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育成馬ブログ 宮崎③

●期待馬の紹介(マイネカプリースの16)(宮崎)

 

11月上旬までは日中に暑いと感じることもあった南国宮崎でも、

11月中旬以降は最低気温が10℃を下回る日も散見されるようになり、

冬を迎えようとしています。

気温の低下に伴い、育成馬も夜間放牧を終了し、

昼放牧に管理方法を変更しています。

冬を迎えつつあるとはいえ、日中は暖かいと感じる日も多く、

育成馬達は調教後には、

放牧地あるいはパドックでの1~2時間の放牧によって

調教の疲れを癒しています。

 

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写真① パドック放牧でリラックスする

ガルネリの16(牡 父:ロージズインメイ)

 

○育成馬の近況

 

宮崎育成牧場所属のJRA育成馬の近況をお伝えいたします。

9月上旬から騎乗馴致を開始している1群(牡馬10頭)は、

角馬場でのウォーミングアップ、

500mトラック馬場でのハッキングを実施し、

その後1600mトラック馬場に場所を変えて、

一列縦隊で1600m、そして二列縦隊で1600m、

合計3200mのキャンターを実施しています。

スピードはハロン24秒程度とゆっくりとしたキャンターですが、

年内は落ち着いて真っ直ぐ走行させることを主眼に置いて

調教を進めていきたいと考えています。

 

一方、10月上旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬12頭)は、

牡同様に角馬場でのウォーミングアップ、

500mトラック馬場でのハッキングを実施し、

その後1600mトラック馬場において、

一列縦隊で1200m、そして二列縦隊で1600m、

合計2800mのキャンターを実施しています。

スピードはハロン26秒程度と牡よりもスピードを抑えています。

 

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写真② 1600m馬場での調教風景(左:牡、右:牝)。

年内は落ち着いて真っ直ぐ走行させることを主眼に置いて

調教を進めていきます。

 

○マイネカプリースの16

 

さて、今回は本年の宮崎育成牧場繋養馬のなかでも、

兄がG1タイトルを獲得している期待馬を紹介させていただきます。

その馬の名前は「マイネカプリースの16」です。

 

ご存じのように、

育成馬は母馬の名前に生まれた年代をつけた名前で管理され、

この馬であれば、

「マイネカプリース」という馬の2016年産駒ということになります。

馬は単胎動物で1年に1頭の出産が一般的であるため、

競走馬として馬名登録が完了するまでの育成期には、

このような仮の名前で管理されるのが通例となっています。

 

本題に戻りますが、

本馬の兄は2014年のスプリンターズS(G1)を制し、

現在も短距離路線で活躍中の

スノードラゴン(父:アドマイヤコジーン)です。

父はクロフネと異父兄妹になりますが、兄同様に芦毛であり、

当場にG1馬の弟妹が入厩することはほとんどないことからも

期待が高まります。

 

本馬は7月のHBAセレクションセールにおいて756万円で購買し、

7月下旬に宮崎育成牧場に入厩しました。

騎乗馴致を開始した10月上旬までの約2か月間は、

夜間放牧管理で宮崎の環境に慣らすとともに成長を待ちました。

その甲斐あって、入厩時に400kgであった体重は、

10月上旬には430kgにまで増加し、

一回り大きくなった印象を受けました。

 

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写真③ マイネカプリースの16のセリ上場前の6月(左)と

入厩後の9月(右)の写真の比較。

入厩後約2ヶ月で体重は30kgも増加しました。

 

入厩時には馬房に入るのを嫌い、引き運動時にも突然停止し、

前進しなくなるということも多々あり、

少し頑固な性格ではないかと心配しました。

しかし、騎乗馴致を開始すると、初日から停止の合図を理解し、

腹帯や臀部へのレーンの刺激にも過度な反応はなく、

ドライビングから騎乗まで順調に進み、

非常に理解力のある賢い馬だということが分かりました。

 

マイネカプリースの16の初期馴致動画

 

現在は、柔軟性に富んだストライドの大きなキャンターを見せており、

当場に入厩した当初よりも期待が膨らんでおります。

BUセールでも注目の1頭となるように

トレーニングを積んでいきたいと思いますので、ご期待ください。

 

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写真④ 放牧地での各個騎乗において

騎乗者の指示に従順なマイネカプリースの16

活躍馬情報(事務局)

11月11日土曜日の福島3R(2歳未勝利)で、

日高育成牧場で育成されたベルウッドキング号が、

ゴール直前で見事に差し切り、うれしい初勝利をあげました。

 

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11月11日 3回福島競馬3日目 第3R  2歳未勝利 芝 1,200m

ベルウッドキング号(アズマガールの15) 牡

【 厩舎:和田 雄二 厩舎(美浦) 父:バゴ 】

 

今後の活躍を期待しております。

育成馬ブログ 生産編④(その2)

●分娩と交配(種付)

 

○馬房に子馬を置いていく種付

 

種付は、子馬を馬房内に置いて、

母馬のみ馬運車に載せ種馬場に連れて行くというスタイルでした(図3)。

この際、牧場のスタッフは種付には立ち会わず、

輸送業者が母馬を預かって連れて行くのが一般的でした。

 

この方法で必ず注意しなくてはならないのが、

帰厩時に興奮した母馬が子馬を蹴ってしまうことがあるため(動画参照)、

最初の授乳までは母馬を保定すべきだということです。

 

