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育成馬ブログ(生産③)

○繁殖牝馬の歯科処置(生産③)

 近年世界的に馬の歯科処置の重要性が唱えられており、昨年日本ウマ科学会

が米国からDr. Raymond Q. Hyde氏(以下、Dr. Hyde)を招聘して講演会を

開催するなど具体的な技術が日本にも導入されつつあります。今回はJRA日高

育成牧場で行っている繁殖牝馬の歯科処置についてご紹介します。

 

●馬の歯の構造と摩耗

 馬は上顎が大きく、下顎が小さい構造をしているため(図1)、摩耗により

上顎の外側、下顎の内側の歯が尖りやすいという特徴があります(赤丸)。そ

のため、定期的に歯科用の鑢で歯の尖った部分を削る必要があります。Photo_2図1 上顎の外側、下顎の内側の歯が尖りやすい

 

●繁殖牝馬の口内炎

 繁殖牝馬の口腔内を検診すると、口内炎が見つかることがあります(図

2)。これは外側に尖った上顎の臼歯(赤矢印)が口腔粘膜を傷つけることに

よって起こります。このような異常があると痛みにより馬が十分飼料を食べら

れなくなり、ボディコンディションスコアが上がらない原因になることが考え

られます。

Photo_3

図2 繁殖牝馬に時々見られる口内炎

 

●定期的な歯科処置

 口内炎などの異常を治療および予防するため、JRA日高育成牧場では定期的

な歯科処置を行っています。馬を鎮静し、開口器を装着し、口腔内をくまなく

観察した後、問題となっている箇所を治療します。最近ではパワーツールと呼

ばれるバッテリー式の電動歯鑢が市販されており、短時間で尖った臼歯を削る

ことが可能になりました(図3)。

 

Photo_4

図3 電動歯鑢で尖った臼歯を削る

 

●妊娠している馬の歯科処置

 昨年来日したDr. Hydeに「妊娠している繁殖牝馬にはいつ歯科処置を行った

ら良いか?」と訊ねたところ、「(状態が安定している)妊娠3~7ヶ月に行う

と良い」という返事をいただきました。JRA育成牧場では離乳後の妊娠6~7ヶ

月の時期(具体的には9~10月になります)に繁殖牝馬全頭の歯科処置を行っ

ています。

 

今回の記事が繁殖牝馬の健康管理に少しでもお役に立てば幸いです。