生産現場における駆虫 その3「寄生虫をゼロにする必要はない」(生産)
前回触れた「ターゲット・ワーミング」のつづきです。
「ターゲット・ワーミング」は、薬剤感受性が高い寄生虫(薬が効く虫)を一定割合生存させておくことによって、耐性寄生虫の割合を減らすことができる方法です。
これにより、本当に駆虫が必要な時に駆虫剤が効果を示すようになるのです。
この方法の根底には「寄生虫をゼロにする必要がない」との考え方が存在します。
「寄生虫=害虫=全滅させる必要がある」という概念は間違いだと考えられるようになったのです。
すべての寄生虫が馬に健康被害をもたらすのでしょうか?
この疑問は解決されていません。
デンマークで行われたトロッター競走馬を対照とした調査によると、
円虫卵が多く認められた馬のほうが、入着(1~3着)する可能性が高いとの結果が得られました。
円虫寄生が競走パフォーマンスを高めるとは想像できませんが、少なくとも競走馬の場合には負の影響はないと考えられます。
もちろん、成馬であっても大量寄生による疝痛・栄養障害などの健康状態に与える影響は否定されていません。
しかし、子馬のアスカリド・インパクションなど、本当に必要な時のために、現在有効な駆虫薬を残しておくことは極めて重要です。
なぜなら、新たな駆虫薬の開発には長い年月を必要とするからです。
現在使用可能な駆虫剤は、必要な時のために温存!!
つづく