育成馬ブログ 生産編⑧「その2」
正常分娩の進行
では、正常分娩の進行について具体的に説明します。
①陣痛症状の発現
陣痛は疼痛程度や持続時間に個体差があり、
分娩の数日前から兆候が断続的に認められることや、
数日間の間隔が空くことも珍しくありません。
しかし、著しい疼痛や不穏な状態が、
長時間にわたり持続するにも関わらず破水が認められない場合には、
何らかの異常があると考えるべきです。
②破水
正常分娩と難産を見極めるうえでの重要なポイントは破水です。
破水とは、
胎子を包んでいる二重の膜の外側である
尿膜絨毛膜の破裂にともなう尿膜水の排出です。
前述したように、明瞭な陣痛症状が
長時間継続しているにも関わらず破水が認められない場合、
破水から5分を経過しても足胞が出現しない場合にも
何らかの異常があると考えられます。
なお、破水後には膣内の胎子の状態を確認します。
正常であれば、触知によって蹄底を下向きに伸展した両前肢と鼻端を
確認することができます(下図)。
破水直後の胎子の様子
正常姿勢の場合、蹄底を下向きに伸展した両前肢と鼻端を触知することができる
なお、陣痛発現から破水まで、
子宮内の胎子は図Ⅰから図Ⅳのように
母馬の背中に対して仰向けの状態から回転しながら膣外口に向かいます。
多くの場合、図Ⅳの姿勢で破水を迎えますが、
まれに図Ⅱや図Ⅲの状態で破水することがあります。
これらの場合、
蹄底が上向きもしくは横向きの状態で触知されることがありますが、
心配いりません。
母馬の起立と横臥の繰りかえしや、
馬房内での常歩運動により自然に正常な姿勢に至ります。
③足胞の出現
破水から5分以内に足胞が出現します。
正常な羊膜は白っぽく、滑らかで光沢があり、羊膜中の羊水は透明です(写真)。
以下の場合は異常ですので注意してください。
・破水から5分以内に足胞が認められない。
・羊膜内に胎子の蹄が認められない。
・羊膜が肥厚している。
・羊水が緑~茶色に混濁している。
・羊膜ではなく尿膜絨毛膜の赤い胎盤(レッドバック)が認められる。
足胞の出現 このときに羊膜および羊水の色調などを確認する。
④娩出
娩出の際、頻繁に寝返りを打ったり、
横臥と起立を繰り返したりすることも少なくありませんが、
著しい場合は何らかの異常が発生している可能性があります。