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育成馬ブログ 宮崎⑧

調教後の乳酸値の測定(宮崎)

 宮崎では3月22日に桜の開花が発表され、それ以降は宮崎らしい快晴の日々が続き、少し体を動かすと汗をかいてしまうほどの暖かい日が多くなってきており、まさに春爛漫といったところです。

 そろそろ桜の見ごろも過ぎ去る頃ではありますが、ブリーズアップセール上場のために、まもなく宮崎を離れる育成馬とともに宮崎のベストシーズンともいわれている「短い春」を過ごしています。

                       

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写真① 桜の木をバックに500m馬場でのウォーミングアップを実施する育成馬。

 

 

育成馬を知ろう会

 ここからは、3月30日~31日の2日間に渡って開催いたしました「育成馬を知ろう会」についてご紹介いたします。この企画は比較的馬主歴の浅いJRAの馬主の皆様に対して、「馬の見方」、「セリにおけるレポジトリーの見方」などの講義、あるいは「調教師と交流」を趣旨に、JRA馬事部生産育成対策室および当場が主催する形で実施いたしました。

 初日は「馬の見方」の講義の後に、実際に乗馬を教材にして馬のコンフォメーションに関する理解を深めていただきました。続いて、その知識を基にブリーズアップセール上場予定馬をご覧いただきました。また、初日の日程終了後には、参加していただきました調教師との意見交換会が開催されました。

 

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写真② 「育成馬を知ろう会」の初日は、実際に乗馬を教材にして「コンフォメーション」の理解を深めていただきました。

 

 

 2日目は、小雨の降る中、ブリーズアップセールに向けての最終段階の育成馬のスピード調教をご覧いただきました。また、調教の合間には、「セリにおけるレポジトリーの見方」の講義の後に、実際に乗馬の内視鏡検査をご覧いただき、競走馬の「喉(ノド)」の疾病に関する理解を深めていただきました。

 ご多忙中にもかかわらず、今回参加していただきました皆様方には、この場をお借りしてお礼申し上げます。


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写真③ 2日目はBUセール上場予定馬の調教を間近でご覧いただきました。

 

 

調教後の乳酸値の測定

 ここからは、宮崎育成牧場で実施している「調教後の乳酸値の測定」について触れてみたいと思います。

 「乳酸」からは「疲労」という言葉が連想される方が多いのではないでしょうか?運動強度を上げていくと、LT(乳酸性作業閾値)と呼ばれる地点を超える負荷から急速に血中乳酸濃度が高くなります。これは速筋線維が糖を分解することによって乳酸を生成するためであり、またアドレナリンのような糖利用を高めるホルモンが放出されるためであるといわれています。

 トレーニングが進むと同じ運動強度でも、乳酸濃度が上がらなくなります。この理由は、有酸素運動能が上がり、同じ運動強度でも糖を利用する無酸素性エネルギーを利用しないで走行できるようになるためです。さらに、乳酸値の測定は、コンディション判定のツールとしても利用されています。同じ負荷をかけているにもかかわらず、乳酸値が高い場合には、コンディションが良くない状態であることが推測されます。

 育成馬のスピード調教後の乳酸値を測定していると、乳酸値と馬の走行や息遣い等の状態とが一致しない場合が少なからずあります。つまり、単純に「乳酸値が高い」=「過負荷」と結びつけることができないように感じられます。

 スポーツ選手においては、乳酸を多く出せるということは、それだけ筋肉が糖を利用して、エネルギーを作り出す能力が高い、つまり絶対的なスピードに優れているとも考えられています。この考え方は育成馬にも当てはまるような気がします。そしてトレーニングとは、蓄積した乳酸を再びエネルギーとして利用できる「乳酸処理能」を高める、あるいは乳酸が溜まった状態でもさらに運動を継続できる「耐乳酸能」を高めることであるように思われます。前者は長距離馬に、後者は短距離馬に必要な要素ではないかと想像しています。

 そのためにも、育成期の馬においては、まず乳酸を産生できる状態を作ることがトレーニングの第一歩なのではないかと考えています。昔から「ハロン15‐15」と呼ばれる調教がひとつの目安とされてきたのは、「ハロン15‐15」の負荷が乳酸を産生できるステージであることを先人の方々は経験的に理解していたからであると想像されます。

宮崎育成牧場「育成馬展示会」のお知らせ

 宮崎育成牧場では、ブリーズアップセールに先立ちまして、本年も4月6日(月)に「育成馬展示会」を開催いたします。なお、本年も朝10時開始となりますこと併せてお知らせいたします。以下に簡単な当日のスケジュールをお示しいたします。

10:10 ~ 比較展示

11:10 ~ 騎乗供覧

 皆様方のご来場を心よりお待ちしております。

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写真④ 昨年の展示会の調教供覧の様子。左:デイドリーム号(2014年2回小倉 芝1200m 2歳新馬優勝 父:アドマイヤムーン 母:シルクヴィーナス)、右:ノーブルルージュ号(2014年3回阪神 芝1400m 2歳新馬優勝 父:ショウナンカンプ 母:スプラッシュビート)