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育成馬ブログ(宮崎②)

〇ヨカヨカ号の引退と後輩たちの近況


 JRA育成馬として活躍したヨカヨカ号(牝、3歳、栗東・谷厩舎)が、調教中の怪我のため引退することが発表されました。3度目のG1競走(スプリンターズステークス)挑戦を目前に控え、好調が伝えられていた矢先の出来事で、非常に驚きましたが、命に関わる怪我ではなかったことは本当に幸いでした。熊本県の本田土寿氏の生産馬である「ハニーダンサー2018」、後のヨカヨカ号は、2019年6月の九州1歳市場において340万円でJRAが購買し、宮崎育成牧場にて育成調教を行った後、2020年4月のJRAブリーズアップセールにて1122万円にて売却されました。同年6月のデビューからの通算成績10戦4勝2着2回、掲示板を外したのは桜花賞(17着)だけという堅実さで、3歳夏にして獲得総賞金1億2千7百万円余りという素晴らしい成績を残しただけでなく、九州産馬として16年ぶりの、さらに熊本県産馬としては史上初のJRA重賞競走勝利という金字塔を打ち立て、日本の競馬史にその名を刻んだといっても過言ではありません(よね?)。また宮崎育成牧場出身のJRA育成馬による重賞勝利は、2001年のタムロチェリー号による阪神ジュベナイルフィリーズ勝ち以来、実に20年ぶりの美酒であり、当場職員一同、歓喜に沸いたことは申し上げるまでもありません。
 2019年に熊本県において生産されたサラブレッドは36頭で、国内の生産総頭数7390頭に占める割合は、わずか約0.5%(「2019年軽種馬統計」より)。その中からこれだけの活躍馬が出たことが、地元熊本や当場のある宮崎で大きなニュースとして一般紙や情報番組にも取り上げられると、九州の競馬ファンはもとより、普段は競馬に親しみのない方からも当場に問い合わせのお電話を頂くなど、その反響は想像以上のものでした。競馬中継やグリーンチャンネルにおいては、ヨカヨカ号の特集が組まれ、当場にも度々取材に来ていただきました。ヨカヨカ号の活躍が九州の馬産業全体にもたらしてくれたこの盛り上がりを将来に繋げていくため、宮崎育成牧場はこれからもチーム九州の一員として頑張る所存です。

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【写真1】待望の重賞競走勝利の瞬間!北九州記念ゴール前の雄姿

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【写真2】まだあどけなさが残る1歳10月頃のヨカヨカ号。オンオフの切り替えが上手な賢い馬でした。

 そんな九州の将来を担う(?)、本年の育成馬の近況を少しだけご紹介いたします。9月末に入厩した、セプテンバーセールにおける購買馬3頭をもって、本年の宮崎育成馬22頭(雄11頭、雌11頭)が揃いました。血統的には例年以上にバラエティーに富んだラインナップで、当たり前ですが見た目もキャラクターも様々です。9月中旬から馴致を始めた牡馬は、既に集団で角馬場調教を行っている馬たちもいますが、馴致が始まったばかりの牝馬たちは馬房内で様々な刺激に慣れる段階を経て、ラウンドペン(円馬場)での馴致を開始したばかりです。馬の性格も人と同様千差万別ですので、素直に人の指示を受け入れて、なんでも器用にこなす馬もいれば、臆病な、あるいは慎重な性格のため、スムーズに課題をこなせない馬もいます。

 いずれにしても、馬と人との関係性がきちんと構築されていること、馬にとって人間がリーダーとして信頼できる存在となることが、馬に余計なストレスを与えず人馬とも安全に騎乗馴致を進めていく上で重要となります。それを念頭に、それぞれの馬の個性に合わせて、根気強く成長を促していけるよう取り組んでいきたいと思います。

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【写真3】放牧地ではじゃれ合って遊んでいる1歳馬たちですが…

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【写真4】競走馬になるためのトレーニングもしっかり頑張ってます。