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2025年10月 1日 (水)

フランス発、国境と動物種を超えた研究者のつながり

Bonjour, 分子生物研究室の上林です。

フランスでの留学も約半年が経過しました。こちらノルマンディー地方の近頃の最高気温は15℃前後で、東京の11月並です。気温的には過ごしやすいのですが、天候は不安定、日の出は朝8時前と遅く、生活リズムを作るのに少し苦労しています。

さて、今回は私の研究留学先であるLABEOで開催された「Connecting Equine Health Research」という会議についてご紹介したいと思います。

この会議は、馬の感染症をテーマにフランスとオーストラリアの研究機関が集まり、情報共有と交流を図り、今後の研究の協力体制のあり方について議論する場でした。会議には、オーストラリアからメルボルン大学、そしてフランス国内からはLABEOをはじめ動物および人領域の複数の研究機関から総勢約40名の研究者と技術者が参加しました。今回は記念すべき第一回開催でした。

会議の前半は、①馬の感染症に関する最新知見②三次元の細胞培養モデルであるオルガノイドに関する最新知見③抗ウイルス薬や抗菌薬に関する研究や適正使用、の三つのセッションに分かれてシンポジウムが開催されました。私もセッション③で現在取り組んでいる抗ウイルス薬研究に関して発表する機会をもらいました。

Fig_1_12(左)会議プログラムと(右)肺オルガノイドに関する講演の様子

後半では、フランスとオーストラリア間での馬感染症における今後の研究協力をテーマに、約1時間みっちり議論が行われました。具体的には、国際的にどの分野で今後協働できるか、知識・技術をどう共有するか、人材交流・育成をどう進めるかなどについて活発な議論が交わされました。

今回の会議だけで何か具体的なプロジェクトが動き出すというわけではなさそうですが、こうして国境を越えて研究者が交流して知識の共有や意見交換を図ることで、馬の健康や馬産業のさらなる発展を目指すのは非常に価値ある取組みだと感じました。

前回(6月)のブログにも書いたように、LABEOがフランス国内の馬に関連する様々な組織との連携が盛んであることは日頃から感じていました。しかし、今回の会議を通じて他の動物や人の医学領域の研究機関とも強い繋がりを持っていることを改めて知り、感銘を受けました。この連携により、LABEOは馬の検査・研究機関でありながらも、人や他種の動物で応用されている高度な実験モデルや複雑な遺伝子発現解析などを自分たちの実験に応用可能にしています。フランスは馬産業の規模が大きいため馬に関する研究で資金獲得しやすいという事情がこの連携力に繋がっている可能性はあります。日本国内では簡単に真似できることではないかもしれませんが、研究の可能性を広げるという意味では学びたい姿勢であると感じました。

Fig_2_4(左)オープンディスカッションと(右)懇親会の様子。フランス語と英語が飛び交って交流が交わされた。

今回の会議は、私にとって大変刺激的かつ有意義で学ぶことの多い機会でした。大きな学会ではなくコンパクトな国際交流の場だからこそ、一対一でじっくりと関係性を構築できる点も大きな魅力です。是非次回はJRAもこの会議に呼んでもらえたらと期待しています。この半年間、研究だけでなく、人とのつながりもまた私の留学の大きな財産になっていると常々実感しています。留学生活も後半戦に入りますが、引き続き積極的に頑張りたいと思います。

それでは、 À bientôt!