« 強い馬づくりのための生産育成技術講座2017のご案内 | メイン | 育成馬ブログ 生産編④(その2) »

育成馬ブログ 生産編④(その1)

前回から引き続き「ケンタッキーの馬産」について

紹介していきたいと思います。

今回は、分娩と交配(種付)についてお話します。

 

●分娩と交配(種付)

 

○分娩時の流れ

 

ダービーダンファームでの分娩時の流れを図1にまとめました。

まず、破水したら5m×5m程度の分娩用の広い馬房に繁殖牝馬を移します。

次に、マネージャーが産道内に手を入れて子宮内の胎子の姿勢を確認します。

そして、母馬のいきみに合わせて、子馬を牽引します。

牽引は3人で行われ、それぞれ胎子の頭、左前肢、右前肢を担当します。

子馬が娩出され臍帯が切れた後、

クリップで止血しクロルヘキシジンなどで消毒します。

母馬に鎮痛剤であるバナミンのペースト製剤を投与し、

後産をヒモで縛ります。

子馬全頭に浣腸をします。

母馬の乳汁をしぼり、Brix値をチェックします。

この時、Brix値が20より低ければ

冷凍保存してあるストック初乳を子馬に与えます。

 

Photo

図1 分娩時の流れ

 

○積極的な分娩介助と米国での分娩の考え方

 

米国ではどこの牧場でも分娩時に積極的な介助がなされていました。

この背景には、ヒトの女性に無痛分娩が普及しており、産休が短く、

すぐに仕事復帰するという習慣が影響していると考えられました。

すなわち、馬もなるべくお産を軽くして、

早く次の妊娠に備えるという考え方がなされていました。

 

これは、現在JRAが推奨している

なるべく分娩介助しない“自然分娩”とは異なる考え方でした。

デメリットとして、子宮など産道の損傷、子馬の肋骨骨折、育児拒否などが

挙げられ、特に子馬の肋骨骨折は多い印象を受けました。

 

○交配(種付)適期の判断

 

交配適期の判断のために、獣医師が牧場に往診に来て、

馬房で直腸検査を始めとする検査が実施されていました。

観察する項目は日本と同じく、

エコー検査で卵胞の大きさと成長度合および子宮の浮腫を確認し、

膣検査で子宮外口の軟化を確認していました(図2)。

そして、交配の24時間前に排卵誘発剤のデスロレリンを投与し、

種付に向かっていました。

 

Photo_2

図2 交配(種付)適期は獣医師が往診で卵巣と子宮を検査し判断する

 

(つづく)