育成馬ブログ 日高③
●育成馬のデンタルケアについて ~狼歯~
北海道は徐々に気温が低くなってきており、
秋の訪れとともに冬の気配も感じられます。
9月上旬から馴致を始めた育成馬の牡馬は騎乗馴致も終わり、
集団でのキャンター調教を始めています。
一方で、牝馬は10月上旬から騎乗馴致を始め、
現在はダブルレーンによるドライビングを中心に行っています。
騎乗調教(牡)の風景
さて、今回は騎乗馴致の準備として大事な
デンタルケア「狼歯の抜去」について、ご紹介します。
○「狼歯」とは?
第1前臼歯の別名です。
馬の進化の過程で退化した歯で、
ハミが収まる部分に生えています(図・写真1)。
ここにハミが当たると痛みを感じるため、
口向きが悪くなる原因となります。
このことからJRA育成馬では馴致が始まる前に全頭抜歯しています。
狼歯(図) A:狼歯 B:犬歯
馬の左狼歯(写真1)
海外の教科書では牡馬の14.9%、
牝馬の24.4%に狼歯が萌出すると書かれています。
本年のJRA育成馬においても、
確かに牡馬(27頭中19頭萌出)より
牝馬(30頭中27頭萌出)に多く認められました。
一方、教科書とJRA育成馬との萌出割合は大きく異なっていますが、
調査年齢や品種に違いがあるのかもしれません。
狼歯には太い歯や細く小さい歯、
埋没している歯など様々な形態のものが認められます。
写真2は同じ馬から抜歯した左右の狼歯です。
大きさ、形も左右で異なっているのが分かります。
ほとんどの馬が上顎に生えていますが、
まれに下顎にも生えていることもあります。
抜去した狼歯(写真2)
狼歯には歯根がなく、歯肉との結合がゆるいため、
比較的容易に抜去出来ます。
抜歯後の縫合などは必要なく、歯肉は1週間で治癒します。
抜歯する際には、写真3のような先端が円形や半円形の道具を使います。
抜歯の最中で狼歯が折れて根元が一部残ることもありますが、
その後に問題になることはありません。
(もちろん全て取りきることがベストです。)
抜歯の道具(写真3)
狼歯を抜去後は、臼歯の尖っている部分を鑢(ヤスリ)で整えていきます。
これで騎乗馴致の準備「狼歯」+整歯が終了です。
これで馬がハミをより快適に受け入れられる環境になり、
スムーズに騎乗馴致が進みます。