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2026年2月

2026年2月18日 (水)

ノルマンディー・ブルターニュ紀行

Bonjour. 分子生物研究室の上林です。
一年間にわたるフランス留学生活もいよいよ最終盤を迎えています。
先日、研究留学先の上司が「最後の思い出作りに」とノルマンディー地方を中心に巡るドライブ旅に連れて行ってくれました。
滞在地のカーンを出発し、ノルマンディー地方を反時計回りにぐるりと巡り、モン・サン・ミシェルを経てブルターニュ地方のレンヌを訪れ、帰路につくという一泊二日の旅です。

Fig1_3今回のドライブコース

フランスでは馬文化が広く根付いていますが、なかでもノルマンディー地方はフランス最大の馬産地として馬産業に力を入れている地域として知られています。
今回の旅でも、郊外に出れば広大な農地や牧草地が広がり、放牧され草をはむ馬の姿を至る所で見ることができました。研究対象である馬のルーツがこうした風景の中にあるのだと改めて感じました。

山の多い日本とは異なり、ノルマンディー地方は緩やかな丘陵が広がる地域が多いです。車でしか行けないような岬や海岸にも立ち寄り、穏やかな海と起伏に富んだ丘陵が織りなす自然のダイナミズムもたくさん味わうことができました。ノルマンディーの人にとっての誇りであるモン・サン・ミシェルも訪問。何回見ても飽きることのない素晴らしい景観です。

Fig2_6La Hagueというノルマンディー地方最北端の地域の岬(左)と羊の群れの向こうに望むモン・サン・ミシェル(右)

旅の終盤にはブルターニュ地方の中心都市レンヌへ。ブルターニュは中世まで独立した公国として存在し、現在でも独自の文化色が色濃く残る地域です。そんな地域に住む人々や独自言語のことをブルトン(Breton)と呼ぶとその上司から教わり、ふと気になったので調べてみました。
すると、ブルターニュ地方は帯広で行われているばんえい競馬に用いられる重種馬の一つ「ブルトン種」の発祥の地域であることを知りました。思いがけず、ここでもまた馬と地域の繋がりを感じることができました。
最後はブルターニュ地方名物のガレットを味わい、帰路へ。

Fig3_2ブルターニュ原産の馬ブルトン(左)と名物のガレット(右)

フランス旅行といえばまず観光地として思い浮かぶのはパリだと思います。私もパリは何度か訪問しましたが、歴史・文化・芸術の面で飽きることのない素晴らしい街だと思います。
しかし、もしフランスの違う表情も見てみたいという方には、ぜひこのノルマンディーやブルターニュ地方、あるいは他の地域も訪れてみることもおすすめします。フランスという国の自然・文化・人々をより深く理解できる機会になるかと思います。なお、冬は天候が不安定な日が多いので6〜9月の訪問が最もおすすめです。

研究留学生活もいよいよ大詰めです。無事に帰国し、この一年で学んだ経験を日本での研究にしっかりと生かしたいと思います。フランスからのお届けはこれで最後になります。
À bientôt!

2026年2月16日 (月)

ICEEP12(国際馬運動生理学会)に向けて

運動科学研究室の高橋です。

 午年の2026年、みなさんいかがお過ごしでしょうか。

 運動科学研究室としても今年の秋は国際馬運動生理学会(ICEEP)12が開催されるため、忙しい年になりそうです。

 ICEEPは、International Conference of Equine Exercise Physiologyの略称で、1982年より4年に1回開催されている国際学会です。トレーニング、栄養、薬物、生理機能、バイオメカニクスなどについての多くの研究結果が発表されます。前回はスウェーデンのウプサラで開催され、第12回目の今年は10月26日から30日の日程で東京にて行われます。要旨提出締め切りが今月末となっているので、運動科学研究室でも多くの演題を提出すべく、準備を進めています。

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 提出された要旨は、その分野の専門家のもとに回され、査読(校閲)を受けます。コメントを踏まえて修正されたものが、最終的に演題として採択されます。

 以前は 4000 字 前後の論文 (full paper)として発表内容が掲載されていた時代もあり、まとめると相当の頁数だったようです。最近では、250 字程度の要旨のみが学術雑誌に掲載されることが一般的です。とはいえ、本学会では 200 近い演題が集まるため、それらをまとめて出版した書籍は、まるで辞書のような厚さになります。

