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Count Down 《4・28》 中山 (事務局)

414日、日高育成牧場において育成馬展示会が開催されました。当日は小雨の降る肌寒い1日でしたが、愛馬の成長に目を細める生産者や馬主・調教師など関係者184名が来場し賑わいました。

騎乗供覧では、冬期間の十分な乗り込みを感じさせるJRA育成馬の勇姿が披露され、本部から視察に行った我々を安心させてくれました。また、展示会当日は、日高育成牧場の育成馬を使用して実践研修を行っているBTC生徒にとって、1年間の研修成果を発揮する最後のお披露目の場ともなりました。彼らは、翌週から民間育成牧場に騎乗調教スタッフとして就職していきます。JRA育成馬に騎乗して学んだことを活かして、わが国の将来を担う人材に育っていくことを期待しています。

 

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 当日は、生産者をはじめ多くの関係者で賑わいました(414)。

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 基本に忠実に騎乗するBTC生徒の供覧(外)です。騎乗馬はツキノショウリの06(牡・父スペシャルウィーク)、内はアーチェリーの06(牡・父シルバーチャーム)。2頭とも余裕を持っての力強い走行を披露しました。走行タイムは2F14.213.5)。《写真提供:馬市ドットコム

今年産駒がデビューする新種牡馬の中にはシルバーチャームとサニングデールがいます。シルバーチャームは1997年のケンタッキーダービーG1およびプリークネスステークスG1を勝った2冠馬で、翌1998年にはドバイワールドカップG1を勝ち、2007年にはアメリカ競馬名誉の殿堂入りを果たした名馬です。一方、サニングデールは日本に少ないゴドルフィンアラビアンの血統で、自身は2004年スプリンターズステークスG1を勝利した名スプリンターでした。ちなみに、JRA育成馬の中にはシルバーチャーム産駒が7頭、サニングデール産駒が3頭おり期待しています。

これらの産駒は、育成馬展示会でも素軽い動きを披露していました。中でも、リンデンルレーブの06(牡・父サニングデール)は、弾かれたロケットのようにスピードに乗り、小さな体を大きく見せての印象的な動きをしていました。

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 持ったまま併走相手を突き放したケイアイバラードの06(牡・父シルバーチャーム)。走行タイムは2F12.513.0)。《写真提供:馬市ドットコム》

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 リンデンルレーブの06(牡・父サニングデール)。単走での走行タイムは2F13.312.7)。《写真提供:馬市ドットコム》

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 宮崎育成牧場のシルバーチャーム産駒、インディペンデンスの06(牡)。

428()4回目を迎える2008 JRAブリーズアップセールを中山競馬場で開催いたします。当日は騎乗供覧を9時から、セリを14時から行う予定です。なお、今年は13時からグリーンチャンネルでの実況中継も行います。育成馬の関係者をはじめ一般の競馬ファンの皆様にもTVでセリの様子を楽しんでいただければ、と考えております。

  

 

 

 

育成馬の写真撮影(日高)

このところ穏やかな日が続き、いよいよ324日(月)から1,600mトラック馬場がオープンしました。これからのスピード調教は、間近に迫った育成牧場の展示会やBUセールの騎乗供覧に向けて、1,000m屋内坂路馬場に加えてこの馬場を併用して行っていくことになります。

馬達はほとんどが1,000m屋内坂路馬場のスピード調教で持ったまま3ハロンを45秒(ハロン15秒ペース)で走れる体力が付いてきています。坂路の傾斜による心肺機能に対する負荷を考慮すれば、そろそろ平坦馬場では3ハロンを13秒台刻みで走る力が付いてきたと考えられます。

さて、今回は写真撮影についてです。

今年から育成牧場職員自らの手で写真撮影を実施することにしました。天候や場所を選び、しっかり馬を立たせ写真撮影する技術、加えて撮影した写真を吟味する選択眼も育成牧場が試行錯誤する中で色々な皆さんに伝えていく部分ではないかという考え方からの取り組みです。

 馬の駐立写真の撮影について、注意しなければならないポイントとしては、

①光線(馬に当たる光)

・順光で、光がやわらかく横目から光が当たる時間帯がベスト。

②撮影場所

・平坦で蹄まできれいに見え、背景のスッキリした場所。

③風向き

・無風が望ましいが、風があっても、タテガミが立たず、尾が股間に巻き込まないこと。

④立たせ方

・四肢をずらして、立った耳がVの字を作る程度に馬の顔を少し撮影者に向ける。

・引き綱は、ゆったりと長めに持つ。

⑤撮影テクニック

などがあげられ、撮影担当者はシャッターを押す瞬間に、馬の四肢が画角に収まり、写した写真をトリミングした時に保持者の手が入らないか、肢を休ませていないかなどチェックし、最後に耳が立ち馬の表情が引き締まっているかを判断します。

今回の撮影において威力を発揮したのがデジタル一眼レフカメラです。連写機能によりシャッターチャンスを逃さないのはもちろんですが、フィルムや現像の費用に加え手間がかからないのが大きな魅力です。

もう一点は、ICレコーダーの活用です。撮影準備が整い、最後に耳を含めた顔の表情を求める段階になってなかなか撮影に集中してくれない馬がいます。そんな時、事前にレコーダーにテレビのコマーシャル等、馬の注意を引きそうな音源を録音しておき馬の左斜め前から聞かせるのです。瞬時に異なったタイプの音を再生、リピート、頭出しができることから効果覿面です。しかし一方で何回も繰り返すとその音に慣れてしまう傾向もあります。再生は極力短時間にとどめ音源を豊富に用意すること、構えるカメラマンと息を合わせることが大切です。ちなみに数頭の例外はありましたが、音源の中で極めつけは、馬の「いななき」でした。

最後に、写真選択の段階になって、その幅を持つためにも、いい写真が撮れたと感じても、最低23回は立ち位置を変えて撮影しておく必要性を感じました。しかしそのためには、撮影に携わる全スタッフの、いい写真を撮ることに対する理解と忍耐が求められます。

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昨年造成した日高山脈を望む写真撮影用のお立ち台。ようやく周囲のしばれが取れたものの芝生が生えそろわず少し殺風景ですが、背景の山並みは素晴らしい。左前のICレコーダーの発する音に反応し凛々しい立ち姿を見せています。馬はBUセール番号7ハートフルソングの06(牡父クロフネ、母父マルゼンスキー)。

それでは購買時の写真と今回撮影した写真との比較をご覧下さい。

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昨年の8月入厩時の写真。四肢は右側を狭く立たせることで、すべての肢が見えるようにします。馬はシラーの06(♂父マイネルラヴ)。馬体は皮膚が薄く購買時より垢抜けており多くの方の注目を集めた1頭でした。春早い撮影では、この写真の緑の芝と青い山並がうらやましく感じます。

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今回3月中旬撮影のシラーの06。BUセールの名簿番号は36番。休むことなくトレーニングを積まれ、1歳時の子供らしさが抜けてたくましくバランスが良くなりました。その力強さが表現できていればいいのですが、いかがでしょう。

色々な撮影テクニックはあるにしても馬の良さを引き出す写真を撮影する一番の要素は天候です。光と風が味方してくれなければ、どれだけ手入れをして、どれだけきれいに立たせてもインパクトのない写真になってしまいます。その天候を待つために撮影が予定通り進まないのは常のことです。できるだけ成長を待ち、冬毛が取れた馬体を撮影してお見せしたいのは人情ですが、お披露目の期日は決まっています。そのタイトなスケジュールのなかで好天の調教後を撮影に当て、現時点の馬たちの馬体をアピールできる写真の撮影を終えることができました。