若馬の坂路調教(日高)
前任者が手塩にかけて育成した日高育成牧場の若馬たち56頭を、3月から引き継ぐことに伴い、ブログの筆者が変わりました。どうぞよろしくお願いします。前任者同様、「これがいい」という信念をもって、育成調教を行いたいと考えています。
3月19日現在、通常調教は800m屋内トラックの調教をベースとし、また、スピードと体力をつけるトレーニングは、週2回、屋内1000m坂路で実施しています。坂路では、1本目を縦列でのストリングを組んでのステディキャンター(19-18秒/F)、2本目は併走で3F48秒程度(16秒/1Fペース)のスピードで、実施しています。特に、1本目の縦列では前後の馬、2本目の併走では横にいる馬にそれぞれ近づけて走ることができることを目標にしています。
(3/16)1本目の縦列調教。先頭はポレントの08(牝 父ネオユニヴァース)。
(3/16)2本目の併走調教。向かって左はポレントの08、右はドクターブライドの08(牝 父ロックオブジブラルタル)。
屋内坂路馬場は、前半350mの平坦な部分と後半650mの坂路部分に分かれています。勾配は、最初の200mが2.5%、次の350mが3.5%、止め際の50mが5.5%となっています。したがって、実質は600mの坂路ということになります。なお、タイムについては、スタートしてから150~750m間を自動計測することができます。効果的に負荷をかけるためには、この測定区間の最初の1Fの平坦部分でスピードにのせ、坂路部分の3Fをしっかり走らせることが重要と考えています。負荷をかけたよい調教が行えたかどうかは、馬の動きや走り終えた後の息遣いを参考に心拍数や乳酸値を推定して判定するようにしています。1月19日号の当場ブログ「科学の目」にもありましたが、1月は18秒のキャンターで220まで上昇していましたが、現在(3月19日)ではそのスピードでは心拍数は200手前、すなわち有酸素運動でこなせるようになっていました。しかし、2本目のスピード(実際は15.5-14.5-14.7)における最大心拍数は226、また、調教後の血中乳酸値は13mmolまで上昇していました。これら数値が示すとおり、かなり頑張って走っているので、翌日に多少歩様の硬い馬も出ます。馬が現在の調教を楽にこなすことができるようになり、また、騎乗者の手ごたえがon the bridledとなってきたことを見極め、1600馬場でスピード調教へ移行して行くつもりです。なお、坂路の負荷は自分が想像したより大きいことから、坂路以外の800mトラック馬場調教日には、あまりスピードを出さず、隊列を整えた落ち着いた調教を行っています。
(3/18)800mトラック馬場での調教。1本目は縦列(F24)、2本目は2列(F20)で隊列を整えることを目標に調教を実施しています。向かって右の栗毛はレイクミードの08(牝 父サクラバクシンオー)、左はシルクテイルの08(牝 父ゴールドアリュール)。
日高育成牧場で坂路馬場を使用するメリットとして、坂を登るための負荷をかけるトレーニング以外に、①調教場が厩舎から離れた場所にあるということや②坂路を2回常歩で下るということを考えています。①については、必然的にウォーミングアップやクーリングダウンを長く(片道約2km)行うことができる、②については坂道を下る際に、自然に骨盤以下の後躯を深く踏み込ませる効果があり、背中から腰にかけてのトップラインと連動するボトムラインの筋肉を強化できるのではないかと考えています(具体的に下り坂でどのような筋肉が鍛えられるかについての研究はこれからの課題です)。
800m屋内トラックの調教後。1頭ずつ騎乗者のコメントを確認します。
クーリングダウンは馬場内を1周した後、外周を1周します。
日高育成牧場の展示会は4月12日(月)10時~ を予定しています。実馬展示後にブリーズアップセールに上場する予定の馬たちのトレーニングを皆さまに披露させていただきます。多くの皆さまのご来場をお待ち申し上げております。