育成馬ブログ 生産編③「その2」
おとなしい馬?or うるさい馬? その2
ブルーシート馴致を実施して、
当場の子馬5頭を刺激に対する反応で
大きく2つのグループに分けることができました。
今回は「刺激に対する反応」という
性格の1面のみにフォーカスしていますが、
結局のところ「おとなしい」と表現されている馬は、
「様々な刺激に対する反応が少ない、もしくは遅い」
「多くの刺激を過去に受けており、鈍感になっている」
「人に従順」
「活力(元気)がない」
などのうちのどれか、もしくはいくつかが重複しているのかもしれません。
一方、「うるさい」と表現される馬は、
「様々な刺激に対する反応が敏感で早い」
「様々な刺激に対する経験に乏しい」
「こわがり」
「テンションがあがりやすい」
「人の指示に従わず自己主張してくる」
「人の指示を理解できない」
「活力(元気)がある」
などがあげられるかもしれません。
このように考えると、
馬の性格を「おとなしい」と「うるさい」の
単純な二元論では分けられないことが理解できますし、
いくつかの性格に関しては、
生まれ持った性質である一方で、
残りのそれはトレーニングや人の接し方で
反対側の性格に変えることも可能です。
競走馬や将来競走馬になる育成馬にとって
必要な性格を上から選択していくと、
「人に従順」
「活力(元気)がある」
などは異論がないかもしれません。
それでは「刺激に対する反応」については、いかがでしょうか?
観光用の乗馬であれば、
乗馬未経験者が騎乗する機会が多いため、
むしろ「反応が遅い、鈍感」の馬が適しているのかもしれません。
しかし、競走馬は
「素早くゲートから出る」
「ゴール前一瞬のスピードで前の馬をとらえる」
など、どちらかというと刺激に対しては敏感で反応が素早く、
状況によってはテンションが上がり易い性格も1つの武器になりえます。
このため、このようなサラブレッド特有の
「反応の過敏さ」と上手くつきあっていくことが、
競走馬や育成馬を取り扱う人間には求められるのです。
例えば、騎乗馴致やゲートなど
競走馬になるために避けて通れないいくつかのステップについては、
個々の性格を考慮して、
馬によっては他の馬よりも、
ゆっくり時間をかけて経験させることが重要です。
また、馬の過敏な反応に人間が呼応しないことも重要です。
怖がって反応している馬に対して、
扱う人間が同じように過敏に反応してしまっては、
さらに馬の恐怖は増幅されます。
このため、人間は泰然自若として、
落ち着いた態度で接することで、
馬を落ち着かせることが必要となります。
むしろ、馬は恐怖を感じる状況で、
落ち着いた態度をとる人間をリーダーとして認めます。
馬の過敏な反応に人間が呼応しない
そういう意味では、恐怖を感じている馬に対して、
人間が短気を起こして怒ることは
全くもって逆の事をしているといえます。
このようなことから、
サラブレッド競走馬を取り扱う人には、
個々の馬の性格や馬が何を感じているのかを把握し、
それに応じた対応をとることができる
一定の技量と豊富な経験、
そして冷静で落ち着いた態度が必要なのかもしれません。
「うるさい馬」とは本当はどのような性格か、
なぜ「うるさく」感じられるのか、
今一度、馬と向き合って考える時間を設けてみてはいかがでしょうか。
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