ウマ科学会の賞牌を作った人は凄い彫刻家だった!
企画の桑野です。
ウマ研究者の発表の場である日本ウマ科学会学術集会では、学会への功労者やウマ科学に貢献した者を表彰することがあります。その際、表彰状の他、ウマを平面ブロンズで彫像した賞牌(図1)も受賞者にお渡ししております。この賞牌は彫刻家の後藤信夫先生がお造りになったものですが、この方に先日お会いして、その作品の輝きに圧倒されてしまい、この感動を皆様にもお伝えしたく筆を取りました(本人承諾済み)。
図1.日本ウマ科学会の賞牌(功労賞)
先生(図2)は現84歳、1968年に第64回太平洋美術展奨励賞を受賞後、数々の褒賞を受けてこられ、2009年には日本ウマ科学会の功労賞をも受賞されました。凄いのはそういうことよりも、要所要所にある数々の競走馬の彫像を製作されたご本人であるという点です。
中山競馬場の正門入った所にあるハイセイコー像(図3a)、札幌競馬場の駿馬躍進の像(図3b)、中京競馬場の蹄鉄と競走馬の像である“マイドリーム”(図3c)、JRA競馬博物館の“競馬の殿堂”コーナーにある数々の懸賞馬(スピードシンボリ、ハイセイコー、トウショウボーイ、マルゼンスキー、ミスターシービー、シンボリルドルフ、メジロラモーヌ、オグリキャップ、テイエムオペラオー、ディープインパクト)の像、そして日高の優駿メモリアルパークの白銅製のオグリキャップ像(図3d)は先生の作品です。そうとは知らずに記念撮影されている方も多いのではないでしょうか。

図2. 「歳のせいで以前のようには作品は作れなくなった」と言いつつも、実に明朗な語り口調でお話しくださった後藤先生
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図3. a. ハイセイコー像(中山競馬場)、b. 駿馬躍進の像(札幌競馬場)、c. マイドリーム(蹄鉄と競走馬の像)、d. オグリキャップ像(レプリカ/ご自宅で所蔵)…後藤先生所蔵の写真から
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後藤先生はウマの制作において特に気を付けてきたことがあったそうです。それは、シンボリの冠名で知られる和田オーナーからいただいた「競走馬を作るなら、“素軽さ”が表現されてなくてはいかん!」というお言葉だそうです。この“素軽さ”という辞書にも載っていない言葉をどう捉えるべきか、生涯悩み続けての制作だったとため息まじりに語っておられました。
世に馬の彫像は多々あるものの、先生の作品には決まって競走馬らしい動きが感じられます。静止しているだけの競走馬ですら、その目線、尻尾の形、筋肉ひとつひとつのスジ目に今にも動き出しそうな躍動感を感じられるのは、この“素軽さ”の探究に端を発しているかもしれません。
後藤先生はJRAの発展とともに大きく羽ばたいてきた数少ない彫刻家です。ウマ科学会の褒賞者は実に偉大な彫刻家の作品を授与されていることを真摯に受けて止めてほしいものです。
なお、“名馬の彫像すなわち後藤!”と称されるほど競走馬と深く関わってこられた先生の作品の制作風景は、以下のリンクで垣間見ることができます。
<外部リンク> https://www.youtube.com/watch?v=gQRc0aWb3j8
