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管囲の日内変動(宮崎)

10月になりました。南国宮崎も朝夕はだいぶ涼しくなりましたが、日中はまだまだ25℃以上まで上昇し、汗ばむ日もあります。また、9月の後半は2回にわたり台風が接近し、多量の雨をもたらしました。幸いにして風が比較的弱かったこともあり、Big Dream Stables宮崎育成牧場に大きな被害はありませんでした。

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 台風による暴風に備え、騎乗馴致用のラウンドペンを補強します。取り囲む板もすべて取り外しました。

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通常使用時のラウンドペンです。

さて、前回の宮崎からの日誌では馬体重の日内変動」についてデータを示しました。今回は管囲の日内変動についてです。

○ 管囲の日内変動

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管囲の計測。測定位置や巻尺の締め具合、馬の立ち方などに注意して計測します。

管囲とは馬の管骨(球節と腕節の間にある長骨)部分中間の太さを示す値で、骨の太さを示す指標ともいえます。一般に左前肢で測定を行い、馬を売買するセリ市場などでは体高や胸囲などとあわせて個体ごとに公表されます。この太さから馬の丈夫さを推し量る人もいる重要な数値なのですが、1ミリ単位で発表されるこの数値の計測は比較的難しく、計測者による誤差が出やすい指標ともいえます。計測の際は測定位置(正確に管骨の中位)、巻尺の締め具合(管部を圧迫するほどは締めない)、馬の立ち方(四肢に均一に体重をかけてまっすぐに立った状態)などに注意して、同一の者が計測した値を比較するべきでしょう。昨年宮崎で育成した育成馬(現2歳)は、管囲の平均値が19月:牡馬(19.1cm)牝馬(18.8cm)、24月:牡馬(19.7cm)牝馬(19.7cm)で、半年近くの間に大きく成長したことがわかります。当場は、毎回同一の条件(測定部位、時間、測定者など)で測定することを心がけています。

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今夏、1歳育成馬(牝馬1頭)の両前肢の管囲の変化を追跡調査しました。計測は朝夕2回、9日間実施しました。その結果、図1のようにほぼ毎日、朝よりも夕方の値が大きい(太い)というデータが得られ、管囲にもある程度の日内変動が認められました。図2に示すとおり、その変動幅は平均すると左前肢で2.1mm、右前肢で2.3mmでした。なお朝→夕、または夕→翌朝の最大変動幅は6mmでした。

データを取った育成馬は、夜間放牧(涼しい夜間は放牧、暑い昼間は厩舎で静養)をしていました。詳細には、①朝8時に放牧地から厩舎に戻り、管囲計測後軽運動、②朝830分と昼15時に厩舎で餌付け(合計3kg)、③夕方16時に管囲計測後、放牧(以降朝まで夜間放牧)といった管理でした。

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夕方の値が大きくなる主要因は、骨が太くなるわけではなく、管囲計測部分にある屈腱領域がむくむのではないかと考えられます。

人の場合でも足のむくみに悩まされる方は多いですね。その原因は、立ち仕事や乗り物への乗車などで同じ姿勢を長時間続けるたり、運動不足により全身の血行が悪くなり、不要な水分が下半身に溜まってしまうことが原因です。予防には、足踏みや足首を回すなど、足の筋肉を動かすことが大切です。今回の管部周囲のむくみも、昼間を過ごす厩舎内では運動量が制限されるため、血行が悪くなりむくんだのだと考えられます。

経験的には、夜間放牧を終え騎乗調教期に入った秋季以降の育成馬では、これほどの日内変動はないように感じています。今後は秋季以降の計測や、屈腱部のエコー検査とあわせて計測することで、さらに知見を得たいと考えています。

     ビッグキャンドルの07

Big Dream Stables宮崎育成牧場で育成中の24頭の中から注目!?1頭をご紹介します。名前はビッグキャンドルの07(父は新種牡馬:バゴ)で通称「キャンドル」です。サマーセールにて、350万円(税抜)で購買しました。小ぶりな体(9月末現在、宮崎で最軽量の401kg)ですが、闊達な動きが目立つ牝馬です。

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819日 サマーセールでの購買時に撮影

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925日 宮崎育成牧場にて撮影

「キャンドル」については、その成長などを次号以降でも紹介していきます。必ずしも順調なことばかりではないとも思いますが、1頭の育成馬がどのような過程を経て競走馬を目指していくのかをお知らせできるのではないかと考えています。