宮崎育成牧場に入厩したJRA育成馬24頭は、その半数が9月17日に、残る半数も10月15日に騎乗馴致を開始しました。どちらのグループも日々新しい経験をし、成長していく姿が手にとるようにわかる大変楽しい時期です。
さて、今回は入厩した24頭の血統(父系)について簡単に説明しようと思います。今シーズンの特筆すべき点は、すべて異なる父の産駒であること、つまり24頭の種牡馬がいることでしょう。
上の表が宮崎在厩24頭の父系です。青い網掛けが牡馬(12頭)の父、赤い網掛けが牝馬(12頭)の父で、左側はその祖先を示しています。24頭というのは決して多い頭数ではありませんが、バラエティーに富んだ様々な系統をラインナップしています。
ノーザンダンサー系は、今回の分類法でいうと世界で最も勢力を拡大している系統といえるでしょう。当場育成馬でも最多となる9頭がこの系統です。このうちDanzigの直仔デインヒルは種牡馬として多数の活躍馬や後継種牡馬を出し、世界的に大成功を収めている系統で、1996年に日本でも供用されました。その直仔で本邦新種牡馬となるロックオブジブラルタルは、既に英・仏・米・豪・香の5カ国でGⅠ勝利馬を輩出しており、大変楽しみな種牡馬です。
ロックオブジブラルタルを父にもつソプラニーノの08。素軽い動きが目立ちます。もの覚えがよく物怖じしない性格から、初期調教では他馬の先導役を果たす牡馬です。
ナスルーラ系の2頭はブラッシンググルームの孫にあたります。本邦新種牡馬のファンタスティックライト、2歳新種牡馬としてランキング上位にあるバゴとも今後の活躍が楽しみです。
ネイティブダンサー系の3頭はミスタープロスペクターの子孫にあたります。種牡馬として日本でも活躍したフォーティナイナーの直仔であるエンドスウィープは、本邦では3年間の供用のみで3頭のGⅠ馬(計GⅠ級8勝)を送り出しました。その直仔スウェプトオーヴァーボードも日本への適性が認められつつある楽しみな種牡馬です。
スウェプトオーヴァーボードを父にもつタイキエンプレスの08。おじにダービーGP(GⅠ)勝ちのタイキヘラクレスがいて、兄姉も堅実に活躍しています。強い気性が競馬でいいほうに発揮できるよう、育て甲斐のある牡馬です。
ロイヤルチャージャー系の父は5頭ですが、うち4頭はサンデーサイレンスの直仔です。1995年から2007年まで本邦リーディングサイアーに君臨し、今や「サンデーサイレンス系」と呼ばれ、日本では最も勢いのある一大勢力といえます。しかし国内での席巻度合いと比較して、JRA育成馬ではそれほど多数であるとはいえないようです。
一例として国内最大規模の1歳市場であるサマーセールの上場馬について調べてみました。今年の上場馬1,077頭の3代父までにサンデーサイレンスを持つ割合はなんと42.2%の高率でした。このうち売却された馬では44.7%となり、700万円以上の高額取引馬では55.6%と過半数にまで上昇します。それだけサンデーサイレンス系の人気度・信頼度が高いことを示す数値かと思われます。これに対して、JRAが同セールで購買した61頭では37.7%とやや低い数値となっています。今年のJRA育成馬はそれだけバラエティーに富んだラインナップといえるのではないでしょうか。
先頭がゼンノロブロイを父にもつノースシェーバーの08。前向きな気性と動きのよさが目立つ牡馬です。写真は500mトラックでの駈歩調教2日目に撮影しました。
上記以外の系統も、4頭をラインナップしています。このうち新種牡馬となるデビッドジュニアは欧州の3歳中距離チャンピオンで、ドバイデューティフリー(GⅠ)にも勝利しました。その血にミスタープロスペクターをもたず、ノーザンダンサー、ヘイルトゥリーズンも薄いことから、日本の繁殖牝馬にも配合しやすい血統といえます。
誘導馬(先頭・芦毛)に続く栗毛がデビッドジュニアを父にもつローズガーデンの08。どっしりと構えていて、時に牡馬のような威圧感を漂わせる牝馬です。筋肉質で尻回りのボリュームが増してきました。写真は500mトラックでの駈歩調教初日です。