« 活躍馬情報(事務局) | メイン

25-26育成馬ブログ(繁殖②)

日高育成牧場の繁殖牝馬・当歳馬の近況


 2025年も終わりに近づいていますが、例年以上の暖冬の影響か、放牧地には雪が全くありません。雪が少ないとヒトは過ごしやすいのですが、放牧中の馬や牧草にとっては良い条件ではありません。凍り付いた地面で肢を痛めたり、放牧草が冬枯れを起こしたり、馬に踏み荒らされ根こそぎ食べられることで春先の牧草の生育に支障が出たり・・・自然には勝てず雪を降らすことはできないので、放牧管理方法には常に頭を悩ませています。

Photo
積雪は馬や放牧地にとっては良い働きもします。

12月初旬に一時的に積もりましたが、現在はもう全て溶けてしまいました。

 

 日高育成牧場の当歳馬や繁殖牝馬は、これまで昼夜放牧を行ってきましたが、来年の種付けを控える繁殖牝馬たちは12月22日(冬至)から昼放牧に移行しました。厳冬期には熱産生でカロリーが消費され、BCSが下がりやすいことから、寒い夜間を馬房で過ごさせることでコンディションを維持します。また、この日からライトコントロールを開始し、翌年の2月頃から発情が始まるように調整しています。
 
 当歳馬は引き続き昼夜放牧を行っています。昨年の本ブログにも書きましたが、冬期は放牧中の運動量が落ちるためウォーキングマシン(WM)運動を実施し、運動量を補完する管理をしています。当歳馬たちは離乳後から約3か月間、面積が広く牧草も豊富な分場で過ごしてきたのですが、11月末にウォーキングマシンがある厩舎に引っ越してきました。現在は昼夜放牧(13時~8時の19時間)とWM運動(5.0km/h、30分)を行いながら日々成長しています。

 現在は落ち着いたのですが、放牧地を変更してしばらくは馬たちに落ち着きがなく、フェンスに激突して怪我をする事故がありました。放牧地のコーナーに数頭の馬が激突したようで、フェンスも破損してしまいました。同じ場所で2度激突事故が起きたため、このコーナーに何らかの原因があったのかもしれません。

Photo_3 壊された牧柵。かなりの勢いで衝突したものと思われます。

 

 一般的に放牧地のコーナーは走ってきた馬たちが止まりにくく、事故が起こりやすいと考えられます。このような事故を防ぐには、馬がコーナーは行き止まりであることを認識しやすくするために、フェンスを板張りにするなど対策をしている牧場もあります。
(動画:https://youtu.be/gEOn1Y6Fcps

 これに加えて、今回事故が起きた箇所の地面は水はけが悪くなっていました。ぬかるんでいたせいで余計止まりにくかったのかもしれません。

 そこで応急的な事故対策として、フェンスに板などを貼りつけて視認性を高めるとともに、ぬかるんだ部分を避けるように電気牧柵を設置してみました。設置初日に馬に電気牧柵をよく見せて、電流が流れることを認識させた後に放牧を継続してみたところ、繰り返し起きていた放牧地への激突はなくなり、平穏無事に放牧ができています。

Photo_5

板などと電気牧柵を設置したことで、衝突事故は起こらなくなりました。

 元々は鹿などが放牧地に侵入するのを防ぐための電気牧柵ですが、他にも効果的な使い方ができます。今年の春~秋にかけては、太りやすい馬のダイエットや、骨折療養馬の放牧などにも使用してみました。馬が柵を壊してしまったり、強風で倒れてしまったりして脱走する恐れもあるため、馬の性格や環境を選ぶ必要はありますが、適切に使えば有用なオプションだと思います。

Photo_6

Photo_7

上)肥満馬のダイエットのため、放牧地面積を制限した様子
下)骨折療養馬が青草を食べながら過ごせるように、電気牧柵を用いた簡易パドック

 馬たちが一日の大半を過ごす放牧地での管理。時に大きな事故も起こり得るため、牧場の皆さまは様々な工夫をしていることかと思いますが、今年の冬も無事に乗り越えて欲しいものです。