« 競走馬医療の秘密基地 ~臨床医学研究室とは?~ | メイン

2025年11月18日 (火)

全国牛削蹄競技大会で初の女性選手が入賞!

企画の桑野です。

 先日、11月11日(火)に鯉渕学園・瑞穂農場分場にて全国牛削蹄競技大会が実施され、護蹄管理を考える蹄の研究者として見学に行ってまいりました。牛削蹄競技大会については、昨年もこのブログで紹介したのですが、今年はちょっとビックなトピックがあり、筆を取ります。

Img_3627_3

 トピックとは、大会始まって以来、初めて女性牛削蹄師が参加したというものです。今回、鳥取県代表として中国・四国地区予選会を勝ち上がってきた川村真美選手は、中国地方の牛農家を足元から支える若い力です。さらにクジによる抽選で宣誓係にも選出され、女性牛削蹄師として力強く選手宣誓を実施。これだけでも目立つのですが、なんと競技大会で準優勝しました!これは快挙です。

Dsc_7595力強い選手宣誓をする川村選手

 というのも、ウマと違ってウシは人が触れることで自発的に足を上げる訓練をされていません。削蹄のため足を持ち上げようとすると(単独保定と言います)、抵抗するものです。「保定は力ではない」という格言めいた原則があるものの、中には結構な力でイヤイヤするウシさんも。暴れられたら削蹄できませんから人の方にも力が必要です。そのため、単独保定で牛の蹄を切る削蹄師は屈強・骨太で掌が厚く指も太い男性が圧倒的に多いです。そんな中、身長160cmほどの小柄な女性が、ウシへの当たりの柔らかさで上手に保定し、正確な判断力と繊細な削蹄技術により牛蹄を切っている姿は見るものを驚かせました。機械に頼らず、当たりの柔らかさでウシに対応するため、ウシも安心して身を任せているように見えました(下図)。

Photo競技中の河村選手。保定も上手いのですが、削蹄技術も優れていました。

Img_3653_3
僅差で優勝を逃しましたが、準優勝は立派!

 近代になってから発達した牛削蹄の歴史は、まだ100年ほどしかありません。そのため、「どうしたら、より牛に快適な削蹄になるのか」の問いに完全には答えが出ていません。また、牛にとって良い削蹄を研究する機関も世界的に少ないのが現状です。その意味で、発展途上にある牛削蹄技術には改良と発展の余地があり、面白い仕事とも言えるでしょう。ウマもウシも蹄がなければ生きていけない動物です。ウマだけでなく、ウシの護蹄管理も発展していくことを祈念しています。そうして、ウマの装蹄とウシの削蹄の技術協力ができるような時代が来ればいいのにと願っています。