最近の調教内容紹介とスピード・心拍数の測定(宮崎)
1/17の中山1R(ダート1,200m)で、単勝1.1倍の1番人気に支持された当場育成のロジロマンス号(3歳・牡・父コロナドズクエスト・粕谷厩舎)が2着馬に2秒6(約16馬身)の大差をつける逃げ切りでの圧勝をみせてくれました。1分11秒1とタイムも優秀で、今後のさらなる活躍を期待しています。
右側がロジロマンス号。1年前の1月、旧宮崎競馬場スタンドを背に駈歩調教後のクーリングダウン中。1歳秋の大人しい印象が一変し、調教での負けん気の強さが目立ってきた頃です。
さて、今回は1/22の調教内容をご紹介するとともに同日のスピードおよび心拍数の測定について報告します。心拍数とスピードの測定については、JRA競走馬総合研究所の協力を得て、調教する各馬にハートレートモニターと呼ばれる心拍数の測定装置とカーナビでおなじみのGPSを装着して実施しました。なおその測定から得られる数値であるV200等については、2007年3月の育成馬日誌(V200の測定)で日高から紹介していますので、詳細な解説はそちらをご覧ください。
今回は調教内容の紹介とともに、毎度おなじみ「ビッグキャンドルの07」の心拍数データ・走行スピードについて報告します。
1月22日、キャンドル号調教の軌跡
上の図がキャンドル号調教の軌跡をプロットしたもので、宮崎育成牧場の調教コース図が浮かび上がっています。以下、順を追って説明します。まずは厩舎地区での準備運動【上の図の①】から、500mトラックコース【②】へ移動。ここで速歩を1,000m、駈歩を1,000m実施(2~3列の併走)して、【③】から1,600mトラックコースに出ます。そして1本目の駈歩(1列)を図の上方向へ(左回り)1,000m、【④】の左側で折り返して、上方向(右回り)へ2本目の駈歩(併走)を1,000m実施しました。その後のクーリングダウンは【④】の右側で折り返して、【③】からコース外に出て【⑤】の杉林、【⑥】の採草地・芝馬場をとおり、【①】の厩舎地区に戻ります。
調教タイムは1本目の後半600mを66秒(F22)、2本目の後半600mを57秒(F19)の目標としました。調教の総距離は常歩が4,000m、速歩が1,000m、駈歩が3,100mでした。
1月22日、キャンドル号調教時の心拍数(桃色)とスピード(青色)
この調教時にキャンドル号の心拍数(桃色)とスピード(青色)をプロットしたものが、上の図です。横軸は馬装および機械装着からの時間経過です。競走馬の安静時心拍数は1分間に30~40回程度ですが、機械を装着し、常歩運動に入ったキャンドルの心拍数は70回程度にまで上昇しているのが分かります。【A】の時点から500mトラックでの速歩調教で心拍は100回程度、【B】の時点からは駈歩運動で心拍が150回近く、スピードは6.5m/s(ハロンタイムで30秒程度)となります。【C】からが1,600mトラックでの1本目の駈歩、心拍が200回近く、スピードは約9.5m/s(ハロンタイムで21秒程度)、【D】からが2本目の駈歩で、心拍が200回以上、スピードは約11m/s(ハロンタイムで18秒程度)でした。
競走馬の最大心拍数は、220~230回程度であり、今回のような心拍数200回前後の調教を、インターバルをはさみ2本こなすことは十分な運動強度であると捉えています。2月からはこの強度の運動を週2回程度実施(3Fタイムで57~54秒)していて、それ以外の日は1,600mトラックでの調教は1本(駈歩1,000~1,600m、最後の3Fタイムが66~60秒)としています。
ただし馬によっては、今回の調教内容では2回とも心拍が200回に達せず比較的余裕のある運動であったりもします。またこの数値は騎乗者や隊列での位置(先頭か馬群の後ろか)および馬場状態や天候などによる馬の情動の変化にもある程度影響されます。そのほか駈歩を開始して心拍数が200に上昇するまでの時間、逆に駈歩後心拍数が100をきるまでの時間などを分析し、心肺機能を検討しています。
このようなデータは馬ごとの調教強度を見極め、個体に合ったトレーニング内容を課すための参考として大変貴重なものとなっています。
500mトラックコースで速歩調教中の牝馬群です。向かって右からタイキフレグランスの07(父サクラバクシンオー)、スーパードレスの07(父キングカメハメハ)、ウォーターセレブの07(父グラスワンダー)、プレミアムショールの07(父アグネスフライト)。