育成馬検査(日高)
日高育成牧場のある浦河は、昨年末の大雪によって一面銀世界へと様変わりし、新年を迎えてからは冷え込みが厳しく、特に小寒から大寒までの2週間は真冬日が続き、最低気温がマイナス20℃近くに下がり、育成馬たちの“あごひげ”が凍る日もありました。
本年も小寒の頃の恒例行事となっているBTC育成調教技術者養成研修生の騎乗実習が始まりました。本年の研修生は21名で、4月9日(月)に予定されている育成馬展示会までの約3ヶ月間、10名と11名の2班に分かれ、1週間交代でJRA育成馬を活用した騎乗実習を行います。この騎乗実習は、これまで乗馬にしか騎乗したことがなかった彼ら、彼女らにとって、卒業後のそれぞれの進路に向けた最終の実践研修という位置づけになっています。現状ではまだまだ未熟な研修生たちですが、実際に競走馬になるJRA育成馬を用いて、その調教過程を自分の肌で体験することは、優秀なホースマンになる上で大きな財産になることと思います。今後は育成馬の成長と同様に、若い研修生たちの著しい成長も非常に楽しみのひとつになっていきます。
毎年恒例となっている3ヶ月間のBTC研修生(右1、2、4番手および左3番手。いずれも青ヘルメット装着)の騎乗実習が始まりました。先頭左からダンシングサクセスの10(牡 父:アグネスタキオン)、グレイスフルハートの10(牡 父:ティンバーカントリー)、メガクライトの10(牡 父:アルデバラン)、先頭右からフィエスタの10(牡 父:バゴ)、イシノクイルの10(牡 父:アルカセット)、スティルシャインの10(牡 父:タイキシャトル)、キセキスティールの10(牡 ホームブレッド 父:ケイムホーム)。
この厳しい寒さの中、育成馬の調教も順調に進んでおります。800m屋内トラックでは1列縦隊で1周もしくは2周駆歩(ハロン24秒まで)を行った後に、2頭併走で2周駆歩(ハロン22秒まで)の計2,400~3,200mの調教をベースに、週1~2回は800m屋内トラックでは1列縦隊で2周駆歩(ハロン22秒まで)を行った後に、坂路での調教(ハロン19秒まで)を実施しています。前回、2群の牝馬は坂路を1本駆け上がるのが精一杯というような状態であることをお伝えしましたが、この1ヶ月間で体力も向上し、坂路調教後もすぐに息が入るようになってきています。一方、牝馬は精神面でのストレスのケアが必要であり、坂路調教を行うにあたっては、坂路調教当日にも増して翌日の馬のメンタル面の状態に注意を払っています。今後は馬の肉体的および精神的コンディションを見ながら、徐々に調教強度を上げていきたいと考えています。
2群の牝馬も坂路調教後にすぐに息が入るほどに体力が向上してきました。先頭はシルクアムールの10(牝 父:アルデバラン)
さて、今回は1月下旬に行われた育成馬検査について触れてみたいと思います。育成馬検査とはJRA生産育成対策室の職員が日高育成牧場で繋養している育成馬を第三者の視点から、市場での購買時からの馬体の成長具合、現在の調教進度、馬の取り扱いなどをチェックし、ブリーズアップセール上場に向けての中間確認を行う検査のことです。今回の育成馬検査では、本部からの出張者に加え、宮崎育成牧場の担当者も来場し、鋭い眼差しで馬のチェックが行われました。この検査に備えて、年明けからは日頃にも増して馬の手入れに時間をかけ、タテガミや尾のトリミングにも取り組んできました。
育成馬検査に向けて全馬のタテガミのトリミングが行われました。馬はチアズスワローの10(牝 父:スウェプトオーヴァーボード)
検査当日はこの時期にしては両日とも天候に恵まれ、ブリーズアップセール当日さながらの緊張感のなか、育成馬の展示が行われました。検査と同時に、手入れ、トリミング、しつけ、さらには騎乗時の馬装も含め、最も手入れが行き届き美しく仕上げられた馬および担当者に贈られる“ベストターンドアウト賞”の審査も行われ、牡牝それぞれの最優秀馬と優秀馬が選ばれました。
“ベストターンドアウト賞”の審査で牡の最優秀馬に選ばれたセーフアズロックの10(写真左 牡 父:アルデバラン)と優秀馬に選ばれたキセキスティールの10(写真右 牡 ホームブレッド 父:ケイムホーム)。
“ベストターンドアウト賞”の審査で牝の最優秀馬に選ばれたアリゲーターアリーの10(写真左 牝 父:シンボリクリスエス)と優秀馬に選ばれたレディインディの10(写真右 牝 父:ダイワメジャー)。
今回の検査を通して、個々の馬の発育および調教進度状況を再認識することができました。また、4月24日(火)に開催されるブリーズアップセールおよび4月9日(月)に開催される育成馬展示会のためのみならず、馬主、調教師、牧場関係者などのお客様の来場に備えて、馬を展示し、見て頂くという姿勢を再確認する機会にもなりました。
馬を展示すること自体が馴致の一環であり、人馬ともにその状況に慣らし、落ち着いた状態の馬をお見せできるよう取り組んでおりますので、浦河にお越しの際はお気軽にご来場いただき、JRA育成馬を見ていただきたいと思っております。