南国宮崎でもライトコントロールをはじめています(宮崎)
2010年、宮崎育成牧場は新たなスタートをきります。来る2月27日からJRAの勝馬投票券発売・払戻業務が開始されるのです。オープンに向けた工事が着々と進行中で、現在行っている主な工事は既存のインフォメーションコーナーの改修と駐車場の造成です。調教コースに隣接する地区の風景が日々変わっていく中、育成馬たちの調教は順調に進められています。 1,600mコースの第4コーナー付近。コースに隣接した駐車場を造成するための整地が進んでいます。左端にみえる白い建物(勝馬投票券発売施設)の改修とあわせ、日々変化する風景にも、馬たちは慣れてきました。 なお、この発売・払戻所は大変小規模な施設ですので、事前に会員登録をいただいた方限定の「利用者登録制」で運用されます。登録受付は、昨年12月4日(金)をもって定員に達したため、締め切りました(次回募集については未定です)。あしからずご了承下さい。 クーリングダウンを行う育成馬たち。駐車場の造成・整地で得られた残土を利用し、既存の「ミニミニ坂路」を拡幅しています。 さて、今回は育成馬へのライトコントロールについてです。ライトコントロールとは繁殖牝馬には一般的に用いられている方法で、季節繁殖性の動物である馬に対して、蛍光灯などの照明で人工的に日長時間(昼間の時間)を長くし、性腺機能の発達を促すことで初回排卵を早め、種付や出産時期を早めることができます。 日高育成牧場では、この方法を育成馬に応用する研究を4年ほど前から行っており、牝馬の性ホルモンの分泌時期が早くなること、牡馬の筋肉量が増加する可能性があること、冬毛の脱毛が促進されることなどがわかりました(昼14.5時間、夜9.5時間の環境設定)。これまでの詳しい成績はこちらをご覧下さい。一方、宮崎は冬季の日長時間(昼間の時間)が北海道に比べ長く温暖であり、日照時間(日中の晴れの時間)も長いという気候条件のよさから、馬を仕上げやすい環境にあります。よってこれまで、ライトコントロールは不要(自然にライトコントロール作用が得られ、性腺機能の成熟も早いもの)と考えてきました。 育成期間中の日長時間(昼間の時間)の比較。寒冷期である11~1月においては宮崎と日高では1時間近い昼時間の差ができます。ただし、ライトコントロール法で人工的に昼14.5時間、夜9.5時間という環境を作ることで、冬の宮崎よりも4時間程度長い昼時間設定となります。 事実、宮崎の育成馬の成長は日高に比べて良好といえます。馬の成長を比較するために、1ヶ月間の体高の伸びを現3歳世代のJRA育成馬で比較しました。下のグラフのように、特に11~1月における宮崎馬の体高の伸びは大きなものです。 一方、日高ではライトコントロールを実施した群のほうが実施しなかった群よりも体高の伸びがやや大きい傾向がみられました。このことから暖かさや日照時間だけではなく、日長時間のコントロールで馬の成長が促進されている可能性が示唆されました。 宮崎の育成馬(●印)と日高でライトコントロールを実施した育成馬(△印)および実施しなかった育成馬(□印)の体高の伸びを比較しました。 それでは、温暖で日照時間の長い宮崎において、ライトコントロール法で日長時間を延長させることに意味はないといえるのでしょうか? 試しに現3歳世代のJRA育成馬で、プロラクチンというホルモンの測定を実施して、宮崎の育成馬と日高の育成馬(ライトコントロール実施群と非実施群に分けて)を比較してみました(協力:東京農工大学)。 脳下垂体から分泌されるホルモンであるプロラクチンには成長ホルモン様の作用があります。1月以降の日高ライトコントロール群のプロラクチン血中濃度は、宮崎群よりも有意に高くなりました。すなわち、プロラクチンの分泌については、気温・日照よりも日長時間による影響が大きいことが示唆されたのです。 宮崎のように日照時間が長く温暖な環境での育成は、より早い時期の骨格成長が見込めるため、早くから強いトレーニングを課すことが可能であると考えられます。しかしさらに良い育成を目指す中で、日長時間の調整(ライトコントロール)を併用し、早期に性成熟を促すことができれば、トレーニング効果がさらに高まる可能性があると考えられます。自然の利点を生かしつつ、ライトコントロールも併用することでどのような効果が得られるのでしょうか。確認・検討の後、このコーナーで報告したいと思います。 朝5時、タイマーをセットした馬房内の照明(蛍光灯)が点灯します。12月下旬より4月までの期間、人工的に昼14.5時間、夜9.5時間の環境を作り、ライトコントロールを実施します。本シーズンは半数の育成馬(牡6頭、牝6頭)にライトコントロールを行い、効果を検証します。