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育成馬ブログ 日高⑥

○  アメニモマケズ(日高)

風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモ負ケヌ丈夫ナ体ヲ持チ・・・。宮澤賢治さんの有名な一節が脳裏に浮かびます。立春を過ぎてからも厳しい寒さはしばらく続きますが、JRA育成馬を“心身ともに健康な馬”に鍛えるため、風の日も吹雪の日も、トレーニングを続けています。

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写真1.風雪のなか屋内坂路馬場へと向かうパキータの13(牡、父:タニノギムレット)。

 

育成馬の調教状況

さて、JRA育成馬の調教状況をお伝えします。現在も、屋内800mトラックで縦列のキャンター(1周:ハロン23秒程度)後に、手前を変えて2列縦隊でのキャンター(2周:ハロン20秒程度)を行う調教を基本メニューにしています。強負荷の調教は屋内坂路馬場で毎週火曜日と金曜日に実施しており、屋内800mトラックでキャンター2周のウォーミングアップをしてから坂路に向かいます。2月中旬には坂路で3ハロン57秒(ハロン19秒)の走行を無理なく安定してできるようになったため、坂路2本の調教(3ハロン57-54秒程度)に移行しています。現在もスピードを求めるのではなく隊列を乱さず前馬との距離を2馬身に維持することに主眼を置き、精神面の鍛錬を目指しています。調教ボリュームが増えるこの時期は、下肢部運動器疾患や飼葉を食べなくなる馬が出る時期です。各馬の体調を毎日確認しながら、個別の管理に気を緩められません。

 

最近の調教動画(坂路調教)をご覧下さい。

動画1.坂路2本目の調教映像。先頭からヨクバリージョの13(牡、父:メイショウボーラー)、アーバンライナーの13(牡、父:タニノギムレット)、フローラルホームの13(牡、父ヨハネスブルグ)、ホーマンソレイユの13(牡、父:エンパイアメーカー)。この2本目の3ハロンのタイムは19.0-17.9-17.3(秒/ハロン)でした。

 

動画2.同じく坂路2本目の映像。先頭からウインゼフィールの13(牝、父:ハービンジャー)、シゲルハチマンタイの13(牝、父:エンパイアメーカー)、クレイステルスの13(牝、父:メイショウボーラー)、ドリームチルチルの13(牝、父:アグネスデジタル)。この2本目の3ハロンのタイムは18.5-17.4-17.5(秒/ハロン)でした。

 

 

競馬学校騎手課程生徒の研修

2月初旬に競馬学校第32期騎手課程生徒の研修を実施しました。これから騎手としてデビューしていく彼らは、この研修でJRA育成馬に騎乗して競馬学校では経験できないデビュー前の若馬の騎乗を初体験します。これに加えて、民間の生産牧場や育成牧場を訪問・視察して、厳冬期の厳しい自然環境のもとでも鍛錬を続ける生産育成現場を知ってもらいます。これは、競走馬を育てるために必要な手間と労力、さらには競走馬が背負っている「様々な人の思い」を伝えることが目的です。 

生産地に滞在した時間は長くはありませんが、生徒一人一人が感じた何かを今後に活かして欲しいと思います。

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写真2.騎手課程生徒のJRA育成馬騎乗訓練。赤白の染分け帽が騎手課程生徒です。

 

トレッドミル内視鏡検査を行いました

 ブリーズアップセール上場にむけ、JRA育成馬の各種検査が始まっています。検査項目はノドの内視鏡検査や前肢屈腱部のエコー検査、前肢球節部や飛節部のX線検査などで、JRA育成馬を購買されるお客様に開示するレポジトリー資料を作成するために実施しています。

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ノドの内視鏡検査は全頭実施します。そのなかで、確認項目の1つである「喉頭片麻痺」に所見のある育成馬については、運動中の内視鏡検査を追加で実施し競走能力に影響のある所見であるか否かを判断します。日高育成牧場で行う運動時内視鏡検査は、「トレッドミル」と呼ばれるルームランナーのような機械の上で馬を走らせながら内視鏡検査を実施して、運動中のノドの様子を確認する検査です。今回、ドリームニキハートの13(牡、父:ケイムホーム、JRAホームブレッド)の安静時内視鏡検査結果に所見が見られたため、トレッドミルを用いた運動時内視鏡検査を実施しましたのでご紹介します。

ではまず、ノドの安静時内視鏡検査動画をご覧ください。

 

動画3.安静時内視鏡検査動画。中心部にあるドーム状に開いた披裂軟骨の動きに注目してください。向かって右側の披裂軟骨の動きが左側に比べて悪く、完全に開いていません。運動時にこの状態が続くと十分な酸素を取り込むことができず、競走能力を低下させることがあります。

 

続いてトレッドミルの上を走行させて実施した検査動画をご覧ください。

動画4.運動時内視鏡動画。運動中には左右両方の披裂軟骨が十分に開いていることがわかります。この状態が維持できていれば、競走能力に影響を及ぼすことはありません。

 

今回の検査で運動中のノドの状態に問題ないことが確認できましたので、JRAブリーズアップセールに上場すべく他馬と同様の調教を継続しています。なおJRAブリーズアップセールでは、レポジトリールームにおいて内視鏡動画を公開しています。

 

本州では春一番の噂も聞こえてきていますが北海道はまだまだ厳しい寒さが続いています。とはいえこの時期は育成馬がぐっと良くなる時期でもあります。ブリーズアップセールが近付き調教も本格化してきた日高育成牧場では、育成馬をご覧になられる購買関係者のご来場をお待ちしています。皆様、是非お越しくださいませ!