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育成馬ブログ(生産⑦)

○ブセレリンを用いた発情誘起その2~実践編~

 

 生産牧場では種付のピークを迎え忙しい時期か思います。過去に同ブログで

ブセレリンを用いた発情誘起に関する報告を紹介しました

 http://blog.jra.jp/ikusei/2018/12/post-1d33.html

 今シーズン実際にJRA日高育成牧場繋養の繁殖牝馬に使用する機会がありま

したので経過を簡単にご報告いたします。

 

ブセレリンを用いた発情誘起方法

 米国にあるハグヤード馬医療機関およびケンタッキー大学のグループの調査

によると、卵胞の発育不全が認められた牝馬に対してブセレリンを筋肉内投与

(1日2回12.5μg)すると、71%の牝馬において平均日数10.42日で卵胞が35

~40mmに発育したと報告されています。そのうち64%の牝馬が排卵し、

72%が受胎したとされています。

 

●JRA日高育成牧場での使用例

 当場において、ブセレリンを用いて発情誘起を行った例の経過をご紹介しま

す。同馬は6歳12月に競走馬を引退し、1月5日に当場に到着しました。すぐに

ライトコントロールを開始しましたが、3月下旬になっても発情がきませんでし

た。そこで、3月29日にエコー検査を行い、左右の卵巣に大きな卵胞が全く存

在しないことを確認したうえで、ブセレリンの投与を開始しました。ブセレリ

ン製剤には日本国内で製造販売されているエストマール注を用い(図1)、ハ

グヤードの報告どおりの投与量(12.5μg)になるように3mlずつ朝8時と午後

15時の1日2回筋肉内投与しました。投与開始6日後から卵胞が大きくなり始

め、10日後には排卵直前の基準となる35mm大にまで育ちました。そこで排卵

誘発剤であるhCG(ゴナトロピン3000、図2)を1アンプル静脈内投与し、翌

日種付に向かいました。翌日のエコー検査で排卵が確認され、2週間後の妊娠鑑

定で受胎していることが確認されました。

Photo

図1 ブセレリン製剤(エストマール注)

Photo_2

図2 hCG製剤(ゴナトロピン)

 

 ブセレリンは日本製の薬剤が市販されており、今回1例ではありますが海外で

の報告と同様の効果が確認できました。何らかの原因により卵胞が発育しなく

なってしまった牝馬の治療の選択肢の一つとして、ご紹介した方法がお役に立

てば光栄です。この方法を試したい場合はかかりつけの獣医師にご相談くださ

い。