育成馬のゲート馴致(宮崎)
3月28日に開催を予定していた育成馬展示会(宮崎)は、当場の防疫上の理由により中止させていただくこととなりました。来場を予定されていた皆様、楽しみにしていただいていた皆様にご迷惑をおかけしましたこと、深く謝罪申し上げます。
さて、展示会を中止した同日、ブリーズアップセールに事前登録された購買者の皆様にご覧頂く「調教DVD」を作成するための調教撮影を行いました。セール用ゼッケンをつけて颯爽と走る育成馬達。つい最近までやんちゃな子供のようだった彼らは、この1ヶ月でさらに大きく成長し、競走馬としてのデビューを待ちわびているように見えました。1人でも多くの方に、DVDに収まったその勇姿をご覧いただけたら幸いです。
BUセールゼッケンをつけて併走する19番バーミスキャットの09(父:シンボリクリスエス、牝)と20番プライムオブユースの09(父:アドマイヤムーン、牝)
さて、今回はゲート馴致について書きたいと思います。競走馬として必ずクリアしなくてはいけない関門の1つにゲート(発馬機)があります。過去にはクラシック候補といわれながらゲートが悪く、競走馬としての才能を全く発揮できなかった馬がいたように、ゲートは競走成績に大きく影響を与える重要なポイントの1つです。
育成期のゲート馴致は、騎乗馴致をはじめてすぐに開始します。引き運動でゲートをじっくり見せることからはじめ、ドライビングを行う頃には「ゲートは特別なものではない」と馬自身が考え、理解したうえで通過できるようにします。そうすると、騎乗者は安心して通過することができるようになるのです。騎乗馴致終了後に行った場合、騎乗者のゲートに対する不安な心理状態が馬に伝わり悪影響を及ぼすため適切ではありません。また、練習用ゲートは運動中に馬が身近に見える場所に設置しています。これは馬にゲートを特別なものだと感じさせず、常に生活の一部として理解させ、認識させるためです。
現在使用している練習用ゲートには、写真のように4つの枠があります。1枠と2枠は競走時に使用する幅と同じで、枠の前後に扉がついています。3枠はこれよりも幅が広く、4枠はさらに幅広に作られています。幅の広い4枠から通過練習を開始し、慣れたら徐々に狭いゲートに移行して最終的には競走時と同じ幅のゲートを通過できるようになります。詳細な馴致方法についてはJRA育成牧場管理指針に掲載されていますので参照して下さい。
前後の扉を閉めたゲートで駐立するナナコフレスコの09(父:タイキシャトル、牡)
JRAの両育成牧場では、ブリーズアップセール上場までに完了するゲート馴致の目標を以下のとおり決めています。
・ 前扉を閉めた競走用ゲートに騎乗者を乗せて入る。
・ 枠内で静止したら後ろ扉を閉める。
・ 興奮することなく、10秒間程度、駐立できることを確認する。
・ 前扉を開け、騎乗者の扶助により常歩で出る。
現在宮崎に在厩している育成馬達は、目標を無事達成しました。ところで、競走時にはゲートを出る際に駆歩で発進します。これをジャンプアウトと呼びますが、育成牧場ではこの練習を行っていません。この最終的な駆歩発進は、経験豊富なトレセンの厩舎スタッフに委ねることにしているためです。
調教後にゲートを通過するミラクルケープの09(父:ゴールドアリュール、牡)
競走馬としてデビューするためには、ゲート試験に合格することは絶対条件になります。育成馬のゲート試験合格状況を調べた資料がありますので簡単にご紹介します。
この調査はJRA所属の全馬と、日高・宮崎で育成したJRA育成馬を対象に実施しました。調査期間は2005年から2009年までの5年間で、2歳馬の入厩開始日から2歳新馬戦が開始される週までにゲート試験を受験した全馬について、受験頭数、合格頭数、合格馬のうち1回で合格した頭数を調査しました。
この調査によると、全受験馬の合格率は概ね7割程度であり、JRA育成馬の合格率はそれに比べて高いことがわかりました。このことから現在実施しているゲート馴致の方針が間違えていないことが確認できました。
育成期の調教でもっとも大切なこと、それは馬の心に傷を残さず持っている全ての能力を引き出すことだと思います。特に牝馬の場合、担当者の不注意や些細な手抜きが原因で競走能力を如何なく発揮できなくなってしまうことが多々あります。今年育成した24頭の育成馬が競馬場で全能力を発揮できるよう、共に過ごせる残りわずかの期間を細心の注意を払って日々の管理に努めていきたいと思います。
(事務局から)
2011JRAブリーズアップセールは、4月25日JRA中山競馬場で実施いたします。上場馬の情報については、JRA育成馬サイトに掲載しております。写真カタログや欠場馬情報などさまざまな情報を掲載しておりますのでぜひご活用ください。