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南国宮崎にやってきました!(宮崎)

今回から育成馬日誌(宮崎)を担当することとなりました。これまで様々の場面でお世話になってきた師匠(と呼ばせていただきます)の後任は重責ですが、このブログについては育成馬のこと、宮崎のことを楽しく広範に書き連ねていきたいと思います。

ところで当宮崎育成牧場の業務の柱は、年が明け2歳となったJRA育成馬たちを、4月、5月のセールに向けて仕上げていき、その過程で得られた様々の知見や成果を民間に普及することにあります。そのためには当たり前ですが多くの時間馬をみて、馬に触れてその変化を感じ取ることが重要です。私はこれまで5年間のデスクワークを楽しく過ごしすぎたため?か、不摂生ですっかり体がなまってしまいました。来年のダービー・オークスを目指し日々鍛錬中の育成馬とともに、私も体力を向上させていく必要がありそうです。がんばっていきますので、どうぞよろしくお願いします。

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112日の朝、宮崎育成牧場に虹のアーチ。この後気温がぐんぐん上昇して・・・・

さて、みちのく出身の私にとって九州地区に勤務するのははじめてです。こちらにきて、まず驚かされたのが、その想定外の温かさ(時には暑いほど)でした。 

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上の図は、私の勤務がスタートした19日から一週間の最高気温の推移です。この間の宮崎の最高気温は平均でなんと15!!。東京との差は5.5度、みちのくとは15度以上の差があります。そんなことは天気予報をみていれば誰でも知ってるよ、といわれそうですが、実際それぞれの地に住んでみると新鮮な驚きがありますよ。多分。

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12日の気温は23℃にまで上昇し、半そで姿で騎乗です。左から大きなストライドが魅力のシフォンケーキの06、ダイナミックな走りのラブイズトゥルーの06、期待の良血馬アドラーの06は額にハート型の星(白斑)があるんです。そして右端は新種牡馬シルバーチャーム期待の産駒インディペンデンスの06

もちろん寒い地方にはスキーにスケート、雪自体の美しさやワカサギの穴釣り、そしてなんといっても春が訪れたことへの感激、なんて色々楽しみもあるわけですが、しばらくはこの温かさに感謝しつつ、また新たな発見があるはずの宮崎の地を楽しみたいと思います。

より良い育成を求めて(日高)

今回新しく日高育成牧場で育成馬日誌を担当することになりました。よろしくお願いいたします。

前任者の最終コメントにもありますように、育成中の56頭の馬達は順調に馴致調教を積まれてきており、私は非常に良い状態で育成担当のバトンを引き継ぎました。この状態に満足することなく「強い馬づくり」を目指して、よい伝統は着実に受け継ぎそのレベルを維持していくとともに、新しい視点からさらに色々な取り組みをしていきたいと考えています。その中で私が考え感じたことなどを織り交ぜて、試行錯誤の心の機微を少しでも皆様にお伝えできたらと思っています。これまで同様これからの日誌も楽しんでいただけたら幸いです。

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気持ちも新たに、高い頂を求めて。山は日高山脈の名峰で、日高育成牧場の背後にそびえる野塚岳(1353.2)です。馬はナナコフレスコの06(父:コマンダーインチーフ)。活躍中のエイシンパンサーの妹です。

JRA育成馬の近況(日高)

今回はJRA育成馬たちの近況を紹介したいと思います。

12群の牡馬は1221日より2本の坂路調教を行っています。坂路2本は若馬にとってかなり強い運動負荷となるため、例年開始時期には頭を悩ませていますが、本年度は馬の動きや手応え、調教後の息遣いや息の入りなどから十分に体力がついていると判断して、初めて年内に2本目の坂路調教を試みました。1本目は集団でハロン22秒程度、2本目は2-3頭併走でハロン18秒程度の速度で、もったまま楽な手応えで駆け上がってきます。

13群の牝馬は屋内800mトラックで1000mの駈歩を行った後に、集団でハロン20秒程度の坂路調教を1本行っています。牝馬は運動強度が上がると特に飼葉食いが悪くなる場合があるので、様子を見ながら慎重に調教を進めています。

4群の馬は屋内800mトラックで、ハロン24秒程度の速度で、距離を伸ばして1600mの駈歩を行っています。今後、馬の状態を見ながら調教進度を上げていきたいと思っています。

