“血統登録検査”について(生産)
北海道浦河では“雪虫”が飛び交う時期も過ぎ、さらに10月の終わりに最低気温‐6℃を記録し、早くも冬を迎えています。生産の現場では、離乳を終えると年明けの出産シーズンまでは放牧中心になるため、代わり映えのしない毎日となります。しかしながら、秋から冬にかけては、寒暖の変化も激しいため、毎日の子馬の体調チェックは欠かせません。そんな心配をよそに、子馬たちは、離乳後から開始した分場での24時間放牧管理によって、半野生馬と化しており、鹿を追いかけ、自主トレーニングに励んでいます。 鹿を追いかけて“馬鹿”げた自主トレーニングに励んでいる子馬たち。北海道では鹿が増え、農作物への被害が深刻な問題となっています。 今回は、9月に行われた子馬(当歳馬)の血統登録検査について触れてみたいと思います。サラブレッドとして競馬に出走するためには、サラブレッドである旨の証明を受け、そして登録されなければなりません。サラブレッド誕生の地である英国では、1791年に出版された繁殖記録台帳である「General Stud Book」から血統登録の歴史は始まっており、血統登録の歴史が、サラブレッドの歴史そのものとなっています。現在では、日本を含め世界各国で英国の形式が踏襲され、血統登録が行われています。日本では(財)日本軽種馬登録協会がその業務を実施しています。ちなみにサラブレッドなどの軽種馬以外の登録は、日本馬事協会が実施しています。 個体識別検査のためにマイクロチップリーダーを使用して、番号を確認する日本軽種馬登録協会の登録審査委員 検査当日は、2名の登録審査委員の方が来場され、検査を実施していただきました(写真)。実施する検査は、主に馬の個体識別と親子鑑定検査です。個体識別検査は、以前は性別、毛色、頭部や下肢部の白斑、そして旋毛(つむじ)などによって行われていましたが、2007年産まれの馬からマイクロチップが併用されるようになりました。マイクロチップ検査の導入により、個体識別は簡便かつ確実となったため、2009年産まれの馬からは、当歳時と1歳時に2回実施されていた個体識別検査が、当歳時の1回だけに変更となります。個体識別は、近年のサラブレッドの経済的価値、さらには競馬の公正確保を考えた場合には、非常に重要なものとなっています。 マイクロチップ本体は直径2mm×長さ11mmの円筒状で非常に小さく、写真下の注射器を用いてタテガミの生え際の下の靭帯内に挿入されるため、馬への苦痛・ストレスはほとんどありません。 血統、すなわち親子鑑定検査は、以前は血液型検査によって実施されていましたが、2003年から導入されたDNA型検査によって、その精度は99.9%を超えるようになりました。現在は、5~10本のタテガミあるいは尻尾の毛根をサンプルとして検査を実施しており、採血も不要となったため、子馬へのストレスもほとんどなくなり、人馬ともに安全な検査となっています。 我々にとって、この検査は初めて外部の方に子馬を見ていただく機会であり、セリに上場するような気持ちでトリミングを実施しました。スッキリと手入れされ、少し気取って立つ子馬たちの姿を見ると、少し頼もしく思えました。 フジティアス09(牡、父:デビッドジュニア)。2月21日生まれで当場の長男です。 ラストローレン09(牡、父:デビッドジュニア)。5月4日生まれで当場の末っ子です。