育成馬ブログ 宮崎③
○育成馬の肺拡散能試験(宮崎)
南国宮崎でも11月下旬になってから、
最低気温が10℃を下回る日も見られるようになり、
育成馬の管理も夜間放牧から昼放牧に変更しています。
冬を迎えたとはいえ、日中は暖かいと感じる日も多く、
育成馬達は秋に播種したイタリアンライグラスが繁茂した
放牧地で1~2時間の放牧を満喫しています。
写真① 放牧地には10月に播種したイタリアンライグラスが繁茂しています。
●育成馬の近況
宮崎育成牧場所属のJRA育成馬の近況をお伝えいたします。
9月上旬から騎乗馴致を開始している1群(牡馬10頭)は、
500mトラック馬場での速歩およびハッキングを実施し、
その後1600mトラック馬場において
1600mのキャンターを1列縦隊で実施し、
手前を変えて2000mのキャンターを2列縦隊で実施しています。
写真② 1600m馬場で2列縦隊でのキャンターを実施する1群牡の育成馬。
一方、10月上旬から騎乗馴致を開始している2群(牝馬12頭)は、
牡同様に500mトラック馬場での速歩およびハッキングを実施し、
その後1600mトラック馬場において
1600mのキャンターを一列縦隊で実施し、
手前を変えて1800mのキャンターを1列縦隊で実施しています。
スピードは1群および2群ともにハロン22~24秒程度と
ゆっくりとしたキャンターですが、
年内は落ち着いて真っ直ぐ走行させることを主眼に置いて
調教を進めていきたいと考えています。
動画① 12月上旬の1600mダートコースでの調教動画
●育成馬の肺拡散能試験
さて、JRA育成業務の目的のひとつは
育成研究の成果を普及することであり、
様々な研究に取り組んでいます。
宮崎育成牧場では、
昨年から競走馬総合研究所と共同で
育成馬の肺拡散能測定に関する研究を行っています。
肺拡散能とは、肺におけるガス交換の指標であり、
有酸素運動能力を規定する因子のひとつと考えられています。
測定は枠場内において、
馬に風船付きのマスクを装着(写真③)し、
40~60秒間、風船内の測定用のガス(0.3%一酸化炭素)を
呼吸させて測定値を得ます。
育成馬の肺拡散能を測定することは、
成長やトレーニングにより
有酸素運動能力に変化があるかどうかを知る上で重要であり、
さらには競走馬におけるプアパフォーマンスの原因や
有酸素運動能力との関連性を明らかにするための
新たな知見につながる可能性もあります。
今回の研究では枠場に馴らす、
さらにはオレンジ色の風船付きのマスクの装着、
すなわち新規刺激に馴らすという
育成馬に対する馴致というも役割もあり、
一石二鳥となっています。
写真③ 枠場内にて肺拡散能を測定する育成馬
(アップルティーの15 牝 父:エイシンフラッシュ)