育成馬ブログ 生産編①「その1」
・当歳馬に与えるクリープフィード その1
8月に入り暑い日が続いていますが、本年生まれた当歳馬たちにとっては母子の別れ、
「離乳」の時期が近づいています。
離乳方法の選択如何によっては、子馬の成長阻害や大きな事故に繋がる可能性が
あります。また、その後の取扱いに支障をきたすような精神的ダメージを負うこともある
かもしれません。このため、牧場の放牧地や厩舎などの施設環境を考慮した、最善の
離乳方法を選択する必要があります。
当歳馬の離乳を成功させるための重要ポイントの1つとして、それまで母乳から摂取
していた栄養を牧草や固形飼料で代替することができるようになっていること、すなわち、
一定量(1~1.5kg)の固形飼料、いわゆるクリープフィードを食べられるようになっている
ことがあげられます。
クリープフィードを食べる当歳馬
ところで、なぜクリープフィードを与える必要があるのでしょうか?
クリープフィードを与える目的は大きく2つあります。
1つ目は母乳から得られる栄養の補填です。母馬の泌乳量は出産後から徐々に低下
していき、そこから摂取できるカロリーや栄養成分も同様に低下します。特にカルシウムや
銅などのミネラル含量は、生後1ヶ月を待たずして子馬の栄養要求量を充たさなくなります(図1)。
図1.母乳からの摂取ミネラルの要求量に対する割合(7週齢)
このうち銅は、子馬の骨端炎やOCDなどの骨疾患の発症を抑制するために重要な働き
をするミネラルの1つです。もともと、母乳に含まれる銅の量は少なく、生まれて間もない
子馬は、母乳から十分な量の銅を摂取することができません。このため、子馬は母体に
いる胎子のときに、母馬から銅を受け取り肝臓に蓄えておき、生後はその蓄えを利用して
いると考えられています(図2)。しかし、肝臓に蓄えられた銅は、生後2~3ヶ月で枯渇
することが知られています。
図2.胎子は母馬から受け取った銅を肝臓に蓄積し、生後に利用する。
もちろん、良好な牧草が繁茂した放牧地で飼養されていれば、子馬にとって必要な
カロリーは母乳と牧草から摂取することも可能かもしれません。しかし、健康な馬体成長
に欠かせないミネラルは固形飼料で補う必要があります。
つづく