総研に藤沢元調教師がやってきた!
企画の桑野です。
暑さがちょっとぶり返した長月(ながつき)も終わろうとする頃、現在JRAのアドバイザーをしていただいている藤沢和雄元調教師が、業務の一環で競走馬総合研究所(総研)にいらっしゃいました。この中で本会職員との座談会が行われました。
総研の職員は開催日に執務するし、そもそも研究所に来る前は競馬場やトレーニングセンター(トレセン)で執務していた訳ですから、当然、藤沢元調教師とは顔馴染みです。ですが、競馬場やトレセンは師にとっては主戦場であり、そんな場で私たち職員と気を許したお付き合いは当然できません。今回の座談会では、すでに調教師を引退されている師が、肩肘張らずに我々と向き合う良い機会となりました。
座談会の一幕;屈託ない笑顔で語られる藤沢元調教師の優しい瞳が印象的でした。
さて、元調教師が競馬の世界へ入った経緯は、学生時代に馬の生産牧場へ働きに出たことがきっかけだったそうです。「勉強より馬の方が面白い」と調教助手を目指して、JRA競馬場(当時、トレセンはまだ無かった)の厩舎に入ったのは20歳になるかならないかの時で、最初は馬車馬のように働き、その数年後、当時まだ新人の一人だった国枝氏(東京農工大獣医学科をご卒業の現調教師)と一緒に、調教師試験に向けて猛勉強したことは、辛かったものの懐かしい記憶として残っていると語っていらっしゃいました。
以下は師のお言葉です。
「立派な強い競走馬になりたいなんて考えている馬は存在しません。よって厳しい調教を無理やり強いるならば、馬は嫌気がさしてやる気をなくしてしまうでしょう。そうならないように、まずは自分が仕事でイライラしないよう細心の注意を払って冷静を保つよう心がけました。また、叱られた従業員が馬を叱り返さないように、自分は従業員を叱りつけないのも気配りの一つでした。そして、生産地で子馬を選ぶときは、自分は馬を見る目があるなどと傲慢にならずに、牧場の人達が言うことにしっかり耳を傾けました。また、引退する馬は成績の良し悪しによらず、リスペクトを持って綺麗に洗って怪我も治して美しい姿で生産地に返すことも心がけました。」 など、先生のモットーをたくさん伺うことができました。
最後に先生は、総研を見学して「これからも競走馬のために一生懸命に研究してください。」と言葉を残してお帰りになられました。
調教師としてJRAでG1(最もグレードの高いレース)を34勝、海外G1で1勝、年間最多勝利によって得られる最多勝利調教師賞を12回、優秀調教師賞を21回も受賞した名伯楽の後ろ姿に、競馬の世界に大きな足跡を残された男の逞しさを見た思いがしました。
総研所長(右から2人目)の影に隠れちゃう控えめな藤沢元調教師とパチリ