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育成馬ブログ 日高②

●跛行(支跛)診断のポイント

 

現在、日高育成牧場の育成厩舎には

セレクト・セレクション・サマーセールの各市場で購買した1歳馬52頭と

JRAホームブレッド3頭の計55頭が入厩しています。

 

牡馬27頭は9月初旬から馴致を順次進めていますが、

牝馬28頭は10月からの馴致開始に備え昼夜放牧を実施して

馬体づくりにつとめています。

 

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左写真)ドライビング調教(コーラルチャイムズの16 父アルデバラン)

右写真)放牧中の1歳牝馬

(左エメラルドコーストの16 父ディープブリランテ、

右レディパッションの16 父ルーラーシップ)

 

さて、今回の当ブログでは育成馬を調教する際には

避けて通ることができない「跛行」について、

その基本的な診断法について簡単に説明したいと思います。

 

○馬の跛行診断

 

跛行とは、馬が歩様に異常をきたしている状態をいいます。

原因はさまざまです。

 

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左図1:関節炎や骨折、右図2:局所感染

 

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左図3:骨膜炎や打撲、右図4:筋肉痛や横紋筋融解症

 

跛行している馬が育成馬や競走馬であれば競走や調教に支障をきたしますし、

繁殖牝馬であればストレスや運動不足で妊娠へ悪影響がでるほか、

授乳馬の場合は一緒に行動する子馬の運動量も低下してします。

 

○跛行の分類

 

一言で跛行と言っても症状によって分類されています。

 

・肢に体重を乗せた際に痛む支柱肢跛行(支跛=シハ)

・肢を挙げるとか前に振り出すと痛む懸垂肢跛行(懸跛=ケンパ)

・上記の両方の症状を示している混合跛行(混跛=コンパ)

 

今回は、骨折や蹄病等の疾患の際に多く観察される支跛について解説します。

 

馬は一定のリズムを刻みながら歩行します。

跛行診断は、硬い平地で常歩と速歩を前後左右から見て、

このリズムの乱れを見極める必要があります。

 

○跛行している肢を簡単に発見するためのチェックポイント

 

・前肢の跛行(支跛) ⇒ 頭部の上下動に注目!

痛い方の肢に体重がかかると痛みが増すため

頭を上げてかばう動作を見せます。

 

5_2図5:前肢の跛行

 

動画1:前肢の跛行(繋靭帯炎)

 

・後肢の跛行(支跛) ⇒ 腰の上下動と球節の沈み込みに注目

痛い方の腰の上下動が大きくなり痛い方の肢で

負重している時間が短くなります。

また、正常な方に体重をかける時間が長くなるので、

そちらの球節が深く沈み込みます。

 

6図6:後肢の跛行


 動画2:後肢の跛行(挫跖)

 

今回は、跛行診断のほんの一部のみ紹介させていただきました。

早期に愛馬の跛行を発見し、

適切な治療につながる一助となることを願っています。

 

※動画を多用して跛行診断についてより細かく解説した番組が、

グリーンチャンネルの「馬学講座ホースアカデミー」のコーナーで

2018年1月に放送予定となっていますので、そちらもご覧ください。

活躍馬情報(事務局)

9月16日土曜日の中山5R(2歳新馬)で、

日高育成牧場で育成されたスピアーノ号が、

先手を奪ってそのまま押し切り、初戦でうれしい初勝利となりました。

 

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9月16日 4回中山競馬3日目 第5R  2歳新馬 芝 1,800m

スピアーノ号(マイネレーヌの15) 牝

【 厩舎:池上 昌和 厩舎(美浦) 父:ヴィクトワールピサ 】

 

今後の活躍を期待しております。

活躍馬情報(事務局)

9月10日日曜日の中山2R(2歳未勝利)で、

宮崎育成牧場で育成されたランリーナ号が、

後方から鋭い末脚で差し切り、見事に優勝しました。

本世代の宮崎育成牧場出身の育成馬の初勝利となります。

 

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9月10日 4回中山競馬2日目 第2R  2歳未勝利 芝 2,000m

ランリーナ号(アップルティーの15) 牝

【 厩舎:竹内 正洋 厩舎(美浦) 父:エイシンフラッシュ 】

 

今後の活躍を期待しております。

育成馬ブログ 生産編②(その2)

●ケンタッキーの馬産

 

○馬産全体の違い

 

馬産全体の違いについて説明します(図3)。

日本の生産牧場では牧場が繁殖牝馬を所有する

自己所有馬の割合が多いのに対し、

米国では馬主が生産牧場に預託料を支払って繁殖牝馬を預ける

預託馬の割合が多いです。

私が研修したダービーダンファームでは、約8割の馬が預託馬で、

自己所有馬は2割しかいませんでした。

 

また、日本の生産牧場には採草地を有し、

そこで作った自家製の乾草を馬の食用に使用していますが、

米国では採草地がなく牧場の土地を目一杯使って広い放牧地として利用し、

そこで作られた乾草は食用としては使用せず敷料として使用し、

麦稈代を節約していました。

 

さらに、日本では種牡馬はスタリオンステーションとして独立した

種馬場で繋養されているのに対し、

米国では大手の生産牧場の中に種牡馬厩舎および種付場が作られており、

種牡馬はそこで繋養されていました。

 

また、日本の牧場の従業員はほとんどが日本人ですが、

米国ではヒスパニックと呼ばれる中南米からの移民がほとんどでした。

そのため、ほとんどのマネージャーが英語だけでなく

スペイン語を話せる必要がありました。

 

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図3 馬産全体の違い

 

 

○放牧地内で乾草を作り、敷料として使う

 

米国の牧場には採草地がなく、

牧場の土地を目一杯使って広い放牧地として利用していました。

自家製の一番乾草を採った後、馬を放牧し、

その後は掃除刈りで維持するという草地管理を行っていました。

放牧地内で作製された乾草は、

食用にするのではなく敷料とすることで購入する麦稈の量を減らし、

節約していました。

なお、放牧地にはペレニアルライグラス、ケンタッキーブルーグラス、

オーチャードグラスがミックスされた種を

春と秋の2回播いていました(図4)。

 

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図4 放牧地内で乾草を作り、敷料として使う

 

次回は繁殖牝馬の飼養管理について述べたいと思います。