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ブリーズアップセールで開示される個体情報②~X線画像~(日高)

今回は、ブリーズアップセールで開示しているX線画像情報とその判断方法を紹介いたします。

①前肢球節種子骨のX線所見と競走パフォーマンスとの関連

 前肢球節種子骨のX線所見については、線状陰影(写真①)などを基に評価しています。この評価は、程度が軽いものから順にグレード0~3の4段階に分類されます。種子骨のグレード別に2および3歳時の出走回数ならびに総獲得賞金、初出走までに要した日数、出走率について調査を実施した結果、外見上に腫脹などの臨床症状が認められない場合、競走成績に影響しないことが明らかになっています。また、外見上、腫脹等の異常がない馬でも約10%の馬に何らかの陳旧性骨病変(剥離骨折やOCD)を有していることも明らかになりました。しかし、陳旧性骨病変は、関節の腫脹などの臨床症状がない場合、競走能力への影響がないことも明らかになっています。一方、前肢の種子骨グレードが高い馬は、グレードの低い馬に比べて繋靭帯炎を発症するリスクが高いことが分かっていることから、前肢の種子骨グレードが高い場合には、飼養管理や調教に気をつける必要があるといえます。

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写真①線状陰影などを基にした球節種子骨の分類。程度が軽いものから順にグレード0~3の4段階に分類されます。

②飛節OCDと競走パフォーマンスとの関連

 OCDOsteochondrosis Dissecans:離断性骨軟骨症)は、発育の過程で関節軟骨に壊死が起こり、骨軟骨片が剥離した状態です(写真②)。飛節部のOCDは軟腫や跛行の原因となる場合がありますが、調教が順調に進められている場合には、競走能力に影響がないといわれています。また、OCDは関節鏡による手術で簡単に除去することが可能で、予後も極めて良好です。飛節にOCDを有しても、腫脹や跛行などの臨床症状がない場合の手術の必要性はわかっていませんが、その多くは手術の実施の有無に関わらず、競走能力に影響がないものと考えられています。

 

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写真②飛節部のOCDの多くは競走能力に影響がないと考えられています。

③最後に

近年、市場におけるレポジトリーの普及とともに、高価な競走馬購買後の疾病発症リスクを回避し、その後のトレーニングをスムーズに行うために、レポジトリー活用の必要性はますます高まっています。また、レポジトリーが普及するにつれ、上気道の内視鏡像や四肢のX線所見がパーフェクトな馬は多くないことが明らかとなってきました。このことは、レポジトリーで確認できる小さな異常は馬自らが克服することもあり、また、獣医師の治療によって治癒することも多く、競走能力に影響がない場合が多いことを意味しています。一方、レポジトリーで異常がないことを確認していても、購買後に異常を発症することがないことを保証しているわけではありません。つまり、レポジトリーが馬の健康を保証するものではないということも事実です。

ブリーズアップセール当日は、会場内の個体情報開示室に、内視鏡やX線所見について説明を行うための獣医職員を配置しております(写真③)。レポジトリーに関することのみならず、どのような疑問でも質問していただき、皆様方のご購買とその後のスムーズな管理・調教の参考にしていただければ幸いです。

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写真③ブリーズアップセールの情報開示室(レポジトリールーム)での応対の様子。

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