なお、ケンタッキーには牧場が密集しており、

どの種馬場に行くにも母馬が出発してから帰厩するまで

1.5から2時間で戻ることができる環境でした。

 

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図3 種付は子馬を馬房内に置いて、輸送業者が母馬のみ種馬場に連れて行く

 

参考動画 種付けからの帰厩後にパニックになる母馬(JRA日高育成牧場)

 

 

○妊娠鑑定

 

妊娠鑑定は交配14日後、28日後、60日後に行われ、

さらに分娩予定日の1ヶ月前にも検査されていました(図4)。

 

初回である交配14日後の検査では胚の有無が確認され、

双胎が認められれば破砕が行われていました。

交配28日後の検査でも胚の生存を確認するとともに、

14日後および28日後にはエコー検査と併せて採血が行われ、

血中の黄体ホルモン濃度(=プロジェステロン濃度、P4レベル)が

測定されていました。

その結果、4ng/ml以下であれば

プロジェステロン製剤のレギュメイトの投与が

分娩1ヶ月前まで続けられるなど、

早期胚死滅の予防策がとられていました。

 

交配60日後の検査では、胎子の雌雄鑑別が、

分娩予定日の1ヶ月前には胎盤炎の兆候の有無を確認していました。

 

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図4 妊娠鑑定ではプロジェステロン濃度の測定と雌雄鑑別が行われる

 

次回は当歳馬の飼養管理について述べたいと思います。

育成馬ブログ 生産編④(その1)

前回から引き続き「ケンタッキーの馬産」について

紹介していきたいと思います。

今回は、分娩と交配(種付)についてお話します。

 

●分娩と交配(種付)

 

○分娩時の流れ

 

ダービーダンファームでの分娩時の流れを図1にまとめました。

まず、破水したら5m×5m程度の分娩用の広い馬房に繁殖牝馬を移します。

次に、マネージャーが産道内に手を入れて子宮内の胎子の姿勢を確認します。

そして、母馬のいきみに合わせて、子馬を牽引します。

牽引は3人で行われ、それぞれ胎子の頭、左前肢、右前肢を担当します。

子馬が娩出され臍帯が切れた後、

クリップで止血しクロルヘキシジンなどで消毒します。

母馬に鎮痛剤であるバナミンのペースト製剤を投与し、

後産をヒモで縛ります。

子馬全頭に浣腸をします。

母馬の乳汁をしぼり、Brix値をチェックします。

この時、Brix値が20より低ければ

冷凍保存してあるストック初乳を子馬に与えます。

 

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図1 分娩時の流れ

 

○積極的な分娩介助と米国での分娩の考え方

 

米国ではどこの牧場でも分娩時に積極的な介助がなされていました。

この背景には、ヒトの女性に無痛分娩が普及しており、産休が短く、

すぐに仕事復帰するという習慣が影響していると考えられました。

すなわち、馬もなるべくお産を軽くして、

早く次の妊娠に備えるという考え方がなされていました。

 

これは、現在JRAが推奨している

なるべく分娩介助しない“自然分娩”とは異なる考え方でした。

デメリットとして、子宮など産道の損傷、子馬の肋骨骨折、育児拒否などが

挙げられ、特に子馬の肋骨骨折は多い印象を受けました。

 

○交配(種付)適期の判断

 

交配適期の判断のために、獣医師が牧場に往診に来て、

馬房で直腸検査を始めとする検査が実施されていました。

観察する項目は日本と同じく、

エコー検査で卵胞の大きさと成長度合および子宮の浮腫を確認し、

膣検査で子宮外口の軟化を確認していました(図2)。

そして、交配の24時間前に排卵誘発剤のデスロレリンを投与し、

種付に向かっていました。

 

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図2 交配(種付)適期は獣医師が往診で卵巣と子宮を検査し判断する

 

(つづく)

強い馬づくりのための生産育成技術講座2017のご案内

強い馬づくりのための生産育成技術講座2017

 

JRA日高育成牧場は、競走馬の生産育成にたずさわる皆様への

情報提供・技術普及を目的とした

強い馬づくりのための生産育成技術講座2017 」を

下記日程で開催いたします。

 

事前申し込みは不要、入場無料でご参加いただけますので、

多くの皆様のご来場をお待ちしております。

 

開催日時および場所:

① 平成29年11月14日(火) 18:00-20:00

日高町 門別総合町民センター・大集会室2F

② 平成29年11月21日(火) 18:00-20:00

浦河町 浦河総合文化会館・文化ホール4F

 

講演内容:

・ 『子馬の運動と休息行動』

村瀬晴崇 (JRA日高育成牧場 生産育成研究室)

・ 『装蹄師から見た馬の蹄管理 ~育成馬から繁殖牝馬まで~』

竹田和正 (JRA日高育成牧場 専門役)

 

司会進行:

羽田哲朗 (JRA日高育成牧場 生産育成研究室)

日高軽種馬生産振興会青年部連合会

 

【主催】

JRA日高育成牧場

日高軽種馬生産振興会青年部連合会

 

【後援】

日高軽種馬農業協同組合

 

【お問い合わせ】

JRA日高育成牧場 生産育成研究室

TEL:0146-28-2084(土・日・祝除く9:00~17:00)

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