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2本目の坂路をハロン18程度で併走する第12群の牡馬。右はマイネマリエの06(牡:父バブルガムフェロー)、左はリッショウスキーの06(牡:父ジャングルポケット)。

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集団で坂路調教を行う第1,3群の牝馬。先頭右端はミロヴァダンスの06(牝:父スペシャルウイーク)、中央はダンシングザードの06(牝:父ネオユニヴァース)、左端はチッキーズディスコの06(牝:父シンボリクリスエス)

本年度は前の馬について我慢することや馬込みの中でも折り合いをつけることを目的として、屋内800mトラックでも集団調教を行っています。直線の坂路と違い、コーナーが結構きついため、騎乗者の技量は要求されますが、有効な隊列ではないかと思っています。

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800m屋内トラックで集団調教する第12群の牡馬。先頭の右はシュバルブランの06(牡:父シルバーチャーム)、左はシラーの06(牡:父マイネルラヴ)

例年、跛行等の運動器疾患で長期の戦線離脱を余儀なくされる馬に悩まされるのですが、幸いなことに現在のところ全頭が順調に調教を実施しています。本年度は体力のある馬はより強く、無理をしない方がよいと判断した馬はゆっくりというように、個体の状態により調教進度の差を大きく設けていることが特徴です。また、毎日ウォーキングマシンを活用し、運動時間を長くしていることや馬場管理もこの結果に結びついているのではないかと考えています。

屋内800mトラックはオイルコーティングした砂にゴムチップを混ぜたオイルサンドという素材で、今話題のポリトラックにちょっと似た特性を持つ馬場です。馬場管理は調教の合間に2回と終了後の計3回ミキシングハローを用いて蹄跡を均し、ミスステップが起きにくいようにしています。また、定期的な散水やレベルハローを掛けてクッション砂厚を10cmの均等な深さに保つことで、常にクッション性がよく、しかもグリップ力に優れた馬場を維持できるように努めています。

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ミキシングハローはクッション砂をほぐす爪ハローと転圧するローラーを組み合わせたハローです。左はハロー掛け後の状態です。

今回で育成馬日誌の担当は最後になります。次回からは後任が引き継ぎますので、今後ともよろしくお願いいたします。

 

併走での調教(宮崎)

明けましておめでとうございます。年が明けて、馬たちも、入厩したときよりも随分たくましくなってきたように感じます。現在は、500m馬場で準備運動(速歩1000m、駈歩1000m)後、1600m馬場で1000m1400mの距離をF22F20程度のスピードで調教しています。あまりスピードが遅すぎると馬が遊ぶので、遊ばないように徐々にベースとなるスピードを上げてしっかりと走ることを覚えさせています。また、12月から500m馬場での準備運動は併走で実施しています。一般に、併走での調教は2頭がお互いに走りたい気持ちを高めて走るスピード調教において実施します。しかし、この準備運動での併走運動は、競って速く走らせるというよりも、2列縦隊の状態で調教することで、馬を前後左右に他の馬がいることに慣らすことを目的としています。騎乗者も前と横の馬を意識しながら騎乗する必要があるので、より、馬をコントロールすることができます。また、500m馬場で同じ併走パートナーに慣らしていると、1600m馬場でスピード調教を実施する際にも安心して馬同士を近づけて走らせることが出来る効果もあります。競馬は集団で走ることが要求されるので、そのエッセンスを分解したトレーニングが縦列や併走による調教であると思います。

JRA人事異動により、私がこの育成馬日誌を書くのは今回で最後になりました。次回からは私の後任が引き継ぎますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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500m馬場での牝馬の準備運動風景です。リードホースを先頭につけて併走で実施しています。(126日)

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脚浴場の通過に慣らしています。ひざから下が水につかるまで徐々に水を増やし、調教後に肢についた砂を洗い落とし、肢を冷やすことができます。後ろはミスバンダムの06(牡・父サニングデール)。(1220日)

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この日はハートレートモニターを装着してⅤ200を測定しました。内(向かって右)がオグラテスコの06(牝・父キッケンクリス)、外(向かって左)がローズレディの06(牝・父クロフネ)。(1227日)

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(向かって右)アドラーの06(牡・父アグネスタキオン)、外(向かって左)はインディペンデンスの06(牡・父シルバーチャーム)。(1227日)