放牧を行いました。はじめて合流する馬同士とあって、怪我が発生しやすい時です。特に牡馬は、順位付けがなされるまで走り回って蹴りあい、立ち上がって「相撲をとる」ことは避けられません。リスクはありますが、騎乗馴致までの期間に青草をたっぷり食べることで肉体の成長を促し、群れで適度な運動をすることで基礎体力が養成されることを見込み集団で放牧しています。

心配して見守る我々の気持ちなど知る由もなく、今年の馬たちも例年以上に元気に走り回りました。今日から来年のブリーズアップセールまでの期間、力強く成長する日々を楽しみながら彼らを毎日見守っていきたいと思います。

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元気に放牧地を駆け巡るロマンスビコーの10(写真上、牡馬、父:シンボリクリスエス)とカクテルの10(写真下、牡馬、父:新種牡馬アルデバランⅡ)