 私の研究室はこの学会の事務局を担ってもいますが、学会中は、海外から参加する研究者に日本を楽しんでもらうための social event と呼ばれる催しを企画したり、タイムテーブルや当日の運営を考えたりと、事務局として対応すべきことは多岐にわたります。これに加えて、かつては提出された論文の査読から出版までをすべて担っていたとのことです。しかも、現在のようにパソコンや生成 AI といった便利なツールが十分に整っていなかった時代に...です。そう考えると、当時の運営に携わっていた方々は、本当にとてつもない仕事をしていたのだなと、改めて感心させられます。

 本国際学会の成功を祈りつつ...。

 

2026年2月12日 (木)

世界の馬たちの健康を科学の力で守る—WOAH(国際獣疫事務局)馬インフルエンザワクチン株選定専門家会議の議長就任

みなさんこんにちは。分子生物研究室の根本です。

 今回は、動物衛生の国際機関である「WOAH(World Organisation for Animal Health、国際獣疫事務局)」が主催している、馬インフルエンザワクチン株選定専門家会議(Expert surveillance panel on equine influenza vaccine composition)について紹介します。

WOAHウェブサイト(外部リンク)

https://offlu.org/equine-influenza/

Photo_8*会議に参加する各国の馬インフルエンザの専門家

 WOAHは、パリに本部を置く動物版のWHO(世界保健機関)のような組織です。本会議の役割をひとことで言うと、世界で流行している馬インフルエンザウイルスの流行状況を毎年分析し、世界中の馬たちに接種する馬インフルエンザワクチンの「中身」を決めることです。現在のワクチンの中身が有効と判断されれば継続、そうでなければ中身を変更することを推奨します。

 記憶に新しい方も多いかと思いますが、昨年(2025年)は、熊本や十勝地方で17年ぶりに日本での馬インフルエンザの発生が確認されました。ニュースを聞いて、大変なことになるのではと心配された方も多かったと思います。しかし結果としてこの流行はサラブレッド競走馬には広がらず終息へと向かいました。 その要因のひとつとして、現在のワクチンが実際に流行したウイルスに対して有効であったことが挙げられます。ウイルスは常に変化していますが、長年に渡って総研、そして本会議は、世界中で流行しているウイルスに対して現在のワクチンが有効であるかを評価しています。実際に現在のワクチンが2025年に日本で流行したウイルスに対して有効であったこの経験は、研究者として大きな自信となると同時に、改めてその責任の重さを痛感する出来事でした。近年は日本の競走馬が頻繁に海外遠征を行っており、馬の国際間移動が非常に活発です。馬インフルエンザは欧米を中心に流行しており、また非常に伝播力が強い病気ですので、国境を超えたウイルス対策が不可欠になります。

 今年からこの馬インフルエンザワクチンに関する国際会議の議長になりました。これまでの議長はイギリス、アイルランドの研究者であり、英語ネイティブではない日本人の私が3代目として任されたことは、非常に光栄なことであると同時に、気が重いのも正直なところです。ですが、世界中の馬たちの健康のために、縁の下の力持ちとして世界中の馬インフルエンザの専門家と協力し、議長として実りのある議論ができるように少しでも貢献できればと思います。





2026年2月10日 (火)

下野の国に見る馬力神なる石碑

微生物研究室 上野です。

 休日は、家族に「ちょっと冒険に行ってくる」と言い置き、某人気ロールプレイングゲームをベースとした位置情報ゲームを楽しみつつ栃木県内を歩き回っています。

 郊外を歩いていると、道や田畑の傍らに時折『馬力神』と記された石碑を目にすることがあります。少し古い情報になるのですが、1970年から1972年に栃木県教育委員会により行われた調査では、家畜の健康祈願供養に関する碑塔として馬力神が紹介されており、「馬力神は明治に入って馬にひかせる馬力(荷馬車)が交通・交易に多く使用されるようになってから造立されるようになった碑塔である」との記載があります。調査資料によると県内に274基が存在するとのことでしたが、今回写真をお示しした碑(図1)は調査リストに含まれていなかったことから、実際はもっと多くの碑が建立されていたものと思われます。

 馬力神の石碑の存在を知ったことをきっかけに、この地で当時働いていた馬の姿を想像し、現在の風景に重ね合わせる新たな楽しみができました。この先も変わらず県内各所の碑塔が残り続けることを期待します。

Photo馬力神と克明に掘られている石碑。お墓にしては単独で立っており、不思議に思って調べてみました。


参考資料

1973 『栃木県民族資料調査報告書9:下野の野仏』栃木県教育委員会