22-23育成馬ブログ(生産①)
〇JRA日高サマーキャンプを開催
本年生まれた8頭の当歳馬たちも離乳の時期となり、競走馬となるための一歩を踏み出しています。JRA日高育成牧場では、競走馬になる馬たちの生産や育成を行うだけでなく、競馬産業で働く人材の確保や育成にも取り組んでいます。その一環として、馬の獣医師に興味を持った獣医学生を対象とした「JRA日高サマーキャンプ」という研修を実施しています。今回はその内容についてご紹介していきたいと思います。
●幅広く獣医学生を募集
JRA日高サマーキャンプは、全国の獣医学科のある大学に所属する4~5年生の獣医学生を対象とした研修になります。これまで多くの学生を受け入れてきましたが、2020年と2021年は新型コロナウイルス感染症の影響で中止していたため、3年振りの開催となりました。例年は8月下旬に約1週間の期間で開催しており、本年は8月22日~26日までの前期と8月29日~9月2日までの後期の2回実施しています。各回6名の参加者は、新型コロナウイルス感染症の影響で授業がオンライン開催になったり、実習が中止になってしまったりしたこともあり、生きた動物と触れ合える貴重な実習に対して非常に生き生きと取り組んでいる姿が印象的でした。
参加者の募集は、現在はVPcampを通じて行われます。VPcampとはVeterinary Public health campの略で、獣医学生を対象とする家畜衛生・公衆衛生獣医師インターンシッププログラムのことです。このプログラムは、行政分野で活躍する公務員獣医師を育成することを目的に実施されています。実習受入先は、各都道府県の家畜保健衛生所や公的な研究施設などが対象となりますので、特殊法人であるJRAもそのひとつとして協力させていただいています。以前はJRAのホームページを通じて参加者の募集を行っていたので、元々馬に興味のある獣医学生しか閲覧しないという制約がありましたが、VPcampを活用することで全国の獣医学生に情報提供できることは大きなメリットだと考えられます。
●「見学型研修」から「参加型研修」へ
研修は初日のオリエンテーションの後、馬の取扱い実習から始まります。参加者の中には大学の馬術部に所属する獣医学生もいますが、初めて馬に触れるという人もいます。そのような人たちにとっては実際に馬に触れるだけでも大きな経験になると思われます。その後、馬の手入れや馬房掃除、さらには乗馬体験を通して馬に多く触れてもらいます(写真1~3)。このような体験を通じて、これまで縁遠いかった馬を身近に感じて貰えたと思われます。
写真2 当歳馬の手入れを体験する獣医学生
それとは別に、馬を使った臨床実習を多く取り入れています。聴診や触診といった基礎的な臨床実習から始まり、直腸検査や心臓のエコー検査など大学ではなかなか経験できない実習も多く行っています(写真4~6)。近年の獣医学生は臨床実習に参加するにあたり、獣医学共用試験(VetCBTとVetOSCE)に合格する必要があります。今回参加した獣医学生は全員この獣医学共用試験に合格しており、積極的に臨床実習に参加してもらいました。このように、これまでは研修先の獣医師が行っている臨床の見学や講義などが主体であった研修(見学型研修)が、近年では積極的に体験してもらう参加型研修へと様変わりしてきています。JRA日高育成牧場としても、関係機関と積極的に連携をしながら、「参加型研修」を充実させていきたいと考えています。
写真6 採血を実施する獣医学生
●今後の研修のご案内
JRA日高育成牧場では、今後も研修を開催していく予定です。まず、生産牧場で働く従業員の方を対象にした、「実践研修プログラム」を開催いたします。この研修の特色は参加者が実習内容や日程を決められることにあります。こちらが指定した複数の講義・実習内容の中から、数個を選んでいただき、参加者の方が本当に学びたい内容のみを受講することができます。希望した日時に必ず受講できるとは限らないことがデメリットですが、受け入れ期間を10月~11月の2か月間設定していますので、ぜひとも参加していただければと思います。詳細は下記リンクでご確認ください。
2022実践研修プログラム・秋季ご案内
https://jbba.jp/news/2022/pdf/jissenkenshu2022_2.pdf
また、来年の初春には獣医学生を対象とした「JRA日高スプリングキャンプ」を開催します。こちらの研修は「JRA日高サマーキャンプ」のような基礎的な臨床実習に加え、繁殖シーズンの開催という特性を活かして、分娩見学や繁殖牝馬の管理に特化した研修となります。こちらの募集は本年の11月以降に開始しますので、詳細はJRA日高育成牧場のホームページやVPcampのホームページでご確認